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小説「青と黄金」

味噌汁のために白菜を切っていたら、突然に子どもの頃、きっと耳鼻科の待ち合いででも読んだに違いない、何処かの国の、もはや何処の国かも分からない、昔話、あるいは神話を思い出して、思い出したら気になって、何としても細部を思い出さんとして、菜を斬る。昔、人はみんな黄金の目を、していたのだそうだ。それは世界に太陽が無かったからで、夜の、暗い毎日に、輝く黄金の目はお互いを知る大切な手段だった。ところが、ある年神に通じる子どもが産まれて、その子が祈ると世界はあっさり太陽を寄越した。そしたら、光る目は邪魔っけになって、みんな鉱山の、青い石と目の玉を取り替えた。それでも、暗い昔を拘る人たちは自分の輝く目を誇るから、やがて陽の当たらない狭い地面の下で暮らすようになって、やがてそれが黄金の鉱脈になった。だいたいこんな筋。さて、何処の誰が語った事なのだったか。菜を斬る。

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