【終活110番037】とにかく終末期医療要望書を書いておく

重い病気や認知症に罹って飲むことも食べることもままならなくなった高齢者は、何の医療措置も施さなければ数日の内に静かに息を引きとります。でも、人工呼吸器を用いたり、胃ろう・鼻管や点滴で栄養や水分を補給すれば、心臓が動くかぎり生き続けることが可能である。

内閣府の調査では、65歳以上の日本人の9割以上が、延命のみを目的とした医療は行わず自然にまかせてほしいと願っています。にもかかわらず、医療現場では、無意味な延命治療が日常的に行われていることは衆知の事実です。医療は尊厳ある生命をできる限り維持することを至上の使命としていて、医者も看護師も「誰であっても生命を永らえさせなければならない」と教えられていて、日本の社会や法律もそれを是としているようなところが根づよく残っています。

なので、本気で延命治療を拒みたいのであれば、判断能力やコミュニケーション能力が損なわれてしまう前に、自分の意思を明文化した上で、家族と医療機関に対してキチンと伝えておかなければいけません。無意味な延命治療を止めることのできる唯一の方法は、患者自身が延命治療の中止を希望し、その意思が表明されている場合に限られるからです。

そのためには、どのような対策が必要なのでしょうか。
元気なうちに、「終末期において自分が望む医療・ケア、望まない医療・ケアに係る意思」を記しておく書類があります。それがリビングウィルです。日本ではまだ、リビングウィルは欧米のように法制化されていません。ですが、大規模病院の多くでは患者の自己決定権を認めており、厚生労働省、日本救急医学会、日本医師会などから出されている終末期医療ガイドラインにおいても、リビングウィルを尊重することが謳われています。人生の終末期において、自分はもちろん、家族をも苦悩させることなく、安らかな最期を迎えようと願うのであれば、早いうちにリビングウィルを書いておくことが理想です。

リビングウィルを作成していなければ、延命治療が長期にわたって継続されるため、死の直前まで苦痛な状態が続きます。最悪なのは、親の意思がわからないことで、子どもが親の生死を決定するように求められることです。親が亡くなった後も、自分の選択は本当に親が望んでいた最期だったのかと、正解のないことで悩み続ける人生に陥ってしまいかねません。その肉体的・精神的苦痛は計り知れません。リビングウィルを作成しておけば、自分の望む最期を伝えることで尊厳死や安楽死をまっとうすることができます。家族に究極の選択を強いることなく、精神的負担を低減させることができます。

アメリカでは、高齢者(65歳以上)の半数近くがリビングウィルを書いていると聞いたことがあります。されています。一方、日本では全人口のわずか0.1%程度にすぎません。日本では、いまだ「死」はタブーで、リビングウィルを作成しておくことで最期の医療を自己決定するという文化が成熟していないのです。かけがえのない子どもたちのためにも、親として向き合わなければならない重要なテーマです。

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