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6月3日プーチン大統領インタビュー

プーチン大統領が、ロシア・ワンテレビのジャーナリスト、パベル・ザルビン氏のインタビューに答えました。
ソチにて

食糧危機について

ザルビン:プーチン大統領とセネガルの大統領との会談を拝見しました。アフリカ連合の議長でもあります。食糧危機についてが主な内容でした。この問題がここまで大きくなったのには石油とガスの価格上昇も含まれていると思うのですが、いかがでしょうか。
そして欧米諸国は当然この状況をロシアのせいにしていますが、そのいきさつと大統領のお考え、今後の予想などお聞かせください。

プーチン大統領:そうだね。食料問題や他の問題もロシアのせいにしようとしているのは見て取れる。ただ言っておくけれど、これはしようとしているだけで、問題の根本的な解決にはならない。

1.アメリカ経済政策の失敗によるドルの価値低下

何故なら、食料の供給が少なくなったのは最近の話ではなく、ロシアのドンバス特別軍事作戦が始まる前の話だから。具体的には2020年から生産量が落ち込み始めた。新型コロナのパンデミックによって経済が鈍化し、その後の回復が必要な時だったんだ。

アメリカの金融・経済機関は大量に紙幣を刷って国民に配る事しか解決策が見つからなかった。

我々ももちろん紙幣をいつもより多く刷ったが、ロシアは期待する結果が得られるように、もっと慎重に正確にやるんだ。マクロ経済指標やインフレ指数などを注意深く見ながらやるからね。

アメリカは2020年から2021年の2年足らずで、アメリカ国内の通貨供給量を5.9兆ドル(770兆円)も増やしてしまった。これは前代未聞の紙幣印刷機フル稼働で、単純に38.6%サプライが増えたことになる。

アメリカはUSDが今まで基軸通貨だったことから、過剰に印刷をしても世界に分散されアメリカ国内に影響は出ないと思っていた。でもそうではなかったようだね。言っておくが、アメリカ人の一人一人はちゃんとした人たちなんだ。先日アメリカの財務大臣はちゃんと「判断を誤った」と認めたね。だからアメリカの金融経済の問題と言うのはロシアのウクライナでの作戦とは何の関係もない

以上が食糧危機の一つ目の理由だ。基軸通貨が崩れてしまったため食糧の額面が大きく上昇してしまったんだ。

2.エネルギーの高騰とヨーロッパの失策、石油過小評価

第二の理由として、ヨーロッパ諸国の先を見通す力のなさが上げられる。特にユーロ議会のエネルギー関係は近い未来しか考えていない。現状を見ればわかるね。私が個人的に思っていることだけど、沢山のアメリカとEUの政治家は地球の気候変動に過敏になり「グリーン政策」に傾倒しすぎたのかも知れない。

すごく良いことだとは思う。ただしエネルギー分野では、根拠のない「~しなきゃ」と言う動きは悪い方向へ向かってしまう。置き換えを進めようとした太陽光や風力発電、他になんだっけ。水素も期待されているけど、ただ現在では十分な量ではないし、品質も価格も追いつかない。それなのに伝統的な資源である石油を軽視し始めてしまった。

なぜこうなってしまったのか。世界の銀行は圧力をかけられて従来のエネルギーへの融資を止め、保険会社も石油関連の取引への補償を止めてしまった。地方自治体は石油生産を拡大するための土地区画を停止したり、パイプライン輸送などの建設は削減されてしまった。

世界のエネルギー事情を過小評価した事で、価格上昇が起こった。去年の様に風が足りなかったり、予想を下回ったうえに冬が長引いてしまった場合、エネルギー価格はアッと言う間に上がってしまう。

特にヨーロッパの人たちは我々が、もっと長期の契約を結ぼうと緊急提案したにも関わらず聞く耳を持たず、しまいには隠そうとし始めた。いまだに隠ぺいしようとしているようだけど、これはヨーロッパのエネルギー市場に良い効果はもたらさない。これについてロシアはできる事は何もない。

ガスの価格が上がるとすぐに肥料の値段も上がった。肥料を生産する際にガスを使うからで、これは何を作るにもエネルギーに直結していると言う事になる。肥料製造の企業はエネルギーの高騰で利益が見込めないので事業をたたむ。すると肥料の生産量が減る。そして価格は更に上がると言う流れだ。そしてそのスパイラルを、ヨーロッパの政治家は「予測不可能だった」と言う。

この件に関してもドンバスでの特別軍事作戦は関係がない。

3.アメリカとヨーロッパが状況を悪化を招いた

それからロシアが特別軍事作戦を開始したことで、欧米諸国は食料と肥料の状況を悪化させる事しかしていない。

ロシアは世界の肥料の25%を生産している。ただ考えてみて。ベラルーシのルカシェンコが言ったんだけど、ベラルーシとロシアを合わせると、世界のカリウム肥料はこの二国で45%にも上ってしまう。ものすごい量なんだ。

食糧の収穫は肥料の投入量に比例する。だから世界市場でロシアの肥料が流通しないとなったらたちまち食べ物の価格が跳ね上がってしまった。必要な生産量に到達しないかも知れないからね。

これもロシア側ではどうにもできない事だ。私の同士(EU,US)はみな自分で間違いを犯したのに誰かのせいにしたい。で、今の時期ロシアのせいにするのがうってつけなんだ。

肥料に対する追加制裁について

ザルビン:ところでEUの新しい制裁パックにロシア最大の肥料メーカー社長の奥様が含まれていましたが、これが今後どう影響するとお考えですか?

プーチン大統領:そうだね。状況はさらに悪化するね。イギリスとアメリカのアングロサクソンはロシアの肥料の輸入制限をした後に、これはやばいと気が付いたのだろう。アメリカは制裁を外したね。でもヨーロッパは「ロシアになにかの制裁をしてやろう。何かしないといけない!」って考えた結果、状況を悪化させる事しかしていない。

今後の肥料市場はさらに悪くなる。肥料が無ければ不作になり食料の価格は更に上がるだけ。目先の事しか見えていない。私に言わせれば「バカな政策の先には終わりしかない

ウクライナの穀物輸出について

ザルビン:もう一つ、食糧危機の原因としてロシアがウクライナの穀物輸出を制限していると非難されていますが、これはウクライナ領土内の港の事ですがロシアが輸出を許可しないと言われています。

プーチン大統領:それは吹聴だ。理由はこうだ。

まず第一に穀物輸出には既定の生産量があるからそれから説明しよう。世界では年間に穀物・小麦は8億トン生産される。そんな中、現在のウクライナの輸出が準備できている量は2千万トン。世界の生産量の8億トンと比較すると2千万トンは2.5%に当たる。もし、世界全体の食糧のうち小麦が2割だとするとーこれはロシアのデータではないよ。国連のデータなんだ。2千万トンのウクライナの小麦は世界の食糧の0.5%に過ぎない。(だから食糧危機の原因がウクライナの小麦だとは言えないって事だと思う )

2つ目に、ウクライナが現在輸出できる小麦の量は、これはアメリカ当局も発表しているが、たったの600万トンしかない。ロシアの農業省では500万トンと言われているが・・まぁ600万トンにしておこう。後は700万トンのトウモロコシだ。大した量ではないと言える。

ロシアでは2021‐2022年の農業統計によると3700万トンの輸出を見込んでいる。2022‐2023年には5千万トンを輸出する予定でいる。
(紛争で落ち込む生産量を補う量をロシアは生産計画に入れていると言う意味だと思う)

1.黒海オデッサルートについて

ウクライナの輸出ルートについて、我々は妨害などしない。それにウクライナの穀物輸出ルートは一つではない

まず輸出はウクライナ領内の黒海の港から自由にやってもらって構わない。オデッサ近辺に港があるから。我々はウクライナ軍のように港に機雷をばらまいたりはしない。

我々に機雷の撤去をやらせろと何度も言っているんだ。そして港で穀物を積んだら、国際海上ルールに則って安全に航海できるようにするって。

彼らは機雷を撤去して、さらに黒海の海の底から沈んだ船も引き上げる必要がある。ウクライナの南の海は近づくのに難しい地形だから船が沈むんだ。
我々は機雷の撤去の準備はできていると訴えている。機雷の撤去作業でウクライナに近づいたって攻撃なんかするわけがない。
これが一つ目。

2.アゾフ海マリウポリルートについて

次にアゾフ海‐ベルディヤンスクルートの輸出だ。マリウポリはロシアの制御下にあるからウクライナの穀物輸出に使える港だ。是非そうして欲しい。

機雷の撤去作業はほぼ完了している。ウクライナ兵は3重にも機雷を設置していたんだ。その作業も終わり、現在物流を立て直している所だ。是非ともマリウポリを使って輸出して欲しい。

3.その他ルート

ドナウ川を使ったルーマニアのルートもあるし、ハンガリー経由もある。
ポーランド経由はちょっと厄介かな。線路幅が違うから。でも積み替えれば問題ない。数時間で終わるから。

4.一番手っ取り早いルート

最後に、ベラルーシを通る方法がある。一番簡単で安いね。だってそのままバルト海へ出れるから、世界中どこへでも届けられる。

ただ、それをやるにはベラルーシに対する制裁を止めなければいけないね。それは私たちの問題ではない。ベラルーシのルカシェンコ大統領はこんな風に言っていたよ。「輸出の問題を解決したいのなら、もしほんとにそんな問題があるとしたら、一番楽なのはベラルーシ経由だ。誰も邪魔しない」ってね。

なので、ウクライナの穀物輸出の件は、問題ではないと思っている。

ザルビン:ロシア支配下の港からウクライナが輸出する際の条件などありますか?

プーチン大統領:無条件だ。分かって欲しい。港の安全は保障する。アゾフ海から黒海にかけて海外の船舶も安全に通れるようにしてある。

それはともかく、ウクライナの港で数十隻の船が足止めを喰らっている。港を出れないように封鎖して人質にしているんだ。


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