フェイスブックの「最高裁」,監督委員会とは

2019年7月17日,マーク・ザッカーバーグの手紙とともにフェイスブックの「最高裁」こと監督委員会の「憲章」が公表されました。
https://about.fb.com/news/2019/09/oversight-board-structure/

このマーク・ザッカーバーグからの手紙が,率直な設立趣旨をまとめたものになっています。
Facebook’s commitment to the Oversight Board
https://about.fb.com/wp-content/uploads/2019/09/letter-from-mark-zuckerberg-on-oversight-board-charter.pdf

曰く,Facebookは人々にパワーを与えるために存在している,でも時々他者を危険にさらすこともあるということを認識している。そのために,私たちのプラットフォームでは何が許容され,何が許されないかを定めたコミュニティ・スタンダードがある。私たちは,毎週,何百万ものコンテンツに関する決断をする責任を負っている。ただ,一私企業が,表現というものについて,そこまで重要な決定をしてよいものではなかろうと思う。だから,独立の監督委員会を設立するのだ,と。

この一言に設立趣旨がギュッと詰まっている気がします。

[Our commitment to free expression is paramount, but we still need to keep people safe and take down harmful content.]
私たちの表現の自由に対する責任は至高のものだ,しかし私たちはそれでも人々を安全に保ち,害悪に満ちたコンテンツを外さなければならない。

その基準として,国際人権法に先導された,信頼性,安全(Safety,すなわち安全であって,安心ではないですね),プライバシー,そして尊厳という一連の価値観を挙げています。

監督委員会が審査するのは,以下の2つの場合です。

1.ユーザーによる審査リクエスト
Facebookによる判断に納得できず、異議を申し立てても問題が解決しなかった場合、コンテンツの最初の投稿者、または審査のためにコンテンツをFacebookに提出した利用者は委員会に審査リクエストを提出することができます。

2.フェイスブックによる審査リクエスト
Facebookは、コンテンツを残すのか、それとも完全に削除するのかという判断以外にも、コンテンツの取り扱いに関する他の懸案などの審査リクエストを提出できます。

https://www.oversightboard.com/governance/
(2条1)

審査リクエストされたもののうち,実際に審査するかどうかを決めるのも監督委員会の権限です。

審査することになった各事例は,委員会メンバーで構成されるパネルによって審査されるのですが,そのパネルには該当地域から少なくとも1人のメンバーが参加します(3条2)。たとえばアメリカ人のユーザーが削除されたフェイスブックのコンテンツを争う場合,アメリカ人のメンバーが入るということですね。

決定に当たっては,「率直で忌憚のない審議によってあらゆる意見を考慮して判断できるように、全会一致による決定を目指します。全会一致に達しない事例は、パネルの過半数で決議されます。」(3条4)と定められています。

最終的には多数決ですが,あえて全会一致による決定を目指すと記載しているところに,熟議への意識がみてとれます。さらに,委員会全体の過半数がパネルの判断に反対だった場合は,パネルを入れ替えて再審査するのだそうです(3条7.1)。

慎重な仕組みをもうけていますが,それほどまでに一私企業が判断を迫られてきたということであり,その判断の中でも特にしんどいものをこの監督委員会に委ねるということでもあるのでしょう。

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