韓国語では小さい「ッ」の後には激音か濃音しか立たない

この記事は以下の記事で紹介した韓国語ローマ字表記法『 ʻEdkŭka 』の解説です。

小さい「ッ」の後には激音か濃音しか立たない

ここでいう小さい「ッ」とは、韓国語における以下の三種の音です:

[p, t, k]

辞典などで使われるハングルの発音表記では:

[ㅂ, ㄷ, ㄱ]

韓国語では、これらの3つの音のどれかが現れると、後続する子音が必ず激音か濃音になります。

濃音と激音は、それぞれ以下の文字で表される音です:

激音:ㅍ, ㅊ, ㅌ, ㅋ, (ㅆ)

濃音:ㅃ, ㅉ, ㄸ, ㄲ, (ㅆ)

ㅆ については、平音 ㅅ に対して激音と濃音の区別がなく、学説によってどう理解するかが少しずつ違っているようです。ただし、この記事では区別がないということだけが重要です。

つまり、「小さい「ッ」の後には激音か濃音しか立たない」というのは、[p, t, k] のどれかの後に子音が続くときは、その子音の発音は必ず ㅍ, ㅊ, ㅌ, ㅋ, ㅃ, ㅉ, ㄸ, ㄲ, ㅆ のうちのどれかである、ということです。(ハングルの綴り字上は普通に平音だったりするので注意が必要です。)

ʻEdkŭka では、この事実を以下のように表現しています。

① ʻEdkŭka の子音字は以下の10個だけです:
p, t, c, k, b, d, z, g, s, ʻ 
これらは単独では全て「弱い音」(激音でも濃音でもない音)です。
② このうち、閉鎖音(パ・タ・カ系の音) p, t, c, k, b, d, z, g は、ʻ 以外の子音の前に置かれると以下のように共鳴音(マ・ナ・ラ・ン系の音)化します。
(ʻ 以外の子音の前で){p, b}, {t, d}, {c, z}, {k, g} → [m, n, l, ŋ] (ㅁ, ㄴ, ㄹ, ㅇ)
③ また、摩擦音(サ・ハ系の音) s, ʻ は、子音の前に置かれると以下のように閉鎖音化します。
(子音の前で)s, ʻ → [t, k]
ただし、s は t, d, c, z, s の前で、ʻ は k, g の前では、どちらも [p] (ㅂ) になります。
(t, d, c, z, s の前で) s → [p] (ㅂ)
(k, g の前で) ʻ → [p] (ㅂ)

(①〜③まとめ) 10個の子音字は、ʻ 以外の他の子音の前ではこのように閉鎖音→共鳴音、摩擦音→閉鎖音のように変化するため、もし子音の前で小さい「ッ」([p, t, k]) の発音があったら、それは ʻEdkŭka では s か ʻ  のどちらかで書かれます。
(ʻ 以外の子音の前で)閉鎖音 (p, b, t, d, c, z, k, g) →共鳴音 ([m, n, l, ŋ] (ㅁ, ㄴ, ㄹ, ㅇ) )
(ʻ 以外の子音の前で)摩擦音(s, ʻ)→閉鎖音 ([p, t, k] (ㅂ, ㄷ, ㄱ))
④ 子音の前で小さい「ッ」の発音になるただ二つだけの文字である s と ʻ は、それぞれ普通はサ行とハ行の音を表し、どちらも清音(無声音)です。
so: ソ (소)
ʻo: ホ (호)

⑤ 「強い音」(激音と平音)は、文字の後に ʻ を添えるか、無声音 (p, t, c, k, s, ʻ) の後にその文字が置かれることによって作られます。
pʻ, bʻ, tʻ, dʻ, cʻ, zʻ, kʻ, gʻ, sʻ → ㅍ, ㅃ, ㅌ, ㄸ, ㅊ, ㅉ, ㅋ, ㄲ, ㅆ
(無声音の後で)p, b, t, d, c, z, k, g → ㅍ, ㅃ, ㅌ, ㄸ, ㅊ, ㅉ, ㅋ, ㄲ, ㅆ

なお、このように他の子音の後に置かれた ʻ は、前の子音を強くするだけで、自分は発音されません。
子音の前で小さい「ッ」の発音になるただ二つだけの文字である s, ʻ がどちらも無声音なので、「ッ」のあとの子音は必ず強い音になります。

このように、ʻEdkŭka は、韓国語の発音のルールをパズルのように組み合わせてできているため、ʻEdkŭka を理解すれば、韓国語の発音のルールを理解することができます。

例えば、먹다 (食べる) は、カタカナで書くと「モッタ」のように聞こえる発音ですが、この「タ」が平音なのか濃音なのか迷ったことはないでしょうか?

「ッ」のあとの子音は必ず激音か濃音です。(この場合は濃音が正解です。)

ʻEdkŭka では、먹다 は baʻde と書きます。d の前に無声音である ʻ があるので、この d は濃音になることがわかります。(強くなる前のもともとの字が有声音(濁音とか)の場合は濃音になり、無声音の場合は激音になります。)

もっと詳しい音韻分析は、以下の記事をご覧ください。

もし需要があれば韓国語の他のルールについても ʻEdkŭka によって解説する記事をまた書くかも知れません。

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