見出し画像

泪橋

目蓋をあけて見え始めてくる
消えかけの風景が好きだ
何があっても踏みとどまろう
近過ぎる夢から
繋げて 繋げて
遠過ぎる夢へ
なみだの橋を架ける

風に結わえつけた
ほどけかけの記憶
希望ヶ丘商店街の上に
朝焼け空が架かっていた
豆腐屋のおじさんが
おばさんと一緒に作った朝一番の豆腐を
冷たい水から掬い上げてくれた
黄昏には
駅に通じる通りに灯りがついて
「ローレライ」のマダムが
ほかほかのポークカツを
テーブルに運んできてくれた
ささやかな生活の秘密のなかにいた
もうえなくなったひとたちほど
近くにいる

けち臭い自惚れと
根っからの優柔不断で
ひるんで引き返しかけた夢
踏みとどまって
粘りに粘って
なみだ橋を渡る


いいなと思ったら応援しよう!