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『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想なぐり書き(ネタバレあり)

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観てきたので感想を書く。ネタバレ全開なので読む方はご注意を。

さて、約十年前エヴァQで混乱の極み・不可解のどん底に落とされてしまった私だが、今作をどのように評価してよいものか迷っている。アリかナシかで言えばアリなのだが、色々ともやもやした部分も残っている。まあとにかく感想を書いていこう。

全体のざっくりとした印象

「みんな大人になったなあ」というのが率直な印象だ。それはトウジやケンスケがまさしく大人になった、というだけでなく登場人物のほとんどがQに比べて見違えるような成長を遂げている。みんなどうにもならない重い感情を抱えつつも、周りへの気遣いを失くさず、誰かの為に行動している。Qの頃は誰も彼もが自分のことだけを考えていて、周りを見る余裕などなかったように思う。それが一転してみな「大人」になってしまったことに戸惑いは覚えたが、こんなエヴァが観たかったような気もする。
オチに関しては、陳腐さもあるが手堅くまとめたな、という印象。「終わり」を明確に感じさせられた。ラストを実写の景色で締める、物語から現実へ移行する、というのはこれ以上ないほどの終焉のメッセージだ。メタ的な展開を見せてきたこれまでのエヴァのことも考えると、ふさわしい終わり方と言えるかもしれない。個人的にはあまり好みの締め方とは言えないが、まあ嫌いというわけでもない。手堅いな、とは思うが。

シンジくんの印象

一作の中で劇的な成長を遂げた。ふさぎ込んでいる状態がやたらと長かったが、終盤は完全に達観していた。周りをちゃんとした大人で囲めばシンジくんってこんなに真っ当になるんだ……と思った。ストレートに好意を伝える綾波、突き放しているようで見捨てないアスカ、あえて距離を置きつつ見守るケンスケ。みんなシンジを気遣い、そしてシンジにもそれを受け取る余地があった。終盤は完全に覚醒状態になり、精神世界でみんなを救っていく。若干の舞台装置感はあるが、思うにシンジには元々それぐらいのポテンシャルがあったのではないか。シンエヴァ以外では周りがひどすぎてそこまで成長させることができなかっただけで。などと思ったりした。

アスカ

シンジを決して見捨てない、覚悟の決まったいい女。シンジに対して突き放したような言い方しかしないが、完全に見捨てることだけは絶対にしない。飯は無理矢理食わせるし、毎日監視もする。ニートと化したシンジの姉というか母というか、とにかく何らかの母性のようなものを感じてとても良かった。南極突入シーンでは自分がどうなってでも目的を果たすという覚悟があってめちゃくちゃカッコよかった。絶叫しながら戦うアスカを見ながら、最後にはどうにか幸せになってほしい……と願っていた。最後にケンスケとのカップリング成立を匂わせていたのは、解釈違いのような気もするが、まあ幸せならオッケーです。
ところで、精神世界での最後のアスカ、大人になってたのか?やたらとムチムチしていて素晴らしかったが。
あと、南極突入でのアスカとマリの手合わせ突撃、あれ石破ラブラブ天驚拳では?あるいはプリキュアマーブルスクリューか?あのシーン好き。

綾波

最初から最後までかわいかった。
色んな感情を知って成長し、作られたものと知ってなおシンジへの好意を受け入れ、最後には自分の死すら受け入れて生を全うする。めちゃくちゃ丁寧に描かれた素晴らしい生き様だった。不器用な人間が多いエヴァの世界で数少ないストレートな好意をぶつけることができる存在。それ故にふさぎ込んでいるシンジに言葉が届いたのかもしれない。

マリ

かわいい。エロい。最高。
全編通して活躍しまくりのメタ的視点を持つ存在。メガネで喋り方が特徴的で距離感が近いというオタクの願望を詰め込んだかのような存在。かわいい。戦闘シーンの少ない今作で主に活躍するのがマリだが、グリグリ動く作画と坂本真綾の声が合わさって非常に満足度が高かった。
最後にシンジと結ばれたのはしっくりくるようなこないような、よく分からない感じ。

ミサト

Qとは印象が違いすぎる。Qでのシンジを突き放す言動は実はシンジを思ってのことだった、という説明が入ったが、どうもしっくりこない。シンジのことを心配しているにしてはあまりにも非情だったと思う。このあたりは正直後付感が否めないが、今作の活躍自体は良かった。Qのことを一旦忘れれば、シンエヴァでのミサトはかなり好き。立場上シンジに肩入れしすぎることはできないが、できる限りのことはしたい、というのがミサトらしくてよい。最期に昔の髪型に戻るのも良い。私は破のラストのミサトがとても好きなので、その頃に近いマインドの彼女の姿が見られたのが嬉しかった。

ゲンドウ

最後に作品にしてようやくゲンドウの姿を見られた気がする。全てはユイにもう一度会うため。それをはっきりと明言したり、内面を明かしたり。今までなんとなくしか分からなかったゲンドウの心情を知ることができてスッキリした。最後にシンジを通してユイの存在を感じて救われるというのも、ようやく真っ当な大人になれたのだな、と感じると同時にゲンドウですら救われることが明確な物語の終わりを予感させるものだった。

決別の物語「さらば、全てのエヴァオタク」

この映画は長い間エヴァに縛られていたオタクたちへの、そして今までのエヴァへの決別の映画だ。「さらば、全てのエヴァンゲリオン」というのは嘘偽りのない明確なメッセージだ。登場人物が大人になったこと、終盤のメタ的展開、圧倒的”陽”のオーラを放つラストシーン。全てがエヴァオタクに向けての別れのメッセージだ。「いい加減大人になれ」「そろそろエヴァは卒業しろ」そういうことを言いたいのではないかと思ってしまう。個人的にはオタクたちをさらなる呪縛で縛って欲しかった気持ちもあるが、庵野監督には今後もっと陽の物語を創り出して欲しいのでこれでよいのだろう。お疲れ様でした、庵野監督。さらば、エヴァンゲリオン。

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