アナタがもっとも光れる場所
ところで、福祉系専門職がもっとも強みを発揮できる可能性が高い場所。あるいは、その価値をもっとも高く評価してもらえる場所。それはどこだと思いますか?
答えをひと言で言えば、それは、あなた以外に福祉系専門職なんぞ存在していない場所です。
でしよ? 希少価値……ということです。すでにあなたは他者と差別化されています。そのこと自体、あなたの優位性になるわけです。マーケティングの基本中の基本です。「掃溜めのツル」ではないけれど、福祉の「フ」の字も知らない集団にあってこそ、福祉系専門職は最大限に自分をアピールできるというものです。
例えば、「社会福祉士って何やるんですかぁ?」と、職場で何人かの人にこう訊かれるだけでいい。そうして少しずつ時間をかけて会話を積み重ねていきながら、「へぇ~っ。そうすると、シニアのニーズやウォンツとか、手に取るようにわかるのでしょうねぇ」という流れができれば十分です。
でも逆に、もしもあなたが、福祉関連の事業体に呑み込まれちゃったとしたらどうなりますか? 右を見ても左を見ても福祉系専門職だらけの環境では、だれからも注目されない。そうなると、あなたの存在自体が周囲から関心を持ってもらえる状況と比べたら損ですよね。おわかりいただけるでしょうか。
しかし、現実はどうでしょう。以前の記事で紹介した日本社会福祉士会の調査では、社会福祉士の勤務先についても言及されており、実に8割が特定の社会福祉施設や医療機関や介護サービス事業所に勤務しています。民間の一般企業に在籍している人、独立起業している人は、全体の1割に過ぎません。残りの1割は自治体や社会福祉協議会です。
同様に、調査結果にあった社会福祉士の年収を思い出してください。福祉系専門職の年収と勤務先。双方のデータからわかることは何でしょうか。それは、特定の施設や事業所に勤務してしまうと、待遇的にかなりキツくなるということに他なりません。
私の仲間にも施設に勤務しながら社会福祉士を取得した人は多いです。でも、後で聞いてみると、社会福祉士という資格が待遇面に反映されたという事実はなく、むしろ、「誰も気づいてくんないし、何も言ってくれない」とか「それはおめでとう。で……?」みたいな反応が大半だったと嘆いています。その時点で燃え尽きてしまった人もいるくらいです。
こうして考えてみると、福祉系専門職がワンランク上のステージにいこうと思ったら、同業者が大勢いる世界というのは得策ではないことがおわかりいただけるでしょう。福祉系専門職はあなたしか存在しない……。そんな職場こそが、あなたがもっとも光れる場所ということになります。
だからどうか、福祉系の資格だから福祉業界にしか就職できないよなぁ~なんて、そんな固定観念はぶっ壊しましょう。固定観念は悪、先入観は罪です。NOを並べたてる悲観論者に明日はありません。自分で自分の可能性を狭めてしまうことだけは避けてください。可能性と限界。それはいつもあなた自身が決めてしまうものなのです。このことは、決して忘れないでほしいと思います。
もうひとつお伝えたいのは、なにも社会福祉士でなくても、福祉系専門職であれば、企業群に対してシニアビジネス関連の新しいサービス等の企画提案が可能であるということです。
超高齢化や終活ブームのおかげで、各企業はシニア戦略を無視することはできません。わが国の人口動態、すなわち市場構造の変化からもこの傾向はますます加速していきます。
こうした環境の中で、医療や福祉の法制度、その経営環境の現状と方向性、海外の先進事例、高齢者・障害者やその家族の理解・・・・・・等々。これらを体系的に学んできた福祉系専門職は、シニアビジネスへの新規参入やサービス開発を目論む企業にとって、業績に貢献できる可能性を秘めています。欲しい人材だということです。少なくとも、面接まで進める可能性が高いわけです。
「わたしの現場経験から市場ニーズがあることは間違いない。これをおたくの会社で実践したいのです(キッパリ)」といった感じで提案するのです。言い換えれば、「貴社のお客様に私のアイデアを提供したら、確実に業績に貢献できるはずです!」と持ちかけてあげるということです。
できればメジャーな企業にアプローチすることをお奨めします。給料のことは言うまでもありませんが、それよりも重要なことがあります。実は、規模の大きな企業ほど最終消費者に対して間隔戦を展開しているため(これに対して、中小企業は接近戦)、実は末端市場の情報に疎いのです。要するに、シニア顧客のナマの声を把握できていないということです。だからこそ、現場を熟知しているアナタが輝いて見えるのです。
そして、言葉は悪いかも知れませんが、そんなビッグネームの暖簾の力を借りて、みなさんの企画やアイデアを実験して、その効果を検証してみるのです。この経験は、みなさんのこの先の仕事人生にとって大きな財産となるはずです。
ハッキリ言って、採用されてプロジェクトまで立ち上げてもらえたら万々歳。採用されるだけでも万歳三唱。不採用にされたところでモトモトじゃないですか! しかし、冗談抜きでチャンスはあります。漠然と転職活動するよりも遥かにイケるはずです。
そうそう。福祉の世界には真面目……というか、コンプレックスがあるというか、自分で自分を貶めてしまっているかのような方が多いので念のため言っておきます。面接や企画書の中であなたが言ったことを、採用された後で実現できなかったからといってペナルティを課せられるなんてことはあり得ません。何の問題もありません。状況は刻々と変わるのです。「採用の面接で言っていた件、いつになったら実現できるのだ!」等と突っ込まれることは200%あり得ません。大企業であればなおさらのことです。
どういうことかと言うと、企業の採用担当者が評価するのは、あなたが持ち込んだ企画ではないのです。その企業が関心あるテーマについて具体的なアイデアを準備して、積極果敢にアプローチしてきたあなた自身を買うのです。ここのところを理解してほしいと思います。もしもこの感覚が理解できないと仰る方は、おそらく一般ビジネス界で生きていくには、やはり柔軟性に欠けると言わざるを得ません。
自信を持って、みなさんが志す福祉の姿を言葉にして表現すべきです。シニアの視点に立って、求められる製品やサービスのアイデアを披露すれば道は開けていくと思います。