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巨大OTTプラットフォーマーに死角はあるのか。Netflixを中心に分析してみた。②動画配信サービスの市場規模

どちらかというと屋外でストレス発散するのが好きな僕としては、動画配信サービスを自分自身で使う際に純粋に思う事は、「こんなに作品が山のようにあって一生かけても全部は見切れないよな」とか、「途中で見るのをやめた理由って、実は時間がもったいないと思った事なんだよな」という意外とNegativeな感情です。とはいえ、確かに24とかFringeとかWalking deadとか、生活リズム崩してまで見た記憶があるので、CEOのヘースティングス氏が過去に言っていたように、「Netflixの最大のライバルは別のネットワークではなく睡眠だ」というのはとても納得感があります。今回は、前回の財務分析に引き続き、「巨大OTTプラットフォーマーに死角はあるのか」ということで動画配信サービスの市場規模を中心に見ていきたいと思います。

1.そもそもプラットフォーマーって

これを読んでくれている方には当然の事で釈迦に説法かもしれませんが、すでに巨大な顧客基盤を持ったNetflixと戦う企業は、自社であるいはNetflix以外の他社と協力してプラットフォームを構築・拡大するか、あるいはNetflixと競合しないようプラットフォームを活用するか連携する方法が考えられます。そして、そもそも何故プラットフォーマーを目指すかというと、ネットワーク効果が働くためです。例えば、SNSは利用者が自分一人だとあまり意味がなく、世界中の人とつながる事ができるからこそ意味があります。利用者の数が大きくプラットフォームの価値に影響します。さらに、付随するサービス・商品がプラットフォームも影響を与える大きな要因です。
また、多くのユーザーがそのプラットフォームを利用する事で多くのデータを取る事ができるようになります。ユーザーの行動データを取る事でサービス供給サイドをより魅力的にすることが出来ます。また、そういったデータを活用した広告に活かすこともできます。そして、周辺ビジネスに拡大していき巨大なエコシステムを構築していく選択肢も見えてきます。そうなると、益々強力なプラットフォームになっていきます。提供できる商品やサービスが増えてユーザーがそのエコシステムの中で出来ることが増えると、そのプラットフォーマーはユーザーを囲い込むことに成功します。そして圧倒的なスケールにまで拡大し、超巨大な資本力とデータを持つようになると、とてもその他の企業には太刀打ちできなくなります。Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft等のいわゆるGAFAMが良い例です。規模を拡大して市場を早く占有していくことが重要なことは理解できますが、じゃあそもそもどのくらいの市場規模があって、今後どの程度成長していくのでしょうか。Netflixが巨大プラットフォーマーとして君臨している動画配信市場を鳥瞰していきたいと思います。

2.動画配信市場について

動画ストリーミングの種類には、SVOD、TVOD、EST、AVODなどがあります。SVODはSubscription Video On demandの事で、Netflixのような有料会員を対象にした定額のサブスクリプション、TVODはTransaction Video On Demandの事で、個別のコンテンツを購入の都度課金する形式、ESTはElectronic Sell Throughの事で、ダウンロードする買い切りのiTunesのような形式、AVODはAdvertising Video On Demandの事で、無料配信(YouTube等のように広告を使ってマネタイズするモデル)です。
そして、タイトルにも使っているOTTという言葉は「オーバー・ザ・トップ(over-the-top=OTT)」を意味します。OTTそのものは「従来のインフラに頼らないインターネットによるコンテンツ配信」を意味しています。特に米国では従来結構高いケーブルTVの料金を支払う必要があったところ、YouTubeやNetflix等のOTTが登場して激震を与えてきました。■動画配信市場の市場規模推計(単位:億円)

Source. PR TIMES

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詳しくはリンク先のPR TIMESを見てもらえればと思いますが、2019年の国内動画配信市場規模は2,770億円(前年比約126%)となっています。以下、PR TIMESから引用です。2010年を大体750億円とするとCAGRで約15.6%です。

「定額制見放題サービス(SVOD)を中心に市場規模は大きく拡大しました。サービス事業者による継続的な広告宣伝の効果や見逃し配信の浸透に加え、動画配信プラットフォーム事業社と通信系事業者との連携施策が進み、動画配信の視聴習慣が定着・浸透し、ユーザー層が更に拡大したことで過去最高の伸長となりました。
また、今後の市場規模の予測では、市場規模が一定のキャズムを超えたことで定額制サービス(SVOD)が引き続き拡大することが見込まれることや、映像ソフトのセル・レンタル市場の落ち込みをカバーする形で、都度購入(EST)、都度課金サービス(TVOD)の拡大が期待されること、5Gによるサービスの普及といった環境変化が及ぼすライフスタイルの変化を踏まえ、2024年には3,440億円まで成長すると推定しました。」

以下は、StatDBというサイトからの引用です。国内の動画配信市場規模の予測です。調査元はNRIになります。動画配信の定義にもより多少上記と異なりますが、こちらも以下の通り概ね2,000億円~3,000億円の規模感ですね。

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日本における2018年の動画配信市場規模は2,170億円であった。2018年から2025年にかけて、動画配信市場は緩やかに成長する見通しであり、2025年には2,644億円になる予測である。
映画・映像エンタテイメントに特化したマーケティングデータ分析・レポート提供を行っているGEM Partners株式会社の調査によると、2019年の定額制動画配信サービスの国内市場シェアはNetflixが13.8%でトップであった。Netflixは2018年時点での市場シェア8.4%から一年で5.4pt伸ばしたことになる。2019年における国内市場シェアの2番目はDAZNで11.2%(前年比:-0.5pt)、3番目はAmazon プライム・ビデオで10.9%(前年比:+1.6pt)であった。
消費者が、パソコン、テレビ、携帯電話端末(スマートフォン・タブレットを含む)などの機器を用い、インターネットやケーブルテレビなどを経由して、自分がリクエストした映画、アニメ、海外ドラマ、アダルトビデオなどの映像コンテンツを視聴する。そのために、動画配信サービスを提供する事業者に支払う金額の合計額を、動画配信市場と定義する。

次にグローバルなデジタルコンテンツ市場に目を向けてみたいと思います。PwCのサイトから引用しています。まずはEntertainment & Media全体です。2019年の見込みで2.2兆ドルです。1ドル100円換算すると220兆円ですね。。。超巨大です。全世界のEntertainment & Mediaとなるとそのくらいの規模があるんですね。

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次に、OTTの動画配信収益の規模を見てみます。2019年で大体45 billion dollarですね。100円換算すると4兆5,000億円です。またこれもとんでもない市場規模ですね。グラフを見るとSVOD(黄色のグラフ)とTVOD(オレンジのグラフ)を足してTotal OTT video revenue(ピンクのグラフ)となっているので、つまりAVODによるRevenueは含まれていないと思われます。おそらくAVODを含めるとさらに大きくなりますね。

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そして、最後にOTT videoの今後の成長予測を見てみたいと思います。以下は、Growth in TMT(Technology, media and telecommunications sector)であり、2018年~2023年における*CAGR(compound average growth rate=年平均成長率)としては、OTT videoのみが二桁成長の約14%となっています。
*市場成長率や取引量・売上等の規模の成長を見るには短期の影響を除いた年平均成長率を表すCAGRで見ることが一般的です。

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最後に改めてNetflixの収益の成長と比べてみたいと思います。

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CAGRは28.15%です。。。凄いですね。冒頭で触れた日本の動画配信サービスの市場における2010年~2019年の10年間のCAGRが約15.6%であることを考えると(日本とグローバルでApple to Appleでの比較ではないものの)、市場平均の倍の成長率を誇っています。やはり市場成長率と単純に比べてもNetflixは著しい成長を遂げていることがわかりました。

今回は動画配信サービスの市場規模に着目しました。ざっくりとRecapすると、①市場規模は現時点でも非常に大きいものの、今後数年間も二桁成長が見込まれている、②その中でもNetflixのような巨大プラットフォーマーが市場成長をOutperformしており、成長をけん引している、といったあたりでしょうか。知れば知るほど死角がなく、少なくともこの先数年間は安泰なような気がしてきました。。。ただ、まだわかりませんw 何とかして他の企業が戦っていく、あるいは上手く共存していく方法を見つけていきたいと思います。

次回以降で、競合比較、エコシステムの仕組みと戦略、5G時代における可能性等を見ていきたいと思います。読んで頂きありがとうございました。



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