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ハーブ酒を探す

薬草酒というものがある。
ハーブの効果を引き出すために高濃度のアルコールに浸して成分を抽出したものは、エリキシルとして内用、チンキ剤として内用、外用ともに幅広く使われている。だけど、薬草酒というのはどういうものがあるのかと考えてみたが、養命酒くらいしか思い浮かばなかった。そこで、まずは手軽なところでネット検索してみようと、検索窓に「Herb liqueur」と打ち込んでみた。すると検索結果の上の方になんと「琉球ハブ酒 夫婦ハブ入り」と出てきて思わず苦笑した。決して日本語でハーブ酒と打ち込んだわけではない。ここまで読んでくれるのかと感心したが、それほど種類は多くないのだな、楽勝だぜ、とたかを括った。
ところが、出るわ出るわ、リキュールというものがそもそも果実やハーブなどを漬け込んだお酒だから世界中で作られているのだった。

そんなハーブ酒の一部を記録しておこう。

🌱アブサン
おっと、アブサンといえば超度数の高いお酒として認識していたが薬草系だったとは驚き。強い苦みはニガヨモギの成分。
ニガヨモギ:Artemisia absinthium
なるほどアブサンの名前の由来でもあるのか。生薬名は苦艾(くがい)
幻覚を起こすとも言われたお酒だが、その作用はツヨン(Thujone)という成分によるものであったため、現在はツヨンの濃度が規制されたものが製造されている。ツヨンって漢方の講義に出てきたなあ...

🌱イエーガーマイスター
これも強いお酒だと思うが飲んだことはない。アニスや甘草など56種類のハーブを使用したリキュール。ドイツの養命酒。いや、こっちが先だと思うけど。
アニスはスパイスとしてもお馴染みのセリ科の植物で、種子はフェンネルのようなほのかな甘み。ちなみにフェンネルは茴香(ウイキョウ)、アニスは茴芹(ウイキン)の別名がある。
甘草も生薬として多くの漢方薬などに使われている。甘みがショ糖の150倍とも言われるマメ科の植物。主成分であるグリチルリチンにはさまざまな効果がある一方、摂りすぎると「偽アルドステロン症」という副作用が生じることがあるので注意が必要。

🌱カンパリ
カンパリソーダ、有名すぎるほど有名で、これも薬草系だったとは驚き。
イタリアで苦いを意味する「アマロ」のためアマロ系と呼ばれることもある、というのが一般的な説明だが成分は何だろう。
原料は、ビターオレンジピール、キャラウェイ、コリアンダー、カルダモンなどとやはりスパイスと薬草との深い関わりを感じる。

🌱スーズ
フランス原産のリキュールで主な原材料はゲンチアナの根。
ゲンチアナ:Gentiana lutea リンドウ科
ゲンチアナの根および根茎は日本薬局方に収載されている生薬ゲンチアナ
強い苦みがあることで消化不良や食べ過ぎ、胃もたれなどに効果がある。
リンドウというと紫色の丸みのある優しい花を思い浮かべるかも知れないがゲンチアナは黄色の花だそうだ。

🌱梅酒
お世話になっております!梅酒もよく考えればハーブ酒ということになるのか。
成分についてはあまり多くの文献がない。漬け込み始めに多いベンズアルデヒドは貯蔵中にエステルなどに変換されて独特の芳香性を醸し出すようになるそうだ。

🌱アペロール
こちらもイタリアカンパリ社が製造しているリキュール。
原材料は、リュバブ、キナ、ゲンチアナなど。
リュバブはルバーブとも呼ばれるフキのような植物。鮮やかな赤い茎が特徴。和名が食用大黄、ダイオウといえばタデ科の生薬なのでお通じにもいいのかも知れないと想像するが、どれだけ飲めばその効用が得られるかは不明。

🌱フェルネット・ブランカ
世界一苦い酒 笑。いや、でもゲンチアナ、カモミール、リコリス、ジンジャー、サフラン、リュバブ、東洋系スパイスなど30種類のハーブ、スパイスをワインとブランデーの混合液に漬け込んでいる、と聞くとなんだか体に良さそう。
苦みは消化を助ける成分であることが多い。
名前はブランカ(白)だが、実物は紫がかったルビーレッドのようだ。

🌱シャルトリューズ
カルトジオ会の修道院に始まり、解散された時にも書物として残し製法が伝えられてきた。すごく歴史を感じる。こんなエリキシルの残存に薬剤師が関われなかったのは残念。130種にも及ぶハーブが配合されているという、神秘的なお酒だ。

調べると、次から次へと出てきてまとまらなくなってきたので、続きは別の機会に記録していこうと思う。
最近は健康志向のせいでお酒もあまり飲まなくなったけど、作られた背景に想いを馳せてちびちび飲んでみるのも楽しいかもしれない。

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