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講談社FRIDAY記事「修理に約12億円!「国宝」日光東照宮・陽明門がボロボロのワケ 」の違和感


写真週刊誌FRIDAYに次のような衝撃的な記事が載りました。

https://friday.kodansha.co.jp/article/136518

日光の社寺は平成の大修理で国産漆を使いましたから、もしやそれが原因なら大変だと思い、早速、文化財保存修復学が専門で建築装飾技術史研究所所長の窪寺茂先生にお伺いしたところ、詳細な解説をいただきました。

結論からいうと写真で見る限り劣化している箇所はすべて胡粉塗がされておりそれ特有の課題を認識していながらもその技法を選択せざるを得なかった事情があるようです。

日光東照宮は一般的な建築とは違い、国宝であり世界遺産です。それは江戸時代から約400年にわたって幾度となく修理修復を繰り返し創建当時の姿を保っていることや、信仰形態や学問思想を体現していることが評価されたからです。
先生によると、劣化した箇所はすべて胡粉塗とのことです。日光ではこれまでも胡粉塗の箇所に生じるカビと剥離に悩まされてきたそうです。そのため試験塗など行っていますが、菌類の強さ、日光の過酷な自然環境では克服されていません。

しかし、先人がこの技法を選択し修復を繰り返し、元の姿を保ってきた結果が現在の陽明門の姿です。それが世界遺産に認定された理由であります。これを安易に現代の耐候性を持つ最新素材に変えてしまったならば世界遺産の認定が取り消されるかもしれません。

ユネスコによると「日光の建造物は、天才的芸術家による人類の創造的才能を表す傑作であること」
「日光における古来の神道思想に基づく信仰形態は、自然と一体となった宗教的空間を創りあげ、今もなお受け継がれていること」などが評価されています。

文化財の保存というテーマは非常に難しく、私は専門家ではないので詳しくはないのですが、劣化損傷した時になにかしらの措置を講じて寿命を延ばすことはできますが、そもそもの文化財のなりたちや環境や材質に配慮しなければなりません。徳川家や職人がどのような思いで建てたのか、なぜこの素材を使ったのか、それを勝手に変えてしまっていいのか、倫理的に問題がないのか、総合的に判断しなければなりません。

また、どんな建造物であっても修理を終えた瞬間から劣化は始まりますし、災害や気候によっても劣化の具合は変わります。


今回の記事は一面的であり、タイトルや記事内容に非常に違和感を感じます。

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