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#戦国
戦国Web小説『コミュニオン』第2話 「青春の日々」
第2話 「青春の日々」
青龍館道場。この道場は国内で一番の門下生の数を誇る。とくに年齢制限はないが、この国は19歳から兵役が義務づけられているため、主に16~18歳の若者たちが多くを占める。男子600人あまり、女子300人あまりの大道場である。
教えの内容は、剣・槍・弓・薙刀・兵学の五種。その中で希望するものだけ受けることができる。月謝は一律で、どれだけ受けても受けなくても同額。が、
戦国Web小説『コミュニオン』第3話 「不純物」
第3話 「不純物」
この大陸には、大小多くの国があるが、『和の国』『華の国』『洋の国』の三つに大別できる。まずは『華(か)の国』。元々この広大な土地に住んでいた勢力群であり、大陸の七割はこの華の国で占められる。とはいえ、国も民族も多数あり、長い間各地で勢力争いが続いている。
次に『洋(よう)の国』。西の大山脈を越えてこの地にやってきた勢力群。強大な軍事力を誇り、短期間で大陸の二割を勢
戦国Web小説『コミュニオン』第4話 「異邦人」
第4話 「異邦人」
大陸における「醒陵」(せいりょう)という国は、ひじょうに恵まれた地形の中にある。西の大山脈と東の山岳地帯にはさまれ、その間に広がる平原に多くの人が住んでいる。
大きな川が一本、そしてそこから分岐する支流がいくつか海へと流れ込んでいる。この川が平原を豊かな土壌とし、多くの実りを、そして人を育んでいる。海の幸・山の幸・野の幸に恵まれた、大陸内で一番豊かな土地と言える。
戦国Web小説『コミュニオン』第5話 「助けてあげなさい」
第5話 「助けてあげなさい」
けっきょく、何を買うかも決まらないまま、商店街まで来てしまった。
街はにぎやかに見えた。が、いつもとは違った騒々しさであることに気づく。兵士たちがいるのだ。それも一人二人ではない。あちこちに数人単位で動き回っていた。
沙耶 「なんか、騒がしいね。」
隼介 「だねぇ。」
沙耶 「何かあったのかな。」
隼介 「かなぁ。」
よく見てみると、手分けし
戦国Web小説『コミュニオン』第6話 「基本こそ奥義」
第6話 「基本こそ奥義」
隼介の意識は現在に戻っていた。いつの間にか雨はやんでいた。沙耶との約束があったが、さすがに今の静流を放っておくわけにはいかない。静流はずっと無言だったが、気分は落ち着いたようである。
静流 「帰ろ。」
隼介 「・・・・・。」
さすがに沙耶はもう帰ってしまっただろう。それとも、今日も道場に泊まるのだろうか。和馬と二人で・・・。いや、二人なわけではないが。い
戦国Web小説『コミュニオン』第7話「今を、今を、今を」
第7話 「今を、今を、今を」
静流は隼介の目を見ている。隼介は目を合わせられない。罪悪感があるのかもしれない。後ろめたいのかもしれない。
静流 「遅かったね。」
隼介 「・・・・・。」
静流 「どうしたの。」
隼介 「・・・・・。」
静流、隼介のすぐ前まで近づく。そしてじっと隼介の顔を見つめる。
隼介 「祭りもいいけど、俺さぁ、」
静流 「ん?」
隼介 「稽古してる方が
戦国Web小説『コミュニオン』第8話 「共有できるもの」
第8話 「共有できるもの」
静流は黙って二人を見ている。隼介と沙耶も言葉が出ない。
静流 「・・・・・。」
静流、きびすを返し走り去ろうとする。隼介、やはり何も言えない。
沙耶 「静流!待って!!」
立ち止まる静流。
沙耶 「私が悪かった! ごめん!!」
振り返る静流。
静流 「・・・・・。」
沙耶 「私、静流のこと、全然分かってない。静流がどれだけ苦しかったのか、
戦国Web小説『コミュニオン』第9話「達人」
第9話「達人」
審判 「始めぇ!!」
開始の合図。次の瞬間、沙耶の体は最速の一撃をくりだすべく、一直線に跳びかかっていた。即座にガードする対戦相手。が、激突した勢いで体勢が崩れる。そこへ、間髪入れずに連撃をくりだす沙耶。相手はさがりながらさばいていくが、防戦一方。
歓声がわき起こる。誰も予想していなかった。まさかあの強豪道場を相手に、ここまで攻勢をかけていくだろうとは。しかも、それ
戦国Web小説『コミュニオン』第10話「今よ、続け」
第10話 「今よ、続け」
倒れたまま動かない少年。静まり返る会場。
突然、すっと立ち上がる少年。折れたままの竹刀を持ったまま隼介を見すえ構える。誰も声を出せない。少年と目が合った・・・ように思ったが、焦点が合っていない。防具ごしでよくは分からないが、一筋の赤いラインが見える。・・・ん?・・血??
隼介 「・・・・・。」
長く感じる3秒間が流れる。そして力尽き、その場に倒れる少年
戦国Web小説『コミュニオン』第11話「青春、一時中断」
第11話 「青春、一時中断」
華麗で力強い涼平の槍さばき。その前に立つ隼介。なおも動き続ける涼平。
隼介 「涼平。久しぶりに、やろうぜ。」
涼平 「・・・いいねぇ。」
ピタリと動きを止める涼平。すでに突きの体勢が整っている。次の瞬間、鋭い一撃が一直線に隼介に迫る。隼介、その切っ先を自分の槍でいなす。すぐに引いてまたすぐ突きをしかける涼平。それもいなす隼介。
涼平、素早い突きの
戦国Web小説『コミュニオン』第12話「昨日の敵は今日の友」
第12話 「昨日の敵は今日の友」
北部駐屯地。青龍館道場の選ばれた(?)200名がここで訓練を始めて十日ほどが過ぎた。驚いたことに、その場所は長城のすぐ横にあった。つまり、まさに国境にいたのだ。そして通称「北門」と呼ばれている拠点も目と鼻の先にあり、隣国・淘來へ続く道がそこにあった。
この駐屯地へ来たのは、青龍館の門下生だけではなかった。各地の道場や、志願してやってきた若者たちもいた
戦国Web小説『コミュニオン』第13話「幸せになってしまえ」
第13話 「幸せになってしまえ」
北部駐屯地。ここへ来て、はや半月ほどになろうかという頃、ぞろぞろと若者たちの集団が列をなしてやってきた。隼介らと、そう変わらない歳の少年たちが多い。100人200人どころではない。次から次へとやってくる。
どうやら訓練生の第二陣らしい。少年らの後ろから、同じく年若い少女たちまでやってきた。訓練をしていた訓練生たちも、おもわず少女たちの方を向く。
戦国Web小説『コミュニオン』第14話「羽虫の群れ」
第14話 「羽虫の群れ」
羽虫の群れはゆっくりと迫ってくるように見えた。それが矢の形だと認識できた瞬間、
「バババババババッ!!!!」
周りにいた少年少女たちが一斉に地面に叩きつけられた。無数の矢が、彼らを貫いた。ほとんどの者が射貫かれ、地にくぎ付けにされた者も多い。
運よく矢が当たらなかった数名だけが、ただ呆然と立ち尽くしていた。隼介も立っていた。無傷で。
うめき声があち