リフレーミングはその場で一回限りではない?

フレーミングとリフレーミング

リフレーミングという技法があります。リフレーミングというのは、認識の枠組み(フレーム)を再度(re)作り直すことを意味しています(若島,2019)。

リフレーミングの手順

以下では、リフレーミングの手順を、①フレームの同定、②意味づけという観点から整理します。

① フレームの同定
はじめに、認識の枠組み(フレーム)を整理します。
相談者の認識を、1)状況(ストレッサー:環境) 2)状態(ストレス反応:個人)という2つの観点で整理します。ここでいう状況とは、相談者をとりまく環境的な要因です。たとえば、職場でのパワーハラスメント被害では、相談者は膨大な仕事の量が課されているかもしれませんし、同僚に相談しにくい関係のなかにいるかもしれませんし、仕事以外で継続的な家族間のトラブルに巻き込まれているかもしれません。

次に、状態です。ある環境のなかで相談者が示す思考と感情の状態について整理します。たとえば、何もやる気が起きないこと、食欲が出ないこと、消えたいと思うこと、罪悪感を抱くこと、自分自身にうんざりすること、などが挙げられます。
相談者のおかれた状況と状態を整理したら、情報を統合し、共感的な姿勢で、次のように伝えます。

『〇〇(状況の言葉)では、××(状態の言葉)です。』
『〇〇の中で、××と思わずにはいられないですよね。』

いくらもっともらしい言葉で捉え返そうとしても、本人が了解できないと無意味になります。本人が「なるほど」と思えるものにするためには、来談者が語った言葉を使って、それをキーワードにしてストーリーを作るのがよいです。

感情を閉ざして話す来談者もいます。その場合、客観的な事実から、食欲が落ちやすいこと、自責感を抱きやすいこと、抑うつ状態になりやすいことを予測できます。ですので、予測に乗せて、語られない状態についても確認することができます。

② フレームの意味づけ
 次に、相談者の認識の枠組み(フレーム)を、より高い観点から、意味づけます。あるいは、異なる意味づけをします。再度(re)の構成ですので、正そうとするよりも、新たに解釈し、活かそうとする姿勢が大切です。

『〇〇な状況では××になることは自然なことと思います。』
『私も、〇〇な状況では、××になります。』
『〇〇な状況のなかで、××になりながら、△△をしているのは誰にもできることではありません。』

このように、ある事象に対して、一般的な出来事として承認する意味づけを、心理学では「ノーマライズ」(「丸つけ」)といいます(若島,2018)。ノーマライズは、精神的な落ち着きを早めることに有用です。なぜなら、相談者は、自分が変になったような気がして、自分を責め続けることがあるからです。
ノーマライズは、意味づけをする点で、リフレーミングの技法のひとつといえます。

リフレーミングは事象に対する単なる肯定的言い換えのように使用されていますが、本来、パラドキシカルな意味を含むのです(若島,2019)。行動の変容を促す戦略的な意図を持ちます(若島,2011)。
たとえば、相談を受けていると、「なぜこの来談者は、このような状況のなかで怒らないのだろうか?」と思う瞬間があります。明らかに怒って当然な場面に、相談者が感情を表現しない場合、次のようなメッセージを伝えることもできます。

『これだけの状況では、一般的に激しい怒りを感じるのが当然です。現に、私は憤っています。Aさんが怒りを感じないとしたら、Aさんの理由があるはずです。どんな想いなのですか?』

Aさんは躊躇しながら、幼少期の両親の離婚、寂しい思いをしてきたことと、いろんなことを我慢して暮らしてきたことを語るかもしれません。このように、逆説的な言葉―普通とは逆の方向から考えを進めていくこと、また、通常とは逆の言い回しで物事を説明すること―、相談者の苦しみを言い当てることもあります。

リフレーミングは面接で1回きりではない?

クライアントと一緒に話をしているとき、リフレーミングが相互に了解できないときがあります。このようなときは、リフレーミングが1回きりで終わるものと思わず、ずっと続くプロセスであると意味づけることができるかもしれません。

『このこと(問題や現状)にどのような意味があるのかは、答えは一つではなく、だからこそ苦しさを感じるもです。さまざまな意味がありえるので、さまざまな人の考えを聞き、自分の考えを伝え続けるなかで受け止め方が変わる可能性があります。ですので、「今ここで意味を決めない」ことを積極的に「今ここで意味を決める」。そして、曖昧さに慣れながら、いろいろな人との対話を継続し、新しい理解について考えてみましょう』

リフレーミングのワークシート

リフレーミングは熟達した専門家の技術のようにとらえられがちですが、誰でもできる技法として、また、どのようにするとよりリフレーミングが起こりやすくなるのか、研究が必要かもしれません。