「ふりかえり」をふりかえる ~「意図的な内省のデザイン」とは
自分はとにかく「考え事」を良くする人間である。気が付くとずーっと考え事をしていたりする。
若い頃は買い物中に考え事をしているうちにスーパーのカゴを家に持って帰ってきてしまったこともあった。気づいたら左右の違う靴を履いて会社に行ってしまったこともある。
それくらい、考え事をし始めると周りのことが目に入らないことがある。趣味の欄に「内省」と書いていたこともある。最近はさすがにうっかりやらかすことも少なくなったので、オトナになったのだろうか。
ある意味で、自分のキャリアもそうした内省とともにあった。ブログという言葉ができる前からホームページで日記を書いていた。その後も、折に触れて日記をつけたりブログを書いたりしてきた。
それらは基本的には、自分自身の内省のために書いてきた。内省が自分の軸を作り、その軸に従って行動してきた結果、今のキャリアがある。
若い人には「若いうちから日記やブログを書いたらいいよ」と勧めることが多いが、私が言うまでもなく、内省する習慣というのはとても大切だ。
内省がもたらすもの
内省(リフレクション)とは、つまり「行動を振り返り、そこから概念を引き出す」行為である。それを指して、conceptualization(概念化)という言葉を使うこともある。
なぜ概念にするかというと、言葉にならないうちは学んでいるとは言えないからである。もう少し正確に言うと、学んでいるかもしれないが、それが行動に繋がる確率が低いからである。
例えば仕事で失敗をして怒られたとする。その時は反省するかもしれないが、また同じ失敗を繰り返す人がいるは、内省が足りていない。
怒られた後に「なぜ失敗したのか」「どうすれば失敗しないのか」を立ち止まって考えることで、「次は失敗しないようにコレに気をつけよう」という教訓を始めて得られるのである。
この教訓に出来るかどうかが、分かれ道である。つまりは成長、特に内面的な成長とは「教訓の積み上げ」であると言っても過言ではない。内省する習慣がある人というのは、日々この「教訓の積み上げ」を行っているわけだ。
本田圭佑とか、松井秀喜とか、一流のスポーツ選手もかならず日記をつけているそうだ。これは、ただ毎日バットを500回振るよりも、毎日考えながらバットを500回振る方が、やり方に改善がもたらされるため変化・進化に繋がりやすいからだ。
コロナが内省を減らす?
内省というのは「ハイ!今から内省スタート!」といってスッと出来るものでは無いし、「うーん、うーん」と唸っていてもなかなか出来ない。内省には良質なきっかけが必要である。
最も重要なきっかけは「問いかけ」である。
先ほどの失敗の例でも、「もう一度やるとしたらどうやったらいいと思う?」と上司にきかれたりすると、「・・もっと人を巻き込んだら失敗しなかったかも」などのように考えが浮かんでくる。
内省が上手な人はセルフ問いかけが出来るが、誰もがそれをできるわけではない。やはり上司や同僚からの問いかけは内省のためにとても重要である。
また、考えるための「材料」も必要である。
日々、偶然出くわす出来事だったり、接触する情報というものは内省のきっかけをくれる。この考え面白いな、そういえば別の仕事のアレにつなげられるな、、、。そうした材料との出会いでもまた内省は大いに促進されるのだ。
リモートワークの影響で雑談や飲み会が減り、それが閃きやイノベーションを阻害するという指摘がある。その通りだと思うし、内省専門家(謎)の私からすると、「リモートワークは内省の危機」でもあると思う。
リモートワークになることによって、周囲からの自然発生的な問いかけが減り、適切な材料との出会いも減ってしまう。
これでは、知らないうちに起きていた個々の成長、またその相乗効果による組織学習が停滞するということが起きてしまうし、既に様々な組織で起き始めていると思う。これがWithコロナ時代の一つの組織課題ではないかと思う。
自然発生的な内省から「意図的にデザインされた内省」へ
そんなわけでこの数か月は、「どうすれば離れていても組織内に内省が進むか」について考え、議論してきた。
たどり着いた結論は「意図的にデザインされた内省」を組織の中に埋め込んでいくことだ。
人との接触が減る中で、自然発生的な内省を期待するだけでなく、以下のような要素を意識して、意図的なプロセスを設計していくべきである。
まずは、「組織のルーティンに内省を埋め込む」こと。
オンラインのミーティングだとどうしても議題のみにフォーカスしがちだ。そうではなく、あえて「振り返るための時間」を会議に取り入れたり、あるいはSlack等で振り返りスレッドを作るなどして、振り返りをルール化することが望ましい。
そしてその内省は必ず組織で「共有・蓄積」されるようにする。いわば組織内での教訓の積み上げだ。
リモート環境になればなるほど、活字での共有が多くなるだろう。その際に特に意識したいことは「読まれることを意識してアウトプットする」ということだ。
時々「これは誰のために書いてるの?」という業務報告などを見ることがある。読み手にとって価値が少なければ、いかなるナレッジでも価値は半減してしまう。
一人に役立つ教訓よりも、多くの人に役立つ教訓の方が組織にとって価値が高い。
例えばこのnoteも、自分のためであると同時に、誰かの役に立つように書いている。そういう目的でアウトプットしてもらう方が、一つの振り返りが組織にもたらす価値は大きいだろう。
そしてそれに対して「フィードバック」を与えあうことも大切だ。
FacebookにLike、noteにスキというリアクションボタンがあるように、フィードバックをもらえることで人はより考えるようになり、また次回も発信する意欲が湧く。
上司がコメントしないと部下はレポーティングしなくなるのと同じで、共有された良い教訓にはリアクションしていく仕掛けが必要である。
以上、「内省を促進するための意図的なデザイン」について述べてきたが、元々Slackや社内SNS等でこうした習慣がある会社は問題ないと思う。上記全ての要素がツールに元々埋め込まれているからだ。あとは運用ルールを決めるだけである。
しかし、まだまだFace to Faceの会議や電話、あるいはメールで組織を動かしている会社は多い。
そういう会社は、内省を通じた個々の成長、およびその共有化による組織学習が停滞してないか、チェックしてみてもらいたい。
以上、今日は内省について考えたことでした。
ちなみにそんなことを考えながら、この数か月かけて組織学習に繋がる内省ツールを開発してきた。今は社内で試験運用中だが、だいぶ良い感じになってきている。役立つツールに仕上げて徐々にクライアントに提供していきたい。
「この記事は役に立つ」と思って頂けたらサポートお願いします!