超時空薄幸児童救済基金・15のRe

#小説 #連載小説 #ゲーム #SF #ファンタジー

(はじめに)

 マガジンの冒頭でも簡潔に説明していますが、奇妙な慈善団体に寄付をし、異世界で暮らす恵まれない少女の後見人となった「私」の日記です。

 私信(毎月、少女から届く手紙)と、それを読んだあとの「私」の感想部分が有料となっています。時々、次の手紙が届くまでのインターバルに、「私」が少女への短い返事を送るまでの日記(Re)が書かれることがあります。こちらは、基本的に全文が無料となります。

(バックナンバーについて)

 マガジンのトップで一覧を見てください。
 時系列の若い順に並べてありますから、文末にある前後のリンクで流れを追って読むことができます。

※もともとは、現実の時間に合わせて月一回の更新をしていましたが、本業の執筆が忙しく、現在は季節がずれてしまっています。ご了承ください。

では、奇妙な「ひとりPBM」的創作物の続きをお楽しみください。

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 これまで私は、自分が超時空薄幸児童救済基金に寄付をしたことを、他人に話したことはなかった。恵まれない子どもに寄付をして、その後見人になっている……と言っても信じてもらえるほど裕福でもないから、自慢してもしかたない。仕事柄、確定申告をするときに「この寄付は控除の対象になるのかな?」といつも悩むのだけれど、税務署の人になにか聞かれたら説明が面倒だと思って、連絡役の男から証書をもらったりもしなかった。

 ただ何回か、親しい人たちとの酒の席で、「もしもの話だけど……」と冗談めかして、超時空薄幸児童救済基金のことを話したことがあった。
 「そんなことができたら楽しいよね。まあ、お話のネタだと思ってよ」などと話したわけだが、それを聞いた一人が、SNS内での私の紹介文に怪しげな「尾ひれ」をつけてしまった。
 こんな感じにだ……。

風魔”平成”異世界の扉を開く妖術の使い手。異世界から仕入れた数々の名品・珍品を売った利益で、異世界の恵まれない子共たちを救済しているという。

 そうか。
 たしかに、あちらの世界の少女から贈られたものはこの世界にはない珍しい品だ。価値が分かる人物に売れば、高額で取引できるかも知れない。
 ……とはいっても、わざわざ私の誕生日にプレゼントしてくれたものだし、彼女の気持ちのこもった贈り物を手放すわけにはいかない。
 それに、この冬もあの手袋をしていたが、誰一人、こちらの世界にはいない生き物の革だとは気づかなかった。珍しいものだと証明するのは難しいかも。

 それはそうと……。
 連絡役の男は、予告した通り2日後にやってきた。

「どうでしたか?」

「無事に砦は落ち着きを取り戻した。指揮権を欲しがっていた騎士は、自分の領地へ引き上げることになったよ」

「そうでしたか、よかった……。髪飾りの職人は砦で少女の姿を写して作業に入った――との報告があったので、無事なのだろうとは思っていましたが」

「では、髪飾りは予定通りに贈れそうなんだね」

「はい。それに、あの材料でしたら素晴らしいものができるでしょう」

 うむうむ。そうだろうとも。
 目にしたことはないが、あちらでも珍しい材料であることは彼女の手紙からよく知っている。

「ところで、もう一人の少女のことで相談があるんだけど……」

「どうしました?」

「お見舞いを贈ろうと思うんだよ」

「お言葉ですが、彼女は一つところに留まっていませんし、後見人からの荷が船に届くというのは、事前のやりとりなしでは不自然すぎるのでは……?」

「長期間入院していた今ならチャンスだろ? 彼女には、ジョン・スミスがどこにいるかは知らせていないし、逆にどうとでも辻褄を合わせられる」

 まあ「ここに届けられる範囲にいるのか」と、地域を推測される可能性はあるが、それだって誤魔化せなくはない。
 そう気づいたのか、連絡役の男も納得したようだった。

「あちらの世界にどんなものがあるかはよくわからないが、彼女の写真は見てるからね。必要そうな贈り物を思いついてるんだ」

 私がそのプレゼントの内容を告げると、連絡役の男も「なるほど」と笑みを浮かべた。

「確かに、今後必要になるかもしれませんね」

「まあ、彼女は必要であれば自分で調達できるが、人から贈られたら嬉しいんじゃないかな」

「わかりました。手配しましょう」

 連絡役の男は、そう言って去っていった。


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