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「自分の真実を語る」 スケッチ3

いのちがしずまる方は、氷を欲しがりなさると、看護の専門家にきいた。

玄米煎汁、野菜コンソメ、玉露、煎茶を氷状にするのは賢いと思う。製氷皿で固め、必要量を砕いて含ませる。

つくるということは、いのちを傾けてつくる、故につくった人のいのちは、その氷片にお供してしずまり逝く方の細胞の隅々まで、共に運ばれる。一つになれるのである。

逝く方へ美味しさを差し上げたい理由はここにあるのではないか、「一つになる」。

美味という自然のゆきつくところの深意かと思う。

辰巳芳子 『食といのち』 86頁 2014年 文藝春秋
(原典: 辰巳芳子 『スープの手ほどき 洋の部』 文春新書)

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