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日常平語

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樗堂一茶両吟/烟しての巻

  寛政八年(1796)

初オ 煙してのどけき冬よ山の家      樗堂
    木の葉はらはら昼比の月      一茶
   さゝ濁り魚とる水に竹さして      ゝ
    人見て人の立かゝる也        堂
   べんべんと雛直ぎりし宵の内      ゝ
    ほろつき出たり雨の春風       茶

初ウ 花菫葬のちよろちよろ燃しさり     堂
    忘れた事の袂さがして        ゝ
   落つきの秋も涼しき別座敷       茶
    何ともなしに只痩る露        ゝ
   大かたの祭月見も過けらし       堂
    門にもたれて雲を詠る        ゝ

   山越の約束来べき鐘の声        茶
    折おもしろの夜のむら雨       ゝ
   四方から蛍飛こむ宿なれや       堂
    二人がふたり足を投出し       ゝ
   地蔵切るあたりは花の散すまし     茶
    日の入るまでに鴬の啼        ゝ

名オ 二三日は寒ンだけ立し空の色      堂
    道さまたげの薪上る舟        ゝ
   こそこそと奉行の鎗に隠れたり     茶
    扇開ケばあらればらつく       ゝ
   きねぎぬの只どひやうしに明過て    堂
    階子の陰にもの思ひ居る       堂

   雜汁に下部の膳の秋の風        茶
    醍醐は今に蚊の多き月        ゝ
   羽織着てしばし見送るむら尾花     堂
    むつむつ腹は立しまうたり      ゝ
   窓のかた鼻の先迄日のさして      茶
    だぶりだぶりと汐のみち来る     ゝ

名ウ 高みより丸太を転す人だかり      堂
    言ふほどのことをかしかりけり    ゝ
   したゝかな豆の数見るとし暮て     茶
    寝て草臥し花の古里         ゝ
   なつかしく謡ふ酒屋の春造り      堂
    もつと降れかし二月の雪       ゝ

     丙辰年杪会

謡ふ酒屋樗堂一茶両吟/烟しての巻、これより暮れにかけて評釈いたしますれば、おつきあいのほど宜しくお願い申し上げます。

16.11.2023.Masafumi.

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