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2019年マイベストアルバム20

今年は150枚のアルバム・EPを聴いた。その中でも好きだし、俺の価値観で評価できるなあというものを20枚挙げたい。去年のようにトップテンは順位付けをしてみる。

RIRI『summertime EP』

上半期選出。昨年の二枚のフルアルバムでも、新世代の大器の登場を感じさせるものがあったが、この一枚で予感は確信に変わった。KIEJU、小袋成彬との共作であるリードトラックの表題曲はメロウでチルな雰囲気を持ちつつも、二回目以降のサビ?(という呼称が適切なのか?)でボーカルチョップが施されてて景色がハッと変えられる。何といえばよいか、「これからのポップスのスタンダードはこれだぞ!」と見せつけられたような気さえした。3/5曲でラッパーとコラボレーションしてるのもイマな感じだなー!ミドルチューンを主体とした、夏の日に穏やかに寄り添う側面が強いが、刺激的な一枚だった。さて来年はコラボ含めどのような一手を打ってくるんだろうか?



Base Ball Bear『Grape EP』

このEPについてはここに書けるだけ書いたので割愛。しかし、今年の二枚のEPを通して、三人のアンサンブルの噛み合い具合がハンパなく上ったんだと思うし、それはライブでまざまざと見せつけられた。


Official髭男dism『Traveler』

今年は世間的な評価として、完全に彼らの年と言ってさしつかえないだろう。そして「Pretender」の特大ヒットの中リリースされたこの作品はその勢いをさらに強めることのできるクオリティに仕上がっているといえる。路肩アニキの編曲はあまりに「J-POP」的では?と思うものの切なく疾走する「イエスタデイ」や、星野源「POP VIRUS」との共振が感じられる「Rowan」、Bon Iverとかのようなプリズマイザー感のあるボーカル加工が施された弾語り曲「Travelers」など、編曲が多様で楽しかった。


細野晴臣『HOCHONO HOUSE』

上半期では「悪くないな~」くらいな印象だったのだけど、一年を通して折々に再生してるな?と気づく。YMOはまだしも、エキゾチック期とかの細野晴臣のソロ作を聴いてピンと来たことが無かったのだが、このアルバムの音、ヤバイ。カァッコ良すぎる。メロディやその歌唱スタイル含め自分がこれまで好きだと思ってきたものではないのだけど、そこで鳴らされている音が気持ち良いから聞いてしまう。枯れの境地などではなく、(それはキャリアに裏打ちされた技術によるものだとしても)バチバチにフレッシュなものだった。


Dos Monos『Dos City』

これも上半期の時点で「カッコよさげだな」くらいに思ってたんだけど、繰り返して聴くに、その言葉数の多さ、ワードのインテリジェンスさ、様々なところからの引用の姿勢、トラックのアブストラクトさ、どれもこれもが一年を通して馴染んできた。これ以後に出した音源もどれもこれもカッケェし、来年以後の活動が楽しみなクルー。


Suchmos『THE ANYMALS』

これも上半期には「うおーサチモス振り切ったな~」くらいに捉えていたのだけど、このふてぶてしさや、スケール感、リズムの雄大さに馴染んでくるにつれ、ムチャクチャカッコいいものとして受け止められるようになってきた。とはいっても、この一年で頭から最後まで一気に聞いたのは片手で数えるくらいしかない気もするけど…。それでも今年の20枚に挙げたくなる一枚。中でも「WHY」のメロディアスなメロウさ、色気がたまらねえ。木々たちよ…。


LUNA SEA『CROSS』

復活後の彼らのアルバムは(「LUNA SEA」のリメイクは除いて)ハイクオリティなのはわかるけど、何となくハマらなさを感じていた。しかしこのアルバムはその音の良さ故か、自分の今聞きたいLUNA SEAの音とメロディが詰まっているように感じた。「TONIGHT」を髣髴とさせる「Closer」や、これからのLUNA SEAの代表曲になるに違いない「宇宙の詩~Higher and Higher~」ようなアッパーチューンだけでなく「THE BEYOND」「悲壮美」のようなミドルチューンがビビッとキたのも大きかった。


小袋成彬『Piercing』

昨年の『分離派の夏』の印象も強いのだけど、あの作品はちょっと俺には難しかった…。今回のもカンタンに理解~てなわけではないが、前作よりも取っつきやすさを感じる。全体としてヌケの良さが伝わってくる。いわゆる疾走感のある曲とかがあるわけではないのに、音のクリアさとかがそういう印象をもたらしているのか、非常にヌケがいい。さながらピアスの穴を空けるがごとく、に。


Barrie『Happy to Be Here』

ベボベ小出さんのプレイリストに「Chinatown」が入ってて知った。こういうキラキラした音像好きなやつだ~っ!っていう。それにつきる音の感じがタイトルのもつ温かみあるハッピー感に通じていて、それも好印象で。直接この作品に対する評価とかではないのだけど、この作品知ったことで、Faye Webster『Atlanta Millionaires Club』、Reptaliens『VALIS』(特に好き)、Jay Som『Anak Ko』などのグループ、作品を知ることができたのも良かった。


11位 Scoobie Do『Have A Nice Day!』

シャープでクリアにタイトなリズムの楽曲が10曲36分とコンパクトに詰め込まれていて、超聞きやすかった。まさにジャケットの写真のごとくな爽やかさ。有り様としては自分の中では完全にサチモスのアルバムと対極にある存在という印象。でも今年はその両方ともを良いものとして受け止められたなあ。楽曲の中でもシュガーベイブ的なキラめくシティポップ感のある「Sugar」が猛烈に好き。


10位 Lizzo『Cuz I Love You』

リリスクの開演BGMで表題曲の「Cuz I Love You」聴いたのが最初だった。そのタフさが強烈に印象に残ったのでアルバムもチェックしてみると、80sポップスみたいな「Juice」もあれば、ピアノが跳ねるフレーズが特徴にある「Heaven Help Me」など内容もバリエーション豊かで聴き応え抜群という。正直歌詞の内容は追ってないのでなんとも言えないが女性をエンパワメントするものなのかな、と思ったり。素敵過ぎ。


9位 土岐麻子『PASSION BLUE』

今作はトオミヨウをサウンドプロデューサーに迎えた”シティポップ三部作”の完結編に位置づけられる作品だと言う。「High Line」に顕著な歌の譜割り?リズム感の面白みにビビッとやられた。そして、歌詞、サウンド両方に現れているどこか憂いや寂しさみたいなものも好ましく思った要素の一つ。


8位 UVERworld『UNSER』

個人的「この人たちがこんなアルバムを?!」大賞受賞作。前作がアルバムとしても、一曲の情報量としても飽和的で熱量上がり過ぎててキツかったが、今作はその飽和感もなく曲数や時間的に短さはなくともグッと聞きやすさが増していた。そもそも彼らはミクスチャーな楽曲を作ってきたから、エレクトロな要素やラップを中心とする曲を作ってもおかしくはないのだが、ここまで振り切って来るとはね…。歌詞がアツいばかりじゃなく、シニカルな面も見せている所も好き…と言いつつ、ストレートなラブソングの「First Sight」がかなりのお気に入り。


7位 KIRINJI『cherish』

多くの人がそう評しているだろうことは分かってるけれど、俺も採捕に聞いた時の印象は「日本のドナルド・フェイゲン『The Nightfly』だ…!」だった。メチャクチャ音がイイ…低音もだし、全体として輪郭の見えない所がないというか。極端なこと言うと、こういう録音が成されていたらそれだけで勝利してるな、っていう。「善人の反省」のような辛辣な歌詞もあれば、「Pizza VS Hamburger」のような完全にフザけてる歌詞もあってその振れ幅もたまらんね。来年のライブ、チケット取れなかったの超悔やまれる。。。


6位 キンモクセイ『ジャパニーズポップス』

「J-POP」ではなく「ジャパニーズポップス」この違いは大きい。そして、アルバムに収められた楽曲群を表現する言葉として「ジャパニーズポップス」という言葉ほど似つかわしいものはない。歌謡曲、エキゾチック、50~60sガールズポップス、ティンパンアレー、鈴木茂、荒井由美、80sポップス、チェッカーズ、BOOWY、フィル・スペクター、甘いジャズ…色んな「ジャパニーズポップス」のエッセンスが詰まってる。それらは2019年には古いものなのか、逆に新しいものなのか、さっぱり評価できないけど、俺は大好き。


5位 ORIGINAL LOVE『bless You!』

上半期選出。肉体的でリズミックな一枚に仕上がっている。リズミックと言えども、複雑で呆然とするしかないそれではなく、緩急いずれにおいてもノれるものとなっている。田島さんがジャズギターを習っていることと関係があるのだろうか。一方で最終曲「逆行」がシンプルなロックのエイトビートなのも面白い。艶やかな裏声や、様々な手練れによるギターサウンドを堪能できる点、10曲50分以内というコンパクトさ、まとまりの良さも魅力。キャリアとしてはベテランの域であるが、ますますアグレッシブな姿勢を見せつける一枚。


4位lyrical school『BE KIND REWIND』

前作は世界の終わりと夏の終わり、その両方の終末的雰囲気が混ぜ合わさって切なさのある一枚だったけど、今作はメジャー行ったのと夏感とで祝祭感がある。全編イイけど、個人的にはノリ強めで飛ばす序盤に劣らず、「大人になっても」~「YOUNG LOVE」のメロウな中盤にテンションがアガった。今年行ったライブの中でもリリスクはムチャ楽しかったなあ。


3位 桜エビ~ず『octave』

アルバムは、もともとシングルとしてリリースされたものを一つにまとめるものとして存在してたということを聴いたことがある。そして時代を経て、アルバムという単位で全体の流れやストーリーテリングの妙といったものが磨かれていったのだと思うのだけど。このアルバムは最初に言った「シングルとしてリリースされたものを一つにまとめた」ものとしての側面が強い。実際12か月連続配信リリースした楽曲群に新曲を一曲プラスしたものだからだ。だから、一曲一曲の粒立ち具合ではここに挙げた20枚の中でもトップクラス。俺は「アルバム」が聴きたいのか、「イイ曲が10曲前後まとめられたもの」を聴きたいのか、どちらなのかなーと思いつつ、まあそんなこと忘れて聴こ。


2位 小沢健二『So kakkoii 宇宙』

ここにこれでもかと書いたので割愛。ナメちゃいけないね。


1位 THE NOVEMBERS『ANGELS』

上半期選出。この位置は一年間変わることが無かった。シャウトとインダストリアルな音像とが相まって暴力的なまでの揺さぶりと陶酔を感じるのだけど、その側面だけでなく、そこに指す一筋の光明のような「Everything」「CLOSE TO ME」といったポップな曲を共存させているのが類稀な点ではないか、と思う。
 また、歌詞も「敵じゃないし味方でもない やりたいようにやるだけ 俺とお前がちょっとでもよくなるように」「チャイニーズ・レストランで 美味しい物を食べたら すぐに優しくなれて なんとなく虚しい」「リズムに合わせて 呼吸を合わせて やっぱ合わないなってところを愛すのさ」などと刺さりまくる冴えわたりよう。先述した暴力的なまでの音は、突き放すためのものではなく、俺らがよりよく関わり合えればと思う故にぶつかり合うことで生まれる衝撃音なんだな、とこの一年で改めて確信した。面白くなってきやがった。

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