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指す将順位戦6th A2-4 vs ずーさん

 指す将順位戦の自戦記です。4回戦について書いていきます。

「なにか」とは何か

 7月14日のぞののば逃げラジにて、その発言はありました。(1:29:30頃)

こまちさんは、新規参加者の勢いがあるから、指す将の……うーん、ここは勝って、示したいですね、なにかを。

 私は同じ新規参加者として、この「なにか」が気になっていました。ずーさんは何を示すつもりなのか。
 そして、ずーさんとこまちさんとの対局が行われました。ずーさんのとった作戦は、意表を突く端角四間飛車でした。こまちさんが事前研究をしっかりする作戦家と知ったうえで、想定できない作戦を持ってきました。結果はずーさんの勝ち。
 このことが、私の中でモヤモヤしたものを残しました。結局ずーさんの言っていた「なにか」は何だったのか。だまし合いで事前研究を躱して相手の意表を突くのが指す将順位戦だとでも言うつもりなのか……と。

作戦を悩む

 対局の週、私は引越しをしました。地理的に遠いため搬出日と搬入日の間に1日あったりして、結構な大仕事でしたが、順調に進みました。
 落ち着いたのんびりした町で暮らすことになりました。水もおいしいし野菜も安くておいしい、素晴らしいところです。今後は日常を大切に、丁寧な生活をしていこうと思いました。

 しかし指す順の対局に関する決心はできていませんでした。前局で相居飛車のひどい負けを喫しているので、相居飛車を避けるために先手番の作戦を変えようかとか、ちょっと憤慨した勢いで意表を突く戦法を採用しようかとかいうことを考えていました。

 引越し中で聞けていなかったずーののANNのアーカイブを聞くと、ずーさんが居飛車宣言をされていました。ずーさんは振り飛車のほうが強い気がしていますが、私は対振り飛車のほうが得意なので、どちらが嫌ということはありませんでした。

戦いを日常とする

 対局前でまだ作戦を悩んでいる中、ふと思ったことがあります。
 ずーさんはWebラジオもやっていて交友関係も広く、おまけに社畜でクイズにもはまっているので、明らかに煩忙です。忙しいずーさんは、指す順の対局についてもあれこれ悩んでいる暇は無いでしょう。
 ほとんど出たとこ勝負で指す順の対局をしているはずです。それはつまり、戦いを日常とする、ということなんじゃないか、と思い立ちました。

――戦いを日常とせよ。背伸びをせず、慌てず、ただ日常のこととして、あたり前のように自分の力を出し切る。それが指す順の将棋だ。

 ずーさんに言ったら全然違うって言われるでしょうね。おそらくこのあたりは指す順参加者の一人一人に思うところがあるでしょう。
 だからこれは、ある意味私自身の答えです。もう変に意表を突く作戦はやめにしました。もともと自分の序盤戦略を見直す目的で参加したものでもあるので、そのまま普段の自分の作戦で臨もうと思いました。

棋譜

 棋譜再生は将棋倶楽部24またはJavaScript将棋盤で。

対抗形に

 対局は後手番になりました。後手番だと基本的に相居飛車にはしないので、前局のような展開はありません。
 先手は居飛車で、坂田流向かい飛車を受けてこないのも予想通り、私は3二金型の四間飛車で対抗形となりました。

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲2五歩 △3三角
▲6八玉 △4四歩 ▲4八銀 △5四歩 ▲5八金 △4二銀
▲7八銀 △5三銀 ▲7九玉 △4二飛(図1)

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角交換の是非と5五の位

 先手は攻めの形よりも囲いを優先しました。居飛車穴熊に来るのかなと思っていましたが、左銀冠に進みました。ここで後手は中央に模様を張るため△4五歩と角道を開けていきます。

▲9六歩 △9四歩 ▲77角 △6二玉 ▲8八玉 △7二玉
▲8六歩 △8二玉 ▲8七銀 △7二銀 ▲7八金 △6四歩
▲3六歩 △4五歩(図2)

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 実戦はここから単に▲3七銀となりましたが、対局中は角交換から攻めの形を目指されるほうが嫌でした。3三の角がいなくなると3二の金を玉側に引き付けるのが難しくなるからです。しかし、先手としても穴熊に組む構想があるなら角交換はしにくいところだったでしょう。

▲3七銀 △5五歩 ▲6八金 △5四銀(図3)

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 進んで図3は後手が5五の位を確保したところ。私はこれで後手の模様が良くなったと思っていましたが、感想戦で聞くと先手はむしろ駒が上ずっているのでありがたいと見ていたようです。ここは棋風なのでしょう。

6筋と2筋の攻め合い

▲6六歩 △4三金 ▲9八香 △5三金 ▲9九玉 △7四歩
▲8八金 △6五歩 ▲同歩 △6五銀 ▲6六歩 △5四銀
▲7八金 △6二飛(図4)

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 先手の6六歩は不要だったかもしれないと感想戦でありましたが、穴熊に組みたい先手は後手の強引な攻めを警戒していたようです。
 図4は後手が飛車を転回して6筋を狙ったところ。▲6七金や▲6八飛と受けてくれば、まだ駒組みを続けるつもりでしたが、ここから先手も動いてきます。

▲3五歩 △同歩 ▲2六銀 △6五歩 ▲3五銀 △6六歩
▲6八歩 △5六歩 ▲同歩 △6五銀 ▲3四歩 △1五角
▲2六銀 △4二角 ▲2四歩 △同歩 ▲8五歩(図5)

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 図5に至るまで、先手は6筋を▲6八歩としゃがんで受けて、2筋方面の攻めを間に合わせようとします。それを後手は1五角と出て居飛車の税金を取り立てることで遅らせます。

 6筋と2筋の攻め合いであれば後手有利というのが振り飛車の感覚でしょう。居飛車の右銀が活躍できていないので、局面は振り飛車有利と感じていました。
 図5では△7五歩と強く攻める手がありました。△6四金~△7五金と中途半端な金を攻めに参加させて押しつぶす方針は魅力的でした。実戦は金がやはり中途半端なままになります。

△5六銀 ▲3五銀 △5四金 ▲3三歩成 △同角 ▲2四銀
△5五角 ▲2六飛 △5七銀成 ▲3五銀 △2二歩 ▲2四飛
△5三歩 ▲2三歩 △1九角成 ▲2二歩成 △6三香 ▲2一と
△6七歩成(図6)

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 途中いろいろと反省点はありますが、変化が多いので割愛します。先手の銀を遊ばせたままですが、桂香を取られて形勢は離れていません。
 いよいよ玉に迫る攻め合いへと進んでいきます。

寄せ合い

▲6七同歩 △同成銀 ▲1一角成 △7八成銀 ▲同銀 △6八香成
▲8六桂 △6四馬 ▲8七銀 △7八成香 ▲同金 △6九銀
▲7七金 △8六馬 ▲同金 △2二歩 ▲6三歩 △同飛
▲2二馬 △5五桂 ▲6四歩(図7)

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 このあたりもお互いですが反省しはじめるときりがない感じです。
 先手玉は固いですが、後手の攻めのほうが速度では勝っているので、緩みなく攻めれば勝てるという形勢判断でした。しかし図7の歩打ちを見落としていて、まだ微差ながら逆転されたと思いました。

△6四同金 ▲同飛 △同飛 ▲5五馬 △7三銀 ▲6四馬
△同銀 ▲8四香 △5八飛

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 先手の▲8四香は読みに無い手でしたが、直感的に甘いと感じ、詰めろではないと判断して△5八飛と踏み込みました。
 この踏み込みで先手の対応が難しく勝ちに近づいたようでしたが、厳密に先手に手段が無かったのかまではわかりません。

▲8三香成 △同玉 ▲7五桂 △同銀 ▲7九金 △8六銀
▲6三飛 △7二玉 ▲6九飛成 △5五角 ▲6六香 △8七銀成
▲6三角 △7三玉 ▲8四銀 △8二玉 ▲5八龍 △6六角
▲7七飛 △同成銀 ▲同桂 △同角成 ▲8八銀 △8七桂(図9)

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 角打ちを△7三玉とかわしたあたりでようやく勝ちだと思えました。最後は詰み筋を何度も確認しながら指していました。

やりきった熱戦

 激闘の末に掴み取った勝利でした。
 反省点はいろいろあるものの、やりきったという感覚があります。

 本局では感想戦もかなり長くやったのですが、振り返ればお互いにこうした方が良かったとかいうところがたくさん出てきます。それらは今の自分にとって「指せなかった手」ではあるものの「指せない手」ではないという感じがします。
 ほんのわずか、手が届くか届かないかという差で局面の優劣は大きく変化します。

 普段クエストで2切れとかを指してるのと比べると、長時間の真剣勝負に挑む機会は少なく、貴重です。こうした対局を通じて、今まさに自分は少しずつ強くなれてるんじゃないかなと感じました。

 次の5回戦の相手は、ずーさんの心の友、面妖流さんです。本局を勝ったからには、面妖流さんも本気でずーさんの敵を取りにくるに違いありません。
 もともと独創的な将棋で注目していた方なので楽しみですし、過酷な戦いが続くことは既に承知しています。戦いを日常とせよ、です。
 また熱戦になるといいなと思います。

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