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カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方ができるまで
freeeカスタマーハラスメント対策推進リーダーのじぇにーです。
突然ですが、皆さんや皆さんの大切な人が「殺すぞ」「家に火を付けるぞ」と知らない人に言われたらどう感じますか?
「嬉しい」、「もっと言ってほしい」と思う人は少ないのではないでしょうか。多くの方は傷ついて、つらい気持ちになるのではないでしょうか。
現在では業務上お客様の接客を行う立場でない方も、SNS上で会社名を公開しているアカウントは持っているということも多いと思います。
働く様々なポジションの方がカスタマーハラスメントの被害に合う可能性がある時代だからこそ、会社として従業員の安心に繋がるように、またカスタマーハラスメントによって他のお客様がその皺寄せを受けないようにするために、対策をすることが大切だと考えています。
そこで今カスタマーハラスメントの対策をしていきたいと考えている方が一歩目を踏み出すきっかけとなれるよう、freeeでの対策方針策定についてお話します。
■なぜこの方針を発表したのか?
2022年の夏のある日、普段どおり仕事をしていた私はチームメンバーから「非常に温度感の高いお客様よりお問い合わせがありました。かなりお怒りです」と共有を受けました。
状況を確認するために43分あった対応の録音を聞くと「ころすぞゴラァ」「ふざけた回答してんじゃねえぞゴラァ」「なめてんのかよ、ゴラァ」というような怒鳴り声が断続的に確認でき、それに耐えながらもどうにか対応を続けようとする対応者の震える声が残っていました。
お怒りの域を超越した、脅迫行為として法務部の協力を得ながら対応をすすめることにしました。
その後、対応者の方はしばらく出勤ができなくなりました。
このとき「いくらお客様からの問い合わせだとしても、お互い尊重し合える関係性がない状態では安心感を持ってfreeeの業務なんかできるわけがない」と思い、厚生労働省の【カスタマーハラスメント対策企業マニュアル】を基に、freeeでもカスタマーハラスメントに対する考え方を作っていくことを決めました。
そしてお客様も含め、freeeに関わる全ての人に安心感を持ってもらい、お互い尊重し合える関係性を作るために存在するものにする!ことを目標に設定し、お客様もfreeeの一員としてご理解いただく場にできるよう今回の方針を発表するプレスリリースに至りました。
■方針発表するにあたって何をしたか
・第1ステップ:データ収集
目標を決めた私は実際にfreeeで発生しているカスタマーハラスメントの実態を把握するために2つの行動に移りました。
①サポートチーム全体から期間を問わず「言われて傷ついた言葉が含まれる対応履歴」を思いつく限り共有をしてもらい、分類をする
②全社的に収集している「温度感が上がってしまった対応履歴」を確認して分類をする
①に関しては、収集受付期間は1日だったにも関わらず約50件集まりました。
②に関しても約130件確認できました。
収集できた180件すべてに目を通しジャンル分けを行い集計をしました。
もちろん全部がカスタマーハラスメントではないものの、脅迫となるような言葉や人格否定、セクハラなど多様なジャンルがありました。
![過剰要求58.1%,人格否定22.6%,脅迫12.9%,暴言3.2%,セクハラ3.2%](https://assets.st-note.com/img/1676029642304-79QJhDhVwT.png?width=1200)
・第2ステップ:専門知識の確認
180件の履歴から実情のデータを作ることができた私は、専門領域の知識をつけるためにここでも2つの行動を取りました。
①厚生労働省の【カスタマーハラスメント対策企業マニュアル】を読み込みfreeeに関係ある箇所をピックアップ、要約してまとめる
②脅迫案件の相談をした法務部のマネージャー含め法律的な観点や世間の流れについて確認
①の厚生労働省の【カスタマーハラスメント対策企業マニュアル】を参考にする際にはfreeeとして他に気をつけるべきことはあるかという自社の方針を盛り込みました。厚生労働省の出す【介護現場におけるハラスメント対策マニュアル】も参考になりました。
②では具体的に以下の論点について、一つ一つ丁寧に労働法等の専門領域含めて洗い出しを行いました。
・なんのために対策が必要なのか
・何を定めておく必要があるのか
・対策をするリスクが存在しているのか
・逆に対策をしないとどういうリスクがあるのか等など…
・第3ステップ:経営層への提案
第2ステップで出したポイントを含めた資料をまとめ、経営層への提案を行いました。
現場で起きている具体例
データを集計してわかったこと
カスタマーハラスメント対策がないことのデメリット
カスタマーハラスメント対策があることのメリット
freee社としてカスタマーハラスメントとクレームの線引について
タイムスケジュールの共有
結果として、経営層の理解を得られただけではなく、現場でこういう対策をしたらいいのではというアイディアももらうことができました。
・第4ステップ:社内向けガイドラインの作成
社内用カスタマーハラスメントガイドラインの執筆&共有を行いました。
freeeのカスタマーハラスメントガイドラインは以下の内容で構成されています。
なぜガイドラインが必要なのか
行動指針
カスタマーハラスメント定義
クレームとの棲み分け
対応フロー
未然防止対応策
過去の事例集
参考資料
ここでも厚生労働省の【カスタマーハラスメント対策企業マニュアル】を参考にしました。また【カスハラ対策実務マニュアル】(編著 香川希理)も参考になりました。
(ちなみに執筆中、私のマネージャーは自身を編集さん、私を作家という体で接してくれたので楽しい執筆活動になりました。)
全社会議で時間をもらい、実際の対応履歴とともにガイドラインを共有し、社内でもいろいろな反響をもらうことができました。
・第5ステップ:プレスリリース
いよいよ最後に社外への発表準備を始めます。
プレスリリースのたたきに使ってもらえるように仮原稿を作成して広報に相談しました。
今の時期freeeは確定申告期に入り通常時の5倍以上のお問い合わせを受けます。新しくfreeerで働く人も増えるため、安心してサポートして欲しいというきもちで、ガイドラインの公開タイミングをこの時期に選びました。
■方針策定に際して意識したポイント
カスタマーハラスメントの方針策定するにあたって一番大きかった壁は、カスタマーハラスメントと、本当に困ってクレーム化しているお客様を、しっかり切り分けて適切な対応をすることができるのかという懸念でした。
実際に私が今回の動きを取るにあたって、あまり肯定的ではない意見もありました。
社内向けガイドライン策定時に一番気を使ったのも「freeeはお客様にマジ価値を提供したいという基準で策定する」「安易に怒ってる、傷ついた=カスハラにはならないときもある事を社内で理解してもらう」という点です。
どういうシチュエーションでどのような発言を受けた場合にカスタマーハラスメントと認定されるか、という条件を細かく具体的に定義することで、今の所はなんでもかんでもカスタマーハラスメントとされる状況は発生していません。
お客様のご意見をもとにfreeeをもっと良くしていきたいという「マジ価値」な気持ちを忘れずに、引き続きカスタマーハラスメントガイドラインをブラッシュアップし続けていきます。
■今後
今回カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方のプレスリリースにあたり、テレビ東京のWBSでも取り上げていただき(一週間程度はこちらから見れるそうなのでご覧ください)、SNSでも共感のお声を拝見し、社会としてカスタマーハラスメントに向き合って行く時代が来ていると実感しました。
freee社内でのフローの整備やガイドラインのブラッシュアップを続ける一方で、社内だけに閉じず、freeeのお客様や他の企業様にも、優しい世界が広がるきっかけになれるよう、今後も活動していきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。