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占い師が観た膝枕 2 〜リニューアルオープン編〜

※こちらは、脚本家 今井雅子さんが書いた【膝枕】のストーリーから生まれた二次創作ストーリーです。

◆占い師が観た膝枕season1はこちら💁‍♀️◆

お待たせしました!season2の始まりです(笑)
無事、移転した店に出演し、イメージがフツフツと沸いたので。早速書いてみました。

また、よろしくお願いします!

今井雅子さん作の「わにのだんす」に出てくるワニが出てくる外伝、占い師が観た膝枕〜ワニと箱入り娘編〜〜春の嵐編〜
あと、〜イベント鑑定編〜 リケジョの受難編 〜〜大晦日の特別な夜編〜に出てくる登場人物が出てきます。
ぜひ!一緒にお楽しみください。

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登場人物がどう表現されるのかも興味がありますので、気軽に朗読にお使いください☺️

できれば、Twitterなどに読む(読んだ)事をお知らせいただけると嬉しいです❗️(タイミングが合えば聴きたいので💓)

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サトウ純子 作 「占い師が観た膝枕 2 〜リニューアルオープン編〜」


急に雨が降り出した。

雨というのはいろいろなものを運んでくる。
おまけに突然降り始める雨というのは、招かざるものを連れてくることがあるので特に注意が必要だ。

「家を出る時は陽が射していたのに」

占い師は天井の窓枠に映るビニール傘を目で追いながら、軽くため息をついた。

この鑑定所は、今までいた商店街から、飲み屋街のような雰囲気の場所に移転し、「占いの館」としてリニューアルオープンした。

完全個室風に区切られているこの場所から、外の様子を伺うのは難しい。
開いている天井の端に顔を出している窓枠。ここに映る人影が、外の様子を知る事ができる唯一の手段だ。

「あ、あのぉ。先生」

ブースの入り口に一人の女性がたたずんでいた。受付の女の子だ。

「先生に占い希望のお客さまがいらしているのですが…」

鑑定表に目を落とし、少し困ったように入り口の方を振り返る。

「大丈夫ですよ?どうぞ」

占い師は首と肩をクルッと回すと、背筋を伸ばして椅子に座り直した。

「それが…そのぉ…」

裏から軽快なリズムが聴こえてくる。
近所の教会で歌を歌い出したようだ。
そのリズムに合わせて、受付の方からもバンバンという音が響いてきた。

「…ワニなんです」

「はい?」

「といっても、動物園で見るようなワニではなくて、赤のハットを被り、黄色のジャケットを羽織って二本足で立っているワニなんです!」

受付の女の子は、目を大きく見開いて受付票を差し出した。そこには、大きく「ワニ」とだけ書いてある。

「だ、大丈夫でしょうか?」

占い師は天井を見上げて「あー」と声を出すと「ええ。構いませんよ。どうぞ」と微笑んだ。

「あと、ですね…お連れさまが…。その方は人間なのですが。お二人一緒で大丈夫ですか?」

受付の女の子は、また、困ったような顔をして入り口の方を振り返る。

「大丈夫ですよ」

占い師は、覗き込むように入り口の方を見た。

「こんばんワニー」

ワニは軽い足取りで占い師の横を通り過ぎると、サーモンピンクのワンピースを着た女性の手を引きながら椅子に腰掛けた。

「お久しぶりワニ。新しい場所、良いところワニなー」

ワニは赤のハットを椅子の横に置くと、興味深げに辺りを見渡す。

「お久しぶりです。来ていただけて嬉しいです」

占い師は、ワニが連れて来た女性に目をやった。なんとなく見覚えがある。だが、誰だったか思い出せない。

「お久しぶりです。なんか、すみません」

その声で、占い師は気付いた。

リケジョだ。

「この子が、そこの居酒屋で一人で泣いていたワニよ。放っておけなくて連れて来ちゃったワニ」

また、拾って来ちゃったのか。と、占い師は心の中で軽く突っ込んだ。

しかし、今日のリケジョはいつものリケジョではなかった。

サーモンピンクのヒラヒラしたワンピースに、肌の色より、明るいトーンのファンデーションで真っ白になった顔。真っ青な瞼。クレヨンのようなピンクの口。海苔を貼ったような眉毛。

そして、トレードマークのメガネは無し。コンタクトレンズを入れていないのか、いちいち眉間に皺を寄せてこちらを見るので、かなり目つきが悪い。

「私…、私。見ちゃったんです。あのパッとしない方が、ヒサコさんとお茶をしているところを…」

リケジョは俯いたまま、小さく呟いた。

「あー。つまりワニな。その、ヒサコって子に、パッとしない人との関係を聞いたらしいワニ。そしたら、彼は元カレだって」

ワニは、手にしていたペットボトルの水を、高い位置から上手に口に落とし込むと、『飲むワニか?』と、リケジョにそれを差し出した。

「あのパッとしない方は、女性が好きなんです。あのヒサコさんの元カレですよ?間違いないじゃないですか」

肩を震わしているリケジョの背中を、ワニがポンポンと優しく叩く。

「つまりワニな。この子、好きな人がいるワニが、その人は、そのパッとしない男性が好きらしいワニ。でも、そのパッとしない男性はヒサコさんみたいな女性が好きだから、この子が好きな人の恋は実らないと思ったらしいワニ……あぁぁぁー!何言っているかわからなくなってきたワニぃぃぃーっ!」

ワニは頭を押さえながら大きく口を左右に振った。

「なるほど。あなたが想いを寄せている男性Aさんは、Bさんという男性が好き。つまり、恋愛対象が男性なわけですね。でも、Bさんはどうやら恋愛対象は女性らしい。ようするに、このままだとAさんはBさんに振られてしまう。という事ですね」

占い師が、近くにあったホワイトボードにまとめながら書き込むと、リケジョは大きく頷いた。

「そうなんです。だから…、だから。『女性も悪くない』って思ってもらいたくて。私、頑張って、とびっきり可愛くして待ち伏せしていたのですが…」

「素通りされてしまったらしいワニな」

前を通り過ぎるカップルの声が、雨音と一緒に辺りに響き渡る。

「二度も振られてしまうなんて…」

リケジョは、バッグから広告が入っているポケットティッシュを取り出すと、袋のまま目に押し当てた。ワニがギョッとして首にかけていたタオルを差し出す。

「ところで…そのファッションは、誰かのアイデアですか?」

占い師は、たまらず問いかけた。

「マメちゃんです」

「ヒサコさんの?」

「はい」

『マメちゃん』とは、ヒサコがいつも連れて歩いている、男の腰から下が正座した形で座っているおもちゃのようなモノである。占い師は、それが「膝枕」であることを知っていた。

その膝枕に頭を預けながらアイデアを呟くと、それに関するデータや情報をスマホに転送してくれる仕様になっているらしい。

ヒサコの、今にも舌を出しそうな悪戯っぽい笑みが脳裏に浮かび、占い師の口からまた「あー」と声が出た。

「カードを観ますと『しっかり確認するように』と出ていますよ。何か勘違いしている可能性があるようです」

占い師は、大きく頷きながらカードを指差した。

「悪気無く通り過ぎている可能性もありますね。私も最初は知らない方かと思いましたから」

リケジョは、ブラックミラーに映る自分の顔を見て、一瞬ビクッとした。

「よくわからないワニが、無理しているように見えるワニ。そのままじゃダメワニよ」

ワニは、リケジョの頭を軽く撫でると、今度は容赦なくタオルでゴシゴシとリケジョの顔を拭きはじめた。

「この方がずっと可愛いワニー」

化粧の濃い部分が取れた姿は、いつものリケジョだった。リケジョはバッグからメガネを取り出すと、俯きながら顔に押しあてた。

「一度振られているのですから、今更くよくよするのも変ですね」

そして、横にいるワニの方を見て『いろいろとありがとうございました』と、丁寧に頭を下げた。

「しかし。よくできた着ぐるみですね。ずっと着ていて暑くないですか?」

帰り際、リケジョが人差し指でメガネを押し上げながら、ワニに向かってそう言った。

「下はタップダンスやっているワニねー!やっぱりここは良いところワニー」

リケジョの話しを聞いているのか、いないのか。ワニはリズムに合わせて尻尾をバンバン床に打ち付けると、そのまま手を振りながら教会の方に消えて行った。

二つ先の電信柱の陰から、占い師に向かって片方の膝頭をグイッと上げている『見覚えのある膝枕』が見えているのを、占い師は見逃さなかった。


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7/17
・今井先生にアドバイスいただき、わかりにくいところを修正しました。
・膝枕が出てきていない事に気付いたので、マメちゃんネタを追加しました。

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