「グランメゾン東京」第9話レビュー

 特に感想を持たなくなってしまった。
 良かったのは、尾花が倫子のことを「おばさん」って呼んでも倫子が何も言わなくなったこととか。とろサーモンの久保田さんが上沼恵美子のことを「おばはん」ってtwitterで読んで(それが直接的な原因じゃないかもしれないけど)大炎上したりする世の中なので、コンプライアンス的に「おばさん」っていう呼称が受け入れられるかどうかはわからないけど、二人の関係性が着実に深まっている証拠とも取れた。
 尾花ももう倫子のことを料理人としてリスペクトしているし、倫子も尾花と協働してレシピを作る中で尾花からリスペクトされているという実感も得ている(と思う)。「おばさん」という呼称から「倫子」という呼称に変化することで関係性の深まりを描くっていう方法もあるんだけど、今まで受容されなかった呼称が受容されるようになることで関係性の深まりを描写するっていう方法もあるのよね。

 というくらいの感想しかなかった…。
 後半戦最大の弱点は真知子にまったく感情移入できないってことだと思う。尾花によって自分の名誉に瑕がついたっていうのはよくわかるけど、未だに一流の料理雑誌編集者としてちゃんと活躍しているし、一つの店を簡単に潰せるくらいの権力を保持している。にもかかわらず、尾花をここまで目の敵にするのってどうなんだ? 栞奈が尾花を強く憎むのはわかる。父親がエスコフィユのコンタミの件で左遷させられたという具体的なエピソードがある(この程度で回収しちゃっていいの?という感は否めないけど。自分の力が認められた程度で尾花を許しちゃっていいのか?? 許してはないけど力は貸すのか)。
 江藤がグランメゾンを妨害するのも非常にわかる(柿谷と半ば結託して平古くんをあそこまでのけ者にする理由はよくわからないけど)。尾花はコンタミの汚名を背負っているものの、gakuが三つ星を獲るためには大きな障害として立ちはだかる。執拗に尾花を攻撃して、グランメゾンを閉店に追いやることで利益を得ることは間違いない(丹後と平古くんの尽力のおかげで、実力による超克ができてよかった)。
 でも、真知子にはそれがない。私の目にはただのわがままクイーンとしか映らない。真知子と尾花が恋人関係だったっていう設定もあるけど、まったく生かされていない。その辺の痴情のもつれでもいいんだけど、あと2回の放送でこの疑問符を解消させるだけのエピソードは挿入されるのか?

 あと平古くんが結局グランメゾンに吸収されそうになってるってのも展開を予定調和の方向に向かわせている。もはや三つ星獲れようが獲れまいがどっちでもいいんですよね。獲っても物語としてはハッピーエンドだし、獲れなくてもグランメゾンは一流ガストロノミーとして営業を続けて、また新たなチャンスに恵まれるんだろうし。正直着地点はどっちでもいいから、そこまでの過程で楽しめる物語展開を期待したい、けど、もう風呂敷は広げられないもんね。

 多分最終回で第一話に出てきたミシュラン審査員独特の仕草に回帰して、物語は収束していく。いや、こうなったら審査員がナプキンを床に落として、「来たな」って尾花のアップで「完」!っていうのもいいかもしれない。グランメゾンに「結末」って似合わないし、「結末」を迎えてほしくない。ずっとそこにあり続けてほしいから。

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