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「毎週金曜日は学食でお昼をとることにしたから」

「毎週金曜日は学食でお昼をとることにしたから」と長女。

友達とそんな約束をしたらしく、学食にはこんなメニューがあるとか、今は学食の中で食べられなくて教室で食べて返却するから面倒なんだけど、となんだかうれしそうに話してくれた。

毎朝6時20分に家を出る娘を送り出すには、お弁当は のおかずの仕上がりが5時で、お弁当を詰めつつ朝ごはんの支度を終えるのが5時半。いくら早起きの私でもフルスロットだと疲れてそうだと思い始めていたので、息切れしそうな金曜日にお休みをもらえたことは小さくて大きなうれしいことだ。

私の通っていた高校は当時定時制があった。

そのため、学食はあるけれどそこは定時制の生徒が使う場所で、半分だけ開いたシャッターの隙間から時々覗く学食は、天井がとても高くて、ひんやりとした空気が印象的だった。

午後の授業が始まると段々いい香りがしはじめ、時々帰りが遅くなった際に、少し大人っぽく見える私服の生徒たちがぞろぞろとそこへ入っていくのを横目で眺めるだけの未知なる場所が、私の高校時代の学食の思い出の全てだ。


その代わりに4時間目のチャイムが鳴り終わると同時に、みんなが我先に、と走るのは学食の横のホールにあった購買のスペース。サンドウィッチや菓子パン、飲み物が並んでいた。


ひとりのおばちゃんがそこを担当していたけれど、覚えているのはぷっくりしたとまあるくて指紋が白く粉を吹いた指と水色の細かいチェックのエプロン。そして、後ろに消しゴムのついた注文を書く黄色い鉛筆。

1、2年生の頃同じクラスだった Kちゃんが甘酸っぱいクリームチーズの挟まった、美味しそうな、しかも、文庫本を2冊並べたくらいのかなり大きいパンを購買で買って、飽きもせず毎日のように食べていたのを覚えている。

当時栄養学に嵌っていてカロリー計算が瞬時にできた私は、物凄い高さであろうそのパンのカロリーを正面に座りながら、毎日頭に思い受かべた。
そして、網目模様のパンが、どんどんKちゃんの口に入っていくのを見ながら、Kちゃんのパワフルさはこのパンのカロリーが変換されているのかな、なんてことを考えていたっけ。

大事なことはすぐに忘れてしまうのに、忘れてしまってもなんの問題もないようなことはディテールまで覚えているのが面白い。


何十年も前のKちゃんがいつもつけていたベッコウのバレッタまで思い出してしまう7月最初の金曜日の朝。

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