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インド・ケラーラ州

トランス状態・・・・いつもとは異なる精神状態。 

とある。

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トランス状態にあるダンスはネイティブアメリカンに見られる儀式にもあるが、それは非日常的で、酩酊、夢遊病、睡眠状態といった制しきれない行動と同程度で思われている。これは科学的には完全に解明されているものではないが、全大陸488の社会を調査したチームは、少なくとも437の社会に変性意識状態(トランス)に至る方法を持っているとの事。

トランス状態を経験した人は、超自然的な力や存在に憑依されているという。

こうした経験は危険であると同時に、望ましいものとも認識されているので、コミュニティーでは、個人個人を助け、注意深く保護できるように儀式に組み込まれている。ドラッグや断食、瞑想といったものだけによって引き出されるのは例外である。

ダンスによって身体のリズムカルな動きを中心に振り付けよって構造化されたものを行事として行われるのが一般的であり、最後まで面倒をみる役割も決まっている。

朝鮮半島のシャーマン、アフリカの呪物崇拝の儀式、プロテスタントの福音主義を唱えるキリスト教徒、インドのアウトカーストの不可触民、ジャワのイスラム教徒、それぞれタイプは異なるものの、人知を超えた存在と交流するチャンネルを開いている。

参加者曰く、過去や将来の出来事への理解、健康、幸運などと理解を深め、共同体に所属している安堵感をもたらす。

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代表的な場所に、インドの南西端ケラーラがある。

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紀元前1500年以降に北部を制服したアーリア人によってもたらされたカースト制度。それと同時に独立思想や新しい思想を受け入れる寛容さもあったようで、ケラーラ州は唯一自由に政府を維持していた。ケラーラ の寺院にも、ヒンドゥー教のシバ神が熱烈に崇拝されていたが、ケラーラ の人々の多くは、北方の宗教が伝来する以前から存在する古来の神々を信仰し続けた。それは蛇の神々と女神などで、彼らの恨みが病気や不毛という災いとして現れる。そして時にダンスによる儀式でなだめなくてはならなかった。

この儀式を行うのは、プラバス一家でアウトカーストに属す。

しかし、カースト上位階級の家庭も神々と交渉するときは彼らに頼る。

ここでの神聖な祭礼場は、高さ約120センチの外皮をはいだ4本のバナナの樹幹で区画され、底辺は3メートルに設置。ヤシの茎のような葉や花々、ヤシの葉で丁寧に折られた小さな鳥が吊り下げられる。

その後、プラバス一家は地面に曼荼羅を入念に描き始める。ココナッツの半身を使って粉状の米、黒く焦がした米の殼皮、ウコンや粉末にした葉、ライムなどを使い、霧状に降らせて線を引く。

68731167-ヒンドゥー教のマンダラ-パターン。東洋の装飾的なメダリオン。一時的な刺青スタイル曼荼羅入れ墨、自由奔放に生きる装飾・装飾、壁の芸術の民

これは見る者を高揚させる完成度で、近隣のものなどの奉納物で埋め尽くされ、日没はランプで照らされる。この見事に用意された、テーブルは神への饗宴のように見える。これは、程度により12夜連続で行われることもあるという。

司祭は、ドーティという白い腰布だけを身に付け、時計回りに曼荼羅を回る。最初に花の入ったバスケットを、次に燃える灯芯を携え、男女が伝統的な打楽器で反復の多い音楽を奏でる。この儀式が終わると、プラバス家の若い男性が曼荼羅の周りで「火のメッセージ」の演技を行う。曼荼羅や奉納物と同様にダンスも捧げものの一つ。宙返りをしたり、蛇のように身体をくねらせたり腹ばいで飛び跳ねたり、火のついたトーチを皮膚に擦り付け、口から火を吹く。それは数時間続く儀式のあいだ観衆を惹きつける。

儀式のクライマックスに二人の少女が登場し、ヤシの葉のほうきをもち、曼荼羅の中へ初めて入る。真ん中で座ると、奉納された食べ物は片付けられ、打楽器に合わせて頭を左右にふり続けるとヘビの神に憑かれる。捧げものを受け取ったと神からの確認を得ると。頭領やそのほかの家族たちに、私生活などの救済方法まで少女の口を通じて示してくれるという。

最後は、憑依中の少女二人が身体を震わせる動きで長い髪を振り乱し、長時間かけて作った曼荼羅図を足と腰で消してしまう。跡形も無くなった頃に森に帰っていく。少女たちは昏睡のような眠りの後に正常な感覚を取り戻す。

カースト制度は仕事(職業的)の受け継がれであり、そこに属さないプラバス一家はアウトカーストとして扱われ、鳥獣類の死体処理を行う汚染を浄化する役割である。現在ではカーストにもとづく差別は違法であり、教育や政治的改革は社会的構造の底辺に位置する人々達に新たな門戸を開いている。


また一方で、伝統的な職業や儀式は今尚続き、この力について理論的、思弁的に解明するのは難しい。

ヒンドゥー教の持つ思想や伝統、全ての創造物を維持し、正当化する社会秩序を再確認するものとして機能していると見なされており、文化におけるダンスの力と呼べるものである。

(動画はインド・チャティスガル州西部のもの。今回のプラバスの神聖な儀式はネット上に該当するものが見つかりませんでした・・。イメージの近いものを挿絵にしております。ご注意ください。)





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