相続放棄をしても財産管理の責任をもつため相続財産管理人の申し立てが必要

相続財産管理人は相続人の捜索や相続財産の管理・清算を行う者である。

相続人が不明、もしくは相続放棄があった場合に相続財産管理人の選任が必要。逆に言うと、相続人がいた場合は選任できない。

全員が相続放棄した場合でも、家庭裁判所の戸籍調査で、相続放棄が全員ではなく、見落としで、相続人が存在するようなケースもある。

相続財産がなければ相続財産管理人の選任は不要。

■申立が可能な法律上の利害関係者
相続を放棄した人
特別縁故者
相続債権者
相続財産を管理している人
地方自治体
不動産の共有者

■申し立て先
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

■申立てに必要な費用
収入印紙800円分
連絡用の郵便切手(申立てする家庭裁判所へ確認)
官報公告料4230円(家庭裁判所の指示があってから納める)
※相続財産の内容から、相続財産管理人が相続財産を管理するために必要な費用(相続財産管理人に対する報酬を含む)に不足が出る可能性がある場合には、相続財産管理人が円滑に事務を行うことができるように、申立人に相当額を予納金として納付する。

■選任から終了までの手続きの流れ
1.家庭裁判所は相続財産管理人選任の審判をしたときは、相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をする。通常は裁判所が住所地の弁護士を選任する。
2.1の公告から2か月が経過してから、財産管理人は相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をする。
3.2の公告から2か月が経過してから、家庭裁判所は、財産管理人の申立てにより、相続人を捜すため、6か月以上の期間を定めて公告。期間満了までに相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定。
4.3の公告の期間満了後、3か月以内に特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがある。
5.必要があれば、随時財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、被相続人の不動産や株を売却、金銭に換えることが可能。
6.財産管理人は、法律にしたがって債権者や受遺者への支払をしたり、特別縁故者に対する相続財産分与の審判にしたがって特別縁故者に相続財産を分与するための手続を行う。
7.6の支払等をして、相続財産が残った場合は、相続財産を国庫に引き継いで手続が終了。

■相続財産管理人が行う具体的な内容
1.相続財産の調査
2.財産目録作成・家庭裁判所に財産目録を提出
3.相続債権者・受遺者に対する請求申出広告・催告
4.相続財産の管理
5.不動産がある場合の管理
6.権限外行為(事前に許可必要)
7.債権者や受遺者への支払,特別縁故者への相続財産分与
8.相続財産が残った場合は,共有者への持分移転や相続財産を国に引き継いで手続が終了

相続財産管理人を選任しない場合、相続放棄をしても、相続人は財産管理の責任を持つため、損害賠償義務の可能性がある。

以下の記事では、相続放棄をしたのに100万円払うことになった例もある。

他にも遺産の不動産が倒壊して、通行人に損害を与えた場合などは損害賠償の義務が発生する可能性がある。

また生前贈与後に相続放棄をした場合は、注意が必要だ。

■生前贈与後の相続放棄
被相続人が、債務不履行が生じることが確実であることを知ったうえで生前贈与を行った際には、債権者の請求によって、その生前贈与が取り消されてしまう可能性がある。

この場合は詐害行為取消権によって調整が図られる。

詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを、裁判所に対して請求できる債権者の権利です(民法第424条第1項)。

相続財産管理人の口座開設

(1)口座開設銀行で「亡●相続財産管理人弁護士●」名義の口座を作成
(2)銀行印は,印鑑届で提出した印鑑


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?