《浴槽、ブルーのハーモニー》の香りを妄想する
まだ数枚の作品を観たくらいだったころ、ボナールに対して抱いていたイメージは《太陽光を感じる明るい絵が多い》といったものだった。あまり明確な輪郭がなく色と色は溶け合い、眩しくて目を細めながら見ているような感覚を抱く絵たち。
妻をモデルに数多くの裸婦画を描いたことも知る。きっと満ち足りた人生だったのだろうと思っていた。
一方で私の中にはいつも『心が満たされていたならば、わざわざ絵など描くだろうか?』という思いがある。絵を描く、という行為は描かない者の傍目よりもずっと根気と気