ショートショート「悪魔」その3

ノックの音が。

「どうぞ、鍵はあいていますよ、ご自由におはいりください」

「ありがとうございます。」

なにげなく、部屋に招きいれたものの

容姿が異様である。

怖い顔だし、肌は紺色、目が赤くて耳がとがっている

なにより目立つのは、頭にヤギのような角が生えている。

「どうやら、わたしの容姿に驚かれているようですね。」

「見るところ、悪魔のように見えるのですが」

「お察しの通り、悪魔でございます。」

「なんと、あの有名な悪魔さんですか、なるほどイメージ通りですね」

「悪魔といっても、

危害を加えようというわけではないのでご安心ください」

そういえば言葉遣いは丁寧だし、

容姿とちがって案外いい悪魔なのかもしれない。

「その悪魔さんが、何故ここにこられたのです?」

「実は3つの願い事を叶えるかわりに。。」

「ああ、死亡後魂をさしあげるのでしたね」

「ご存知でしたか、その通りでございます」

「ちょっとお待ちくださいね、

いまパソコンで「悪魔」「3つの願い事」のキーワードで検索しますので」

「あった、あった、いろんなバリエーションがあって

なかなか面白い話もありますよ」

「ほほう、どれどれ」

悪魔は興味を引かれたようで

パソコンの画面に顔を寄せる。

「ほらね、面白いでしょ」

「なるほど、これはインターネットですね」

「そうなんですよ、わたしは何か疑問があると

すぐにインターネット検索で調べてみる癖がありまして」

「悪魔さんもインターネットをご存知でしたか」

「いや、名前だけは知っていたのですが

なんせパソコンを持っていなくて」

「いまやスマホでもインターネット検索できるんですよ。

ほんとに最近の技術の進化の早さには驚きますよね。

スマホだけでも買われたらどうです?」

「いや、思いがけなくいい情報をいただきました

ありがとうございます。

それでは失礼いたします」

「もうお帰りですか? 何かご用があったのでは?」

「いえ、いいんです。勉強不足を痛感しましたので

また勉強してからこさせていただきます。」

「それでは、お元気で」

昔は情報も限られていて、

悪魔にとっては仕事がしやすかっただろうが、

これだけ情報があるとなかなか難しい仕事だろうな。

えっと、「悪魔」「三つの願い事」「成功例」

このキーワードで調べてみるか。

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