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謎解きは使い捨て? 本当にそれで大丈夫?

おはよう×こんばんは×こんにちは=?

 もちろん答えは「おはこんばんちは」です。
 田中太郎と申します。謎を作る方だと主にJ's C Laboの人です。あと東狼研究所もですね。Twitterアカウントは @j_s_c_labo です。個人のはなんか急にデータが消えてログインできなくなったのをきっかけに諦めました。なので今はありません。時間泥棒すぎて各種作業に支障を来しかねなかったので丁度よかったともいえます……。

 これは『あなたは謎が好きですか? Advent Calender 2019』に寄せての記事です。

 昨年も似たようなことを書いてたり書いてなかったりするのでもう世の中のあらゆる暇つぶしに飽きたくらい時間のある方は読んでみてください。
 そこまで暇ではない人はこれを買って遊びましょう。

あなたの一番好きな音楽はなんですか?

 まずは簡単な質問として、これを聞いてみましょう。あれもこれもと候補はたくさんあるかもしれませんがとりあえず1つに決めてください。決まりました?
 それではまず、タイトルを教えてください。
 なるほど、ではアーティスト名は?
 いつ発表された曲かはご存知ですか?
 どんなところが好きなんですか?
 なるほど、ありがとうございます。あとで探して聴いてみますね。

 とりあえず私からはどついたれ本舗の『あゝオオサカdreamin' night』をおすすめしておきます。

あなたの一番好きな謎解きゲームはなんですか?

 さて、見出しの通り、あなたが一番好きな謎解きゲームについてのお話をしましょう。
 まず、タイトルは覚えていますか?
 どこの誰が作ったものかご存知ですか?
 発表時期は? そのゲームはどんな内容でした? え? はぁ……、ネタバレになるので言えない。
 ではそれどこでやってるんですか? ……ああ、今はもうやってないんですね。ではそれの詳細をもっと詳しく読める記事とかありませんか? ……それもないんですか……うーん、残念です……。

消えていく名作

 何が言いたいのか、少しは伝わったでしょうか。我々は現在、50年前のBeatlesの曲も、100年前の森鴎外の小説も、500年前のダ・ヴィンチの絵画だって聴いたり読んだり見たりできます。ですが、たった1年前に開催されたばかりの謎解きゲームを明日体験する方法を、我々はほとんど持ち合わせていないのです。

 記録ではなく記憶に残る、とか、いい感じにみんなが忘れてくれた方がまたあんな感じのギミック使えるようになるし?とか、謎解き公演はライブ感もあってこそだから、とか。
 いろいろ人によってご意見・ご反論、あることでしょうが、今回はそういうミクロな部分の話ではなく、マクロな目線で見てみましょう。

 まず前提としてこちら。
 リアルでやる謎解き公演は特殊な機材・物品を使うものであれば保管場所や保守点検に困るため、実際に公演ができる状態での長期保存はあまり現実的ではありません。
 また、謎解きゲームはネタバレ厳禁というルールを設けていることが多い都合上、1人で全てを体験できるわけではないという都合上、作者や運営団体以外が内容についての細かい記録を残し、世に出すことはなかなか困難です。
 あれはとんでもない名作だったから誰かしら記録に残しているだろう、はたぶん誤りです。
 とても恐ろしい集団心理である――。そう……消防車はまだ来ない……。なぜなら!!! もうお分かりだろう!!! 誰も……

結果として何が起こっていくか

 持ち帰り謎は作者のやる気次第では保管も長期販売もしやすいので、ここからはリアル公演をメインとして書いていきます。

 現段階である程度記録に残していくことを意識していないリアル謎解きゲーム以外は、おそらく10年もしないうちにほとんどのデータが失われていきます。
 いうてハードディスクの中にオリジナルのデータあるし?などと思っていても、パソコン買い換えたときにどこかに行ってしまったり、突如ハードディスクがお亡くなりになったり、意外とあっさりデータは消えます。当日運営を実際にしてみて鉛筆で少し書き変えた運営のマニュアルのように、オリジナルデータにはっきり明文化されていないものはもっと早く消えていきます。
 あなたが大好きなあの公演の小謎など、もう二度と振り返ることはできないかもしれないのです。

 ひたすら個人的な意見ですが、内容についての記録が一切残っていないのはそこそこ問題だと思っています。
 例えば謎解きについて研究や批評をすることになったとしましょう。そろそろ客観的な批評がほしいってたしかどこかで書いてた人もいましたし。卒論で謎解きをテーマにしたがる大学生とかいるかもしれないし。知らんけど。

 例えば「クラシック音楽が脳波に与える影響」を研究しようと思ったら脳波計以外は既存のクラシック音楽のCDを使えば済むかもしれませんが、「リアル謎解きゲームが脳波に与える影響」を調べようと思ったら、それこそ使えるライブラリがほぼないため研究のためだけに新作を一本用意する必要があるかもしれません。
 やったね世の中に新作謎解きゲームが1つ増えたよ!じゃねぇんじゃ。

 謎解きゲームを文化のレベルまで高めて定着させたいと仰る方もいますが、現状のまま研究も批評も難しい状態が続いていくなら、それはいくらなんでも……じゃないでしょうか。

謎解きゲームを作ってる人向けの提案

 ①もう再演しないって決めたら小謎等のデータを入れながらネタバレ記事書いて公開しようぜ。

 単純にデータに残そう、というお話です。
 これにはメリットもあります。もう自分のところではやるつもりがない公演を記事として公開し、その大謎部分の解説や記事全体を有料記事に設定すればもう少し追加で稼ぐことができます。
 同人的にやってるならリアル公演は会場費&人件費&交通費&印刷費&etc.……で黒字出すの難しいでしょうし、こういうのやってみたらいかがですか?

 ②もう再演やらない作品の印刷物データや物品の設計図、運営マニュアル、司会原稿、解説原稿などをセットにして販売しようぜ。

 将来他者による私的再演ができるようにしよう、というお話です。
 謎解きゲームはやはりリアルでないと体験できないドキドキワクワクもたくさんあります。かといって、公演ができるキットそのものを売るのは在庫管理も大変……。ならばそういったものをどう作ればいいのかデータとして販売し、購入者が自らの手で再現して友人知人を集めて公演として開催できるものを作ってみてはいかがでしょう。
 料理でいうレシピ、音楽でいう楽譜を売るみたいなイメージです。こういうのがあると謎解きゲームの研究もしやすくなるかもしれません。
 繰り返しになりますが、これも原資はそれほどかからず儲けになるかもしれません。

 どちらも、過去作全部をとは言いません。当然もう忘れたい駄作迷作問題作あるでしょうし。とりあえず一番自信のあるもう再演のチャンスがなさそうな公演を使って、こういう取り組みをやってみたらいかがでしょう、という記事でした。

最後に宣伝

 ・こちらで謎を販売してます。3500円+送料と高額ですが『メイキュートッパ!』は特におすすめです。
 ・こういう感じの謎解き公演ネタバレ記事を書きました。他人にネタバレ記事を勧めるならまずは自分でってやつです。

 以上です。おつきあいありがとうございました。

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