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アップルは、なぜ強いブランドなのか。

ブランドの話を少ししましたが、
今日は自分がクリエイティブディレクターとして
長く担当させていただいたAppleをテーマに
強いブランドの秘密について、書いてみます。
(ちゃんと書けば、かなりの分量になってしまうので
何回かにわけて、時々、取り上げたいと思います)

ブランドは、モノじゃない。

それは、今からかなり前、1990年代の終わりのこと。
Appleの広告をクリエイティブディレクターとして担当していた僕は
打ち合わせのためにアメリカのカリフォルニア州にある広告代理店の
本社に出張にいきました。

打ち合わせ相手のBossはまだ会議中だということで、
アシスタントの女性(入社数年のジュニアクラス)がカフェに
案内してくれ、こんなことを言われました。

「Yasu, ブランドって、何だと思う?」

え? そんな本質的な混み入った話をここで?

僕が答えを逡巡していると、
彼女は、アイスコーヒーにクリームを入れながら
サラッと、こう言いました。

「ブランドは、人なんだよね。商品じゃなくて」

そうそう、そうなんだけど、
なんで、そんなに簡単に言えちゃうわけ?

会議を終えたBossがやってくると
彼女は、アイスコーヒーを持って自分のデスクに
向かったのですが、僕はすっかり関心してしまいました。

さすが、Appleのチームは、クリエイティブディレクターだけでなく、
担当者がブランドのことを、よく理解しているのだと思ったのです。

Why が大事

2009年に行われたTEDのプレゼンテーションのなかで、
サイモン・シネック氏の「ゴールデンサークル」理論については
ご存知の方も多いと思います。

このプレゼンテーションの中で、
サイモンは、優れたブランドのコミュニケーションについてふれています。

詳細は、ビデオをご覧いただくとして、
コミュニケーションで伝えるべきは、Whatではなく、
Whyを伝えるべきだ、といいうものです。


Whatとは、商品情報です。どんな特徴があるか、
どんな機能をもった商品か、などの情報です。

Whyとは、そのブランドの存在意義のようなものです。
なぜ、その商品が必要なのか。なぜ、この商品を
世の中に届けているのか。

ブランドに即していえば、なぜそのブランドが
世の中に存在すべきなのか、ということです。

簡単にいってしまえば、イキナリ商品の自慢話を
するのでなく、商品に込めた思いや哲学をちゃんと伝える
べきだ、ということになるのですが、僕が注目したのは
このサイモンのプレゼンテーションの中で、アップルについて
言及している部分です。

Appleには、信じていることがある。

サイモンは、Whyから伝えるべきという一例で
Appleを取り上げて、以下のように述べています。

Why   Appleは、既成概念にチャレンジすることが大事だと思っています。
     人と違うことを考えることに、価値があるのです。
How    だから、美しいデザインで、シンプルで、誰でも簡単に使える製品を
     つくりました。                        What     それが、アップルです。

このプレゼンテーションを聞いた時、僕はとても驚きました。
なぜなら、僕がAppleの広告をクリエイティブディレクターとして
担当していた時も、まったく同じことを考え、実践していたからです。

もちろん、僕一人で、このことを考えたわけではありません。
アメリカの広告代理店のチームや故スティーブ・ジョブス氏の
当時のコメント、発言などをもとに、試行錯誤しながら
見つけていった考え方です。

つねに、ブランドを意識し、ブランドをより魅力あるものに
伝えるためには、ブランドの考えを、ちゃんと伝えなくては
生活者が振り向いてくれません。信じてくれません。

そう、ブランドは、人なのですから。


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