エビデンスを構築し、臨床に還元するために。

 COVID-19流行下において、これまでの何気ない日常のありがたさを感じる場面が多くあるのではないでしょうか。新しい生活様式が提案される中で、感染予防のために必要なことと頭では理解できるものの、様々な場面でストレスを感じることもあると思います。この困難を乗り切るために皆が励まし合い日々の生活を送る中、医療現場の最前線でCOVID-19と向き合い、奮闘している医療従事者の方々には感謝してもしきれません。感染拡大の影響により医療崩壊の危機が叫ばれる中、厳しい状況が続く医療現場や保健所等で働く医療従事者のメンタルヘルスはどのようにして支援されているのでしょうか。

『Interventions to support the resilience and mental health of frontline health and social care professionals during and after a disease outbreak, epidemic or pandemic: a mixed methods systematic review(パンデミック発生時やパンデミック後に、最前線で働く医療従事者のレジリエンスとメンタルヘルス(精神的健康)をサポートするための最善の方法は何か?)https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013779/full?contentLanguage=en

 このシステマティックレビューでは、2002年以降(重症急性呼吸器症候群(SARS)発生の前年)に発症した感染の流行を対象としており、下記に示す二つの目的がありました。
目的1:最前線の医療従事者のレジリエンス(回復力)や精神的ウェルビーイングが、介入によってどの程度改善されたか。
目的2:これらの介入の実施を容易にしたもの(促進要因)と困難にしたもの(障壁)は何か。

 目的1については、エビデンスの確実性が非常に低いため、行われた介入が役に立ったかどうかを判断することができなかった、と報告されていました。目的2については、介入の実施に影響する促進要因と障壁に関して、それぞれ中程度の確信が得られたと報告されていましたが、医療やソーシャルケア従事者のレジリエンスと精神的ウェルビーイングを支える最善の方法を見つけるために、適切に計画された調査研究が急務であると結論付けられました。
促進要因
1) 地域に適応できる介入であること。
2) 組織内でのフォーマルなコミュニケーションとインフォーマルまたは社会的ネットワークの両方における効果的なコミュニケーションがあること。
3) 最前線で働く医療従事者のためのポジティブで安全かつ支援的な学習環境があること。
障壁
1) 最前線の職員または彼らが働いている組織が、彼らの精神的ウェルビーイングを支援するために必要なものを十分に認識していないこと。
2) 介入に必要な設備、スタッフの時間、またはスキルが不足していること。

まとめ

 様々な分野で研究は積み重ねられているものの、その信頼性や妥当性が十分でない場合には確固たるエビデンスとはならず、臨床に還元することができません。臨床において適時適切に活用することのできるエビデンス構築につなげるためには、適切な研究計画の立案と実施が重要であることを改めて考える機会となりました。

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(文責:山田)

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