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コピーライターの時代? かもしれない。

かつて、コピーライターがなりたい職業の
上位にランキングされていた頃がありました。
新卒でコピーライターとして採用される可能性は
ほぼゼロに等しく、どこも「経験3年以上」の条件ばかり。

未経験の人は、どうやって「経験3年以上」になればいいのか。
途方に暮れながら、やっと拾っていただき
ゼロというよりマイナスからの修業を重ねました。

当時は、まだ手書きが主流の時代で、
三菱鉛筆の3Bの鉛筆を愛用していましたが、
鉛筆がワープロになり、ワープロがPCになり、
コピーライターに求められる「仕事」も随分変わりました。

今日は、コピーライターが終始持ち続けてきた
「価値」について、ちょっと書いてみます。


1 コピーライターは、面白い言葉を考える人?

わかりやすい話は、広まりやすいものです。
コピーライターという仕事がまだ知名度がなく(今も知名度低いですが)
そもそも、何をする人なのか、ということをよく聞かれました。

コピーライターの地位を高め、有名にするためにもっとも貢献された
方といえば、糸井重里さんであることは論を待たないと思いますが、
糸井さんのコピーがどれも、シンプルで短いこともあり、
「コピーライターは、一行書いてお金がもらえる」みたいに
思われたことも多かったようです。

「一行書くだけ」は、盛りすぎかもしれませんが、
「キャッチフレーズや言葉を書くこと」がコピーライターの仕事だと
思われている方は、とても多いのではないでしょうか。

実際、間違いではないのですが、それはコピーライターの仕事の
ごく一部ではないか、と僕は思っています。


2 イメージコピーという、不思議な言葉

日本経済がバブルに沸き、広告業界が活況だった頃、
こんな依頼をもらうことが、よくありました。

「なんか、この感じにあうコピー、ないかな?」
「ガーンって、感じ、ほしいんだよね」

何かのメッセージを伝える、というよりも
「ビジュアルや動画の雰囲気にあうような、言葉」を
プロデューサーは探していました。

それらは「イメージコピー」といわれていました。
何かのメッセージを伝えるというよりも、
デザインの一部のような働きをするコピーを
差していました。

そのため、英文や単語、標語などが求められました。

今考えれば、イメージコピーというのは
ちょっと不思議だし、抵抗がある言葉です。
なぜなら、イメージコピーとして考える言葉は、
何のメッセージももたず、言葉としての機能を
果たしていません。
しかし、コピーとは本来、ある内容を定義したり、
意味を付加したり、何かの情報を提供するものですから
矛盾を抱えてしまっているのですね。

ところが、2020年においても、当時のように
コピーについて「イメージコピー」のような
勘違いが時々あるような気がしています。


3 何を伝えるかを、決めること。

コピーライターになって最初に覚えることは、
「いきなりコピーを書くな」ということです。

たとえば、キャッチフレーズなどは、簡単そうに
見えるので、「では、では」とコピーを書きはじめようと
するのですが、ベテランならともかく、新人くんや
コピーに慣れていない人には、うまくいきません。

そもそも、何を伝えようとしているか、が整理できて
いないので、表現されて出てきた言葉は、
「意味がわからない」「何が言いたいのか」のオンパレードに
なることになります。

たとえばキャベツであれば、
「冷涼な高原の気候のもとで育っている」「有機農法だから安心」
「キャベツの生産日本一」などなど、いろいろな訴求内容が
考えられるわけですね。


コピーを書く前に、商品のこと、生活者のこと、メディアのこと
などを一通り整理してからでないと、ピントがずれた
コピーになってしまうことが、おわかりいただけると思います。


4 言葉のコピーライターから、考え方のコピーライターへ。

コピーライターの大事な仕事は、言葉を考える前に
伝えることの整理だと書きました。

これ、ものすごく大事なことだと思います。

伝えることを整理するためには、
情報をたくさん集め、それぞれを評価し、
取捨選択を行い、優先順位をつけることが必要です。

それは、たんなる言葉の選択ではありません。

置かれた状況の中で、もっとも効果をあげるためには、
どんなことを言うべきか?
生活者の気持ちになると、どんなメッセージが支持されるだろうか?
短期的でなく、今後も商品に好意をもってもらうには何を伝えるべきか?
SNSでは、何を伝え、サイトでは、何を伝えるべきか?


判断すべきことは、際限ありません。

また、メディアが多様化している昨今は、それぞれのメディアに
よって、伝えることは変えて行く必要もあります。
一度に同じことをたくさんの人に伝える「マスマーケティング 」と
は、別のアプローチが不可欠です。


なんだか大変だなぁ、と言う話をしていますが、
こうした伝えることの整理は、そもそもコピーライターが
もともと得意としてきたことです。

面白い言葉を考えるのでなく、
伝えたいこと、やるべきことを考える。

かつての「イメージコピー」でなく、
本来的なコピーライターの仕事が
今こそ求められているのではないか、と思っています。


近年、若い人の中でも、コピーライターを
めざすひとが、また増えているようです。

とても嬉しいことだと思います。



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