うみべのまちで ジョアン・シュウォーツ

うみべの町で静かに暮らす少年とその家族を描いたお話。少年の暮らす島はケープ・ブレトン島。その島は炭鉱で栄えていた。少年の父は炭鉱労働者であり、また亡き祖父も炭鉱労働者だった。少年も近い将来炭鉱で働き、家族を持ち、夕食の後に家族で海を眺めるような静かな幸せを築くのだろう…。 こんなどこにでもあるような1冊の絵本がとんでもない知の探検に向かわせてくれることがある。この本の舞台、ケープ・ブレトン島はカナダの大西洋側に位置する島でヨーロッパから北米大陸に向かうと最初に現れる島のうちの一つ。ミクマク族が古くより住んでいて、大西洋側にあるので想像通りヨーロッパの国々の影響を強く受けている。フランスの植民地になったり、イギリスに占領されたり、やっぱりフランスに返すわってなったり、フレンチ・インディアン戦争(と言ってもイギリスとフランスの戦争)の舞台になったり…アメリカもカナダも同じようなものだけど、先住民の人達はヨーロッパ人の争い(大抵誰が王位を継承するかとかそういうことで揉めている)に完全に巻き込まれただけ。植民地で起こった争いに直接は関係していない場合もあると思うけれど、この世のできごとは全部つながっているから全く無関係とも言えない。勝手にやってきた人たち同士が勝手に争いを始めたとき、先住民達はそのどちらかについて一緒に戦うしか選択肢がなかったんだよね。きっと。行くところないし。入植者のために今まで住んできた土地を簡単に諦める方がおかしいし。

島にはミクマク族のほか、スコットランドからの移民、フランス系アカディア人が主に住んでいる。また、ヨーロッパ、カリブ、中近東など世界各地から開拓者や絵本にあるような炭鉱労働者として島に移り住んできた人達もいたようだ。それぞれの民族の移住の背景にはそれぞれ歴史に翻弄された物語があり、この絵本をきっかけとして、私はオーストリア継承戦争、マリア・テレジアの生涯とその夫や子ども達の生涯、当時のオーストリア周辺の国々やその政治や国同士の関係について、イギリスとフランスの関係について、スコットランドのジャコバイトや農地改革について、アメリカやカナダの植民地やそれをめぐるイギリスとフランスの争いについて、アカディア人の大追放について、それから各戦争や大切な場所の地理的なことについて…これ以上頭には入らないほど学んだ。10分で書けると思っていたものが6時間以上かかった。

学んだことを全部ここに書くのは無理だけれど、こういうことがあるから読書は止められない。島には悲しい歴史も存在するけれど、自然がとても美しくて今でも伝統的なケルト文化が残っているそう。ここまで没頭させてくれた島にはいつか行こうと思う。

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色んなことに手出しすぎて意味がわからなくなってる。教育、認知科学、文学、芸術、起業に興味がある。英語教育をやってるけど、英語よりもクリティカルシンキングやライティングを教える方が好きだし得意。娘をホームスクール中。パートナーは変人。楽しいことはとりあえず何でも全部やってみる。
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