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「HUNTER×HUNTER」ビノールトという男

言わずと知れた大人気漫画「HUNTER×HUNTER」(以下ハンターハンター)。もはや説明は不要だと思うので早速本題に入る。

最も好きなセリフ

本投稿では筆者がハンターハンターの中で最も好きなセリフの一つを紹介しようと思う。結論から言うと単行本14巻、No.138「いざマサドラへ…?」で登場するビノールトの『22才だ』というセリフだ。ハンターハンターが好きな人でさえ「は?」となるのは承知の上でこのセリフが好きな理由を紹介する。

セリフに至る経緯

まず簡単にビノールトがこのセリフを言うに至る経緯を説明する。
念能力者専用ゲーム、グリードアイランドの中でゴンとキルアはビスケという師匠に出会い、修行をする。修行中の3人を狙って現れたのがビノールト。岩場に隠れて3人の様子を見るビノールト。いち早く殺気に気づくビスケ。
3人は喧嘩をしたふりをしてビスケ組、ゴン、キルア組の二手に分かれる。
ビノールトは(見た目は)若い女性且つ一人になったビスケを狙う。
ビノールトは自身の能力でビスケの髪の毛を食べ、ビスケが達人であることを知り、改めて一人の武闘家として勝負を挑む。結果はビスケの圧勝。
ビスケはビノールトの実力がゴン、キルアの修行にぴったりだと踏み、ビノールトに「2週間2人の攻撃をかわすことができれば見逃す」と条件を出す。
ビノールトについて知っていたビスケは次のように会話する。

ビスケ「賞金首(ブラックリスト)ハンタービノールト
しかし奴自身も賞金首!
好物は人の肉
特に20才の女の肉がいいんだっけ?」

ビノールト『22才だ』

ここからゴン&キルアvsビノールトの戦闘が始まる。

このセリフが好きな理由

このセリフによってビノールトが1モブキャラから「ビノールト」というキャラクターになっている。このセリフがなければビノールトはただの気持ちの悪い食人モブだったが、22才の女性の肉が好きという強烈な個性を出し、その個性から彼なりの美学、信念を見ることができる。
この後、戦いの中でビノールトの過去の回想シーンが挟まれ、彼のバックボーンや心情を知る機会は用意されているもの、上記のセリフほどビノールトを端的に表すシーンはない。

漫画をはじめ、アニメや小説など様々な作品において「名言」と呼ばれるものは数多く存在する。上記のセリフはこれらの「名言」と呼ばれるものとは違う。
特に深い意味も無ければ取り立てて重要なセリフというわけでもない。しかし先述した通り、このセリフによってビノールトはビノールトたり得ているのである。

面白い漫画の条件

筆者が個人的に考える面白い漫画の条件の一つとして「敵キャラが魅力的である」というものがある。主人公サイドのキャラクターだけでなく、敵サイドのキャラクターに魅力がある作品では読者として必ずしも片側に肩入れすることがなく、また物語の展開が予想しにくく緊張感が増長される。(この辺りの持論については機会があれば1つの記事として詳述したい)
あえて例を挙げるとすればバトル・アクション漫画からドラゴンボールのフリーザやセルなど、スポーツ漫画からスラムダンクの仙道や牧などである。もちろんハンターハンターも多分に漏れず、クロロ・ルシルフルやメルエムなど非常に個性的で魅力的な敵キャラクターが登場する。
こういった主要な敵キャラクターに個性や魅力を持たせるのは言ってしまえばそれほど難しいことではないと思う。大きな敵であればあるほど物語の展開に大きく関わり、そのキャラクターを描くシーンは必然的に多くなる。すなわち個性や魅力を伝える機会が増えるのである。
しかし本投稿で取り上げたビノールトについては違う。ビノールトが登場したシーンは137話から139話までのわずか3回であり、物語の展開に大きく影響するわけではない。例えこのシーンを全て読み飛ばしたとしても物語の展開を理解する上で大きな齟齬はないだろう。しかしこういった、言ってしまえば(先程否定した言葉ではあるが)モブキャラにも与えられた限られたシーン、最小限の情報でキャラクターの個を確立させていることがこのセリフが好きな理由である。

まとめ

以上が筆者がハンターハンターで最も好きなセリフの一つとそのセリフが好きな理由である。
このセリフは"漫画"だからこそ成立している好きなセリフであり、言葉自体に大きな意味があるわけでもなく、もっと言ってしまえば「人により成長の度合いは異なり、肉体の味?に影響を与える要因として年齢よりも食生活や運動量などの方が大きいのではないか」など細かいツッコミどころはあるかもしれないが、そういった点度外視でビノールトというキャラクター付けの上手さに惹かれたのである。
日々様々な漫画を読んでいて自分が気に入ったセリフをメモとして留めておくのが好きなので、そちらについては本投稿で紹介したものとは違い、セリフだけでも成立するようなもっと意味を持ったものなので、機会(というかやる気)があれば紹介したいと思う。

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