「年収を下げる」ことで得られるもの
今日は、年収について考えてみたいと思います。
年収が上がるとき
まず、どういう時に年収が上がるのか。収入というのは(基本的には)市場原理で決まりますから、年収が上がるときというのは、あなたの市場価値がそのポジションの価値よりも高い時です。つまり単純化すると、
年収が上がるとき = 自分の能力 > その仕事に求められる平均的能力
ということが出来ます。
雇う側の立場で考えてみると、「このポジションにはだいたいこの給料だろうな」という「相場観」がすでに頭の中にあります。
ですが、目の前の候補者であるあなたがその相場よりも高い収入であると、「少し高いけどこの人の経験・スキルを買いたいな」と思って高めのオファーを出す。その結果、あなたの年収はアップします。
つまり、年収アップというのはそれまでの仕事で平均以上のパフォーマンスを上げてきたことに対するリターンでもあります。
年収が下がるとき
年収が下がるときはその逆になります。つまり、
年収が下がるとき = 自分の能力 < その仕事に求められる平均的能力
となります。この場合、基本的に主導権は相手側にあります。
あなたの能力はマーケット平均よりも低いわけですから、あなた自身を売り込む必要があります。相手に自分を「買ってもらう」ということが出来ればそのポジションを手に入れることができますが、結果として年収が下がるということが起こりえます。
典型的なパターンとしては「異業種への転職」、「未経験職種への転職」です。求職者にとっては「新しいことへのチャレンジ」ですが、企業側からは「パフォーマンスが保証されないリスクのある採用」となります。未経験者に対して高い給与を最初から払う会社は多くは無いでしょう。
経験をお金で買うということ
つまり、挑戦を目的として年収を下げるということは、「新たな経験をお金で買っている」と言うことが出来ます。
年収が下がるというとネガティブなイメージがありますが、決して自分自身の価値が下がっているわけではありません。
むしろ、これから新たなスキルを身に着けて成長する前の「一旦しゃがむステージ」と前向きに捉えてみてもいいのではないでしょうか。
かくいう私も、人生で「2回」、年収が下がる経験をしました。
一度目は、メーカーからコンサル会社に転職するとき。新たな成長機会を求めての転職でしたが、年収は大きく下がりました。その代わり、全く新しい経験とスキルセット、そしてかけがえのない仲間が手に入りました。
「これからは自分が商品になるプロフェッショナルな世界だから。しばらくは自分を鍛える日々が始まるよ」と言われたのを覚えていますが、まさにその通りの日々でした。フィールドを変えるというのはこんなにも辛いことかというのを味わいました。
二度目は、タイで起業するときです。この時は瞬間的には「収入がゼロ」になりました。経営者として一からのスタートでもちろん大変でしたが、期するものもありました。自分の給料を切り詰めて事業にお金を投資することで、それが後から金銭面・経験面ともにリターンとして返ってきました。
いずれも、「給料を下げる」という覚悟をしないと得られない、貴重な学びの経験だったと思っています。
年収を下げる「理由」が大切
断っておくと、私は安月給で働くことを勧めているわけではありません。
給料は生活の糧として大切であり、また、適切な給与が無いと自分への投資が出来ないので自分の将来価値も棄損してしまいます。
よく「若い頃は貯金よりも自分に投資しろ」と言いますが、私も賛成です。自分は学校に通ったり、書籍を買ったり、交友関係を広げるなど、自分を磨くことにお金を使いました。それらに利子がついて、今の人生に返ってきていると思います。
そうした「自己投資」の一つとして、年収を下げてでも手にしたい経験や、貫きたい思いがあれば、恐れずに手を伸ばしてもいいのでは?と思います。一時的に収入が落ち込んだとしても、それが経験資産となり、やがて金銭面での資産にも繋がることでしょう。
ちなみにもう一つ、年収を下げることのもう一つ良いことは、人生で取りうる選択肢が増えることだとも思います。
給料を下げて「これくらいの生活レベルなら自分は耐えられるんだな」というのを味わうことは、人生をより自由にします。自分も試しにタイで超節約生活をしてみたら、自分の価値観の限界がわかって逆に楽になりました。
今の時代、収入が必ずしも右肩上がりであるとは限りません。
ライフステージの変化によっては、仕事を辞めて配偶者の転勤についていくとか、数年間子育てや介護に専念するとか、様々な選択を求められる場面があり得ます。そうした時に、一度年収を下げたことがある人は、比較的取りうるオプションが多いように思うのです。
以上、今日は年収を下げるということについて考えてみました。何かのご参考になれば幸いです。
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