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奇抜な発想力

学生時代のとある夏休み。
私は友人と一緒にTOEICを受講する約束をしていた。
今でこそ、社会人になり、ファッションとしてもマナーとしても腕時計を付けているが、当時、私達の学生時代は、携帯の普及により、腕時計なんか持っていなかった。
それにも関わらず、試験では必要な持参物として、腕時計が求められるジレンマにしばしば悩まされていた。

そんな試験当日。
心なし穏やかに感じられた朝。
そろそろ出発という時に突如、携帯の着信音がやかましく鳴り響いた。
友人からだ。


「おう、どした?そろそろ出発…」



「腕時計が無い」


私が話し終わるのを遮り、友人は第一声を放ってきた。

「親父に腕時計を借りようとしたが無理だった。  
   お前、もう1つ用意できへん?」

友人は焦りからか、やや興奮気味であった。
私は、電話口からそれを感じた一方、自分は腕時計を持っている安心感があったからか、友人との間には温度差があった。

「どうしよ、どうしよ、ヤバイヤバイ」

「試験会場に時計あるんちゃう?」

「無かったらどうするん!?」

「その時は…
    とにかく早く問題解くしかないやろ」

「自信ないって」

「いや、遅刻してまうから、とりあえず来い!」


迫る時間に私も徐々にソワソワし始めたので、
とりあえず電話を切って会場へ向かった。

無事に会場前の入り口に到着した。
しかし、友人は来ていない。
来る道中から、音信不通が続いているため、状況も把握できない。

結構待っても来ない…遅い。
そろそろ、タイムリミットだ。
このままでは、TOEICを受講できず、共倒れしてしまう。

会場入りしようと思った開始10分前。
遠くから猛烈に走ってくる奴がいる。
友人だ。
距離があっても理解できるほど、見事にテンパっている。
辞書で「テンパる」と調べたら、友人の写真が添えられそうな勢いだ。



「ハァハァハァ…」

「間に合ったな、良かった!」

「いや、間に合ったけど…ハァハァ…
   腕時計が無い…ハァハァ」

まだ言ってやがる。

「そんな事言ってられへん!早く会場へ!」

「腕時計…ハァ…腕時計が無いから…」


そう言うと、友達は自分のポケットへ雑に手を突っ込んで、顔正面に何かを差し出した。





「ハァハァ…これ…」








エアコンのリモコンて!!

いや、確かにデジタル時計ついてるけど!!
しかも、夏の日に家、大丈夫!?
親、干上がってへん!?



友人は机の右端にエアコンのリモコン置いて試験を受けてました。


お前の発想力は、いつか世界を変える。



そう思った、
蝉がミンミン鳴く夏休みの午後だった。

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米国大学卒業後、某IT企業でSE&コンサルタントをしています。自身で副業も実施。 ここで思考を共有し、同志と繋がり、本気で共創したい 。「人生は勝者ではなく、笑者であれ」をモットーに生きてます。
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