見出し画像

プレカットの新潮流・熊本ランベックス・下

(前回から続く)前回はプレカットの視点から平角市場に焦点を当て、協同組合熊本ランベックスの原田龍三代表理事と遠藤日雄・鹿児島大学教授がスギ集成材の可能性を考えた。今回はこの問題をさらに掘り下げる。プレカット工場がこれまでにない新しい事業戦略で国産材の活用に踏み出していることが浮かび上がる。

米マツ・北欧材は採算難、スギムクよりは集成で

遠藤教授 
  平角市場はどのような展開を遂げていくと思うか?

原田代表理事 
  平角の価格相場をみると(4月下旬値。㎥単価)、これまで独壇場だった米マツKDが5万7,000円、レッドウッド集成が5万8,000〜9,000円、異樹種(米マツ+スギ)集成が5万6,000〜7,000円といった居所か。米マツ需給がタイトになり、米マツムク平角は強含みとなっている。今後さらに値上げがあるだろう。米マツ製材は原料コスト高に悩まされている。現に2〜3月に九州の米マツ製材2社が撤退を決め、業界に衝撃を与えたばかりだ。北欧産地も強気姿勢を崩さず、レッドウッドラミナ不足も慢性化している。平角市場は異樹種集成も含めてスギにシフトしつつあるのではないか。スギのチャンス到来だと思う。

遠藤 
  その場合、スギムクなのか、それとも集成(材)なのか?

原田 
  異樹種集成かスギ集成だろう。

遠藤 
  同感だ。スギムク平角は人工乾燥すると「ねばり」がなくなるという話を耳にする。どうしてもスギムクでという大工・工務店には一回り大きい平角を勧めるか、いっそ集成平角にしたらとアドバイスする製材工場やプレカットが少なくない。その意味ではスギKD平角のシェア拡大は難しいだろう。また、単品で売るより工法とセットで売るほうがベターではないか?

原田 
  ランベックスでは、今年4月に(財)日本住宅・木材技術センターから木造住宅合理化システムとしてWOODGOOD工法の認定を受けた。  

遠藤 
  どんなシステムか?

原田 
  一言でいえば、「安全・安心・快適住宅」のためのシステムだ。この中核になっているのが、異樹種集成材とスギ集成管柱だ。「住宅品確法」の性能表示制度の劣化対策で最高級となる「等級3」(75年から90年もつという意味)に完全対応したシステムだ。ランベックスでは乾式防腐・防蟻処理をするのでスギ集成管柱も10.5㎝角でOK。これでホワイトウッド集成管柱をスギで代替できる条件ができた。今後は、山側との連携をどう強めていくのか、プレカットもそこまで考えねばやっていけない状況になった。

画像1

原田龍三・協同組合熊本ランベックス代表理事

板取り技術蓄積で丸太は上がる、立木からバーコード管理

  昨年8月に創立20周年を迎えた全国木造住宅機械プレカット協会によれば、総木造住宅の76%がプレカット加工され、東京・首都圏では9割を超えているという。2004年のプレカット工場数は516工場、98年の888工場をピークに減少し始めている。プレカットが飽和状態になり、厳しい競争の中で脱落する工場が出始めたのだ。プレカット工場は、従来のCAD/CAMによる工務店支援だけでなく、新しい役割を担わざるをえない事態に直面している。
  
遠藤 
  2月に銘建工業(株)の中島浩一郎社長と対談した(第1回・第2回参照)。その中で中島社長は、スギの価格を上げるためにも集成材化が必要といい、山側から製材加工まで、それぞれが「いいところ出し」をしていくべきと話していた。
 
原田 
  賛成だ。その銘建工業(株)も参画して、将来、熊本にスギ集成材工場を開設すべく、4月3日に「大規模流通・加工基地構想協議会」を組織した。山側と連携をする際には、ズバリ、スギ丸太価格を上げるためには集成材しかないと提言したい。外材需給がタイトになっている。原油の値上がり、米国の住宅バブル、中国の木材需要の増大などがその原因だ。その中で、外材価格が上がるか強含みで推移している。

  米マツ丸太は2万5,000円/㎥、北洋アカマツは1万8,000円/㎥、合板用の北洋カラマツは1万2,000円/㎥に上がっている。これに対してスギは1万円前後、世界一安いといっても過言ではない。そこで、山側と川下の製材加工業がスギを集成材化することで価格を上げていく。この点で共通認識をもつ必要がある。そのためには、森林組合などと協力しながらラミナ用の板取り技術のノウハウを蓄積することが重要だ。それがスギ丸太の価値を高めることにつながる。
 
  もう1つ、ランベックスではプレカット材をバーコード管理している。このシステムを立木の伐採段階から始めたい。つまり、森林所有者が伐採届け出をした段階から、プレカットをして邸別配送するまでをバーコード管理していく。
  
遠藤 
  どんなメリットがあるのか?

原田 
  トレーサビリティ(履歴)が明らかになる。伐採から邸別配送まで、誰がどの過程で関与したかが一目瞭然になる。責任の所在がはっきりする。「姉歯問題」で露呈された責任のなすりつけはできない。在来軸組構法住宅を一層信頼性の高いものにし、かつ山側からプレカットまでの人達が参画していくためにはこうしたシステムが必要だ。その意味では、各論から総論の時代に入ったと思う。

遠藤 
  自信のほどは? 

原田 
  九州はスギに関しては保守的だ。風当たりは強いがきっと理解してくれると信じている。「千万人といえども吾(われ)往(ゆ)かん」だ。

画像2

バーコード管理されたプレカット材の邸別梱包

◇  ◇

  これまで協同組合方式のプレカット工場といえば、森林組合が少額の出資金を出して形ばかりの組合員になり、事業主体の製材加工業や工務店はお付き合い程度で参画するというパターンが多かった。しかし、原田代表理事は明確な経営ビジョンを持っている。協同組合方式のプレカット工場が川上に提言する時代になったのだ。

『林政ニュース』第294号(2006(平成18)年6月14日発行)より)

次回はこちらから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?