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海の科学者になるには古典的な学問を学びその分野から海の研究にアプローチしていくと本で読みました。高知コア研究所の方はどのようにして研究者になられたのですか。

りょうさん(高校2年生)からの質問

質問ありがとうございます。
今回の回答者は、高知コア研究所 鈴木研究員です。

りょうさんはすでにご存知かもしれませんが、「海」と一言で言っても海には浅いところから深いところまであり、さらにその下には、海底下の世界が広がっています。海は大気や陸、我々人間生活とも密接に関連しています。さらに地球の過去をさかのぼると、海のなかった時代もあると考えられています。海の科学者は、このように、海を時間と空間の広がりの中でとらえながら、海の謎の解明や、海における各種課題解決に取り組んでいます。そして、それには、専門分野の異なる研究者同士の協調が欠かせません。りょうさんが本で読まれたように、海の研究者は、高校の理系科目にあるような「物理・化学・生物・地学・数学」のうちいずれかの専門性を高め、その知識、経験に基づき、海を舞台に研究している研究者がほとんどだと思います。

私は、子供のころ、海の近くに住んでいたので、週末になる度に海に泳ぎに行きましたが、そこに横たわる科学には全く興味がありませんでした。高校生のころまでは、将来、音楽家か作家になりたいと思っていましたが、高校の授業で「メンデルの遺伝の法則」に出会い、複雑であるかに見える生命が、非常にシンプルな原理に支配されているという事実に、心惹かれました。そして、科学には必ず真実があり、その前では、老若男女誰もが対等であることにも惹かれました。高校当時の私は、研究者という職業があることすら知りませんでしたが、「もっと生命のことを知りたい。」という思いで、生命科学分野を専攻しました。その後、長らく植物―微生物を対象とした研究を行っていましたが、家庭の事情でアメリカに行くこととなり、アメリカのゲノム研究所で働き始めました。そして、そこで、酸素のない太古の地球に似た環境で、岩石と共に生きる地下圏の微生物の研究を行い、そこには我々の生命科学の常識にない多様な生命がいることを知りました。そこから、「生命とは何か?生命はどのように誕生したのか?そして、地球はなぜこのように多様な生命に満ち溢れる星となったのか?」といった問いにつながる生命原理の解明を目指したいと考え、「海の地下圏」を研究の舞台に選びました。ここでようやく「海の科学者」になるのですが、それは、博士課程を卒業し、10年以上たってからのことです。

海の科学者といっても、色々な分野の色々な経歴をもつ研究者がいます。りょうさんも、海を知りたい、海における人類の課題を解決したいという思いがあったら、ぜひ、海の研究者になってください。海は、実は地球だけでなく、他の星にも存在するんですよ。海の研究者につながる道はたくさんあります。そして、とても楽しい仕事であることは、私が保証します!

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