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牧野英一

「行刑における技術化、経済化、教育化及び法律化」
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刑政46巻1号 昭和8年1月


  新派刑法理論で知られる牧野英一(明治11(1878)年-昭和45(1970)年)が行刑についての基本的考え方を述べたものである。刑の目的に犯罪者の社会復帰があるという点は誰も否定しないことではあったが、更に教育刑という考え方を採ることで行刑の可能性は広がり、行刑(広い意味での教育)の技術、効率、効果の実証、更にそれに応じた法的枠組みが必要になるとの考え方が示されている。目下、刑法の改正も議論されている中、基本となる古典論文の一つと考えられる。

  ちなみに、牧野は、貴族院憲法改正案特別委員会における日本国憲法の審議で、「第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」という案(現規定)に対して、刑罰はもともと苦役を科すものではないという観点から、「奴隷的拘束はこれを禁ずる。国民はその意に反する苦役に服させられることがない」とする修正意見を提出し、「第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」についても、「公務員による暴行陵虐の行為及び残虐な刑は、絶対にこれを禁ずる。刑の言渡し及び執行においては犯人の改善を考慮することを要する。」という修正意見を提出している(後者の後段については、牧野個人としては刑の目的は犯人の改善にあるという考えだが、教育刑への反対論者の立場も考慮しての案だったという)。(注)

(注)牧野英一「憲法と矯正法の理念」(刑政68巻5号1957年)11~12頁


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