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河野太郎氏「消費税を財源に最低生活年金と基礎年金の全国庫負担」についての解説と実現性

河野氏による基礎年金発言

2021年9月の自民党総裁選で河野太郎氏(元外務・防衛・行政改革・ワクチン担当大臣)は
「消費税を財源に最低生活年金と基礎年金の全国庫負担すべき」と発言しました。さらに厚生年金も運用方式にすべきなど年金制度の改革を訴えました。

しかし、他候補や自民党内部、ネットでは反発が強く、色々議論となりました。河野氏の年金改革案が騒がれているため、解説としてブログに記載しました。そして河野氏は批判を恐れて撤回しました。

果たして、「消費税を財源に最低生活年金と基礎年金の全国庫負担」はどのようなものでしょうか?


河野氏の主張する年金改革案での議論は2004年の民主党からあった

2004年に民主党は政権公約として最低保障年金を掲げました。しかし、案がまとまらず、消費税を何%上げるか、年金を一元化すべきかの議論で結論が見えませんでした。

2012年に民主党が与党だった時代には最低でも月7万円年金を貰える法案を提出しましたが、消費税7%増税分の財源が必要になりました。さらに年収690万円以上の人には上乗せしないなどで反発があり、断念しました。当時ねじれ国会のため実現できるわけがありません。

その後、最低生活年金構想は2019年に安倍政権下で消費税8%から10%増税時に月5000円の年金保障がされるようになりました。これによりすべての国民は年金が貰えるようになりましたが、年金保険料は2017年まで引き上げられ、給付水準の低下が起こると言われています。


年金の国庫負担、基礎年金保障で消費税で負担するとどうなるか?

まず、消費税は1%の税収が2.8~2.9兆円です。これを元に試算します(軽減税率廃止)。また、基礎年金の予算額は25兆円で、うち12.5兆円は保険料負担です。

2021年の高齢者人口が3640万人です。月6.5万円支給だと28.4兆円、月7万円支給だと30.6兆円負担となります。それぞれ16兆円と18兆円負担となりますので、消費税は16~17%となるでしょう。

高齢者人口がピークとなる2042年の高齢者人口が3935万人です(内閣府試算)。月6.5万円支給だと30.7兆円、月7万円支給だと33.1兆円負担となります。それぞれ18.2兆円と20.6兆円負担となりますので、消費税は17%(最悪18%)となるでしょう。

経済維持した状態では平均的に消費税10%から17%の増税が待っています。ただ、年金保険料は18.3%から13%へ負担軽減(バブル期と同水準)となり、国民年金の定額負担はなくなります。さらに65歳を超えたら原則基礎年金が貰えます。


最低生活年金と基礎年金国庫負担のメリットとデメリット

メリット

まず65歳から年金を自動的に受けとることができるため、年金保険料を未納した人でも貰えるようになります。そのことから貧困に苦しむ高齢者やロスジェネ世代の生活保護増加を抑制することができるでしょう。

また、将来的に年金受給年齢引き上げを阻止できます。このため恒久的に年金を貰い続ける制度で安定していきます。

また、社会保険料負担軽減の結果、現役世代の手取りが5は%増えます。非正規で定額負担している人も負担がなくなり、20万円を好きに使えるようになります。

消費税は7%増えますが、年収200万円以下の人にとっては事実上消費税廃止の恩恵を受けます。低所得者の消費税負担は年間17万円となりますが、定額負担し続けた年金は20万円のため、マイナス消費税で恩恵を受ける人も出るでしょう。


デメリット

デメリットは消費税での負担となります。消費税は逆進性が強く、負担割合は低所得者ほど多いです。老後に年金が貰えても失業者などは高齢者になれるまで耐えれるかです。

また、消費税増税は経済にも影響を及ぼし、個人消費を停滞させます。10%で消費が伸びない現状、17%でどこまで消費を抑制になるかです。そこは増えた年金と保険料負担軽減でどう穴埋めできるかです。

さらに失業している人や働けない人、月6万円以上の基礎年金を貰っている高齢者には実質負担増加となってしまいます。賛同を得られるかでしょう。


まとめ

筆者は基礎年金の国庫支出をするのは保険料の負担軽減になりますし、65歳から誰でも同じ金額の基礎年金が貰えるというのは老後不安の解消になりやすいと考えています。

ただ、財源については消費税だけではなく、国債、所得税、厚生年金廃止、金融資産課税などで揉めてくるでしょう。適切な議論を通して国民的な合意ができればと思います。

仮に国民全員に年金を貰えたとしたら、今度は厚生年金加入か未加入かの議論は出るでしょう。そのためには国民全員にideco加入義務化などの考えは出ると思います。

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