リズムの騎士

プレゼントに、ご馳走に、大皿にこぼれそうな手づくりケーキ。
欲しかったものが手に入った充足感や、美味しいものだけで満腹になれた満足感は、日にちが経つほどに柔らかな幸福感へと転じていきました。
そして贈り物を見る度にその造形にではなく、それを選んでくれた人の表徴を眺め、護られた者のように感じ、心は強い騎士になるようでした。

年が明け、家族が集う昼の団欒の為だけに帰郷。三が日は過ぎていたのでテーブルにお正月はありません。
慎ましく、薄塩味の卵焼き、目刺、山菜のお味噌汁に白飯をこんもりと。
帰りは弟が運転する車内で和気藹々としながら、ふと母親代わりの祖母を抱きしめれば良かったと後悔していました。
ほんの6、7年前は家が植物で溢れ、所狭しと菜園が広がっていた庭。応接間には地方テレビで紹介された大きなパッチワークの絵画。布を編み合わせて作った草履。
僕の祖母は、数年前まで生粋のアーティストでした。今はほとんど出来ることがなくなったので、毎日を単調なリズムで刻んでいます。
彼女のテンポで流れる生活はどんなものだろうと時々想像します。会いたくても会えない時は花束を送ろうと決めました。

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