見出し画像

「英雄を謳うまい」の読書感想文

レイモンド・カーバー著、村上春樹訳「英雄を謳うまい」を読みました。
初期の作品には既に会話や周囲の環境の説明で登場人物たちが置かれている複雑な状況を説明をしているものがありました。
幻想的な短編があります。カップルの会話から始まり、彼らは南米か中東らしい国に滞在している。そして、これから大切な避けられない用事を抱えている。カーバーの他の作品にもありがちな設定で意外な結末を迎える。そこが意外でした。
異なる雑誌に寄稿されたエッセイも収録されています。その中で最も印象的な言葉は「私の親戚」より。

(Fact: Short stories are closer n spirit to poem than they are to novel.)
ひとつの事実。短編小説というのはその精神において、長編小説より、詩に近い)

確かに短い文章で広い世界を表現する短編は詩に近いかもしれません。カーバーを読み始めた時期と詩集を読み始めた時期が近いのは偶然ではないように思います。
書評の中でヘミングウェイの作品の中で将来に渡り残るのは2作品ぐらいだろうと亡くなった直後は云われていた事も興味深いです。同時代に生きたものしか描けない文章がある。結果的にはそれが間違っていたとしても意義はあると思っています。その評論の中で大作家ヘミングウェイの変わった性格と生活習慣について述べています。そして、カーバー自身のヘンテコな趣味についても友人のあとがきで述べられています。その中にはジョン・ガードー、これから村上春樹訳で読む予定のジョン・チーバーの名前も見つけました。結局のところ周縁に楽しめるものは存在するもので好きな作家や詩人が活字にしてくれた手掛かりを基に探していく。それが自分のやり方に合っている。そんな事も確認でき、最終的にはビートルズのように優等生的で避けてきた村上春樹さんのの作品にも手を出すだろうなと確認できた本でした。
#読書感想文
#レイモンド・カーバー
#村上春樹

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?