触る

ある日、押入れに眠っていたたくさんの着物を整理しようと、呉服屋に持っていった。ずいぶん前に家族から預かったまま開けたことがなかった衣装ケース二箱分。どんな着物が入っているのか、紙の袋を開けて確認する。

亡き祖母が集めていた着物は、どこか祖母らしいセンスを垣間見れるほど、独特で少し不思議な柄や色彩をしていて、大阪の当時の文化を感じる。何度も往復して触っていると、祖母や家族の着物姿の記憶が蘇ってくる。子どもの着物、男性着物、喪服、普段着、第二礼装など、着物の種類を分けて、自分が着るか他に似合う人がいるか整理をする。

祖母が集めた着物は、特別なものではない。同じような中古の着物はリサイクルショップにいけば山ほどあるけど、祖母が選んだ着物はここにしかない。この巡り合いから、わたしには到底買うことのない、遠かった着物が触れるほど近くなった。この着物を鳥取で披露する日が楽しみだ。

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