
慢性期慢性骨髄性白血病の患者さんを対象とした治験のご紹介
いずみの会ホームページなどでお知らせしてきたとおり、現在、慢性骨髄性白血病の患者さんを対象とした治験について、治験を実施されている先生方からご案内の依頼をいただいております。治験の内容や連絡先について詳しくはこの下の引用をご覧ください。ただし、期間(詳しくは、治験調整事務局 tm5614cml@c-ctd.co.jpにご確認ください)やご参加いただける患者さんに条件があることにはご注意ください。
また、この治験に関する論文についてもみなさんにもご覧いただければとご依頼いただいておりますので、あわせてご紹介いたします。
2023年8月29日追記:この治験の公開情報はこちらです。
※リンク先に研究代表者の先生のアドレス等記載されていますが、治験については必ず治験調整事務局(tm5614cml@c-ctd.co.jp)にご連絡、ご相談ください。
治験について
この治験について:この治験の目的は、チロシンキナーゼ阻害剤を内服している慢性期の慢性骨髄性白血病の患者さん に対して、治験薬を追加で内服した場合と、プラセボ(有効成分を含まない薬)を追加で内服した 場合の有効性及び安全性を比較することです。
治験薬について: この治験薬はプラスミノーゲンアクチベーターインヒター-1(PAI-1)を抑制することが知られ ており、血栓を溶解するメカニズムに係る作用を持つ新しいタイプの化合物で、まだ日本及び海外 で薬として承認されていません。 この治験薬は、基礎的な研究から、慢性骨髄性白血病においてチロシンキナーゼ阻害剤と併用する ことにより、従来の治療よりも高い効果(完全寛解)が得られる可能性があることが報告されてお り、この治験で治験薬の有効性と安全性を確認したいと考えています。
ご参加いただける患者さん:18 歳以上の方 、 イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ又はボスチニブによる治療を 3 年間以上、6 年間未満実 施している方 BCR-ABLISが 0.1%以下の方 BCR-ABLISが 0.0032%を超える方
治験の参加期間: この治験に参加した場合は、治験薬の内服を開始してから 2 週目、4 週目、8 週目、12 週目に 医療機関を受診いただき、その後、12 週間毎に継続して医療機関を受診していただきます。
ご参加をお断りする患者さん: 造血幹細胞移植歴のある方(自家細胞、同種細胞) 以下の心血管疾患を有する方 、 NYHA クラス分類Ⅱ~Ⅳのうっ血性心不全の方 、 登録前 6 ヶ月間に心筋梗塞の既往がある方 、 治療が必要な症候性不整脈がある方 、BCR-ABL キナーゼドメインの T315I 変異が認められる方 この他にも参加基準があり、ご参加いただけない場合もあります。
この治験に興味のある方は、下記問い合わせ先にご連絡ください。その後、主治医の先生にもご相談ください。
治験実施地域:
北海道 札幌市、秋田県 秋田市、宮城県 仙台市、東京都 文京区(2カ所)、千葉県 千葉市、埼玉県 川越市、神奈川県 伊勢原市、静岡県 浜松市、大阪府 大阪市、福岡県 北九州市
お問い合わせ先:
治験調整事務局
担当者:渡邉和男、中島文枝(株式会社CTD)
E-mail:tm5614cml@c-ctd.co.jp
この治験に関連する論文①
こちらは、今回の治験薬の前回の試験結果の論文です。
Deep molecular response in patients with chronic phase chronic myeloid leukemia treated with the plasminogen activator inhibitor-1 inhibitor TM5614 combined with a tyrosine kinase inhibitor
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/cam4.5292
英語の論文となりますので、以下に概要の和訳を記載します。
背景:我々は最近、TM5614 に基づくプラスミノーゲン アクティベーター インヒビター 1 (PAI-1) 活性の薬理学的阻害により、細胞の運動性が増加し、ニッチからの造血幹細胞の剥離が誘導されることを示しました。 このTM5614第II相臨床試験では、BCR-ABL1転写物を定量することにより、PAI-1阻害剤とチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の併用が慢性骨髄性白血病(CML)患者において深い分子遺伝学的奏効(DMR)を誘発するかどうかを調査しました。
方法:少なくとも1年間安定した用量のTKIで治療され、主要分子反応(MMR)が得られたがMR4.5(DMR)に達していない慢性期CML患者がこの研究の対象となりました。組み入れ後、患者は TKI に加えてTM5614の投与を受けました。主な目的は、12ヶ月までに MMR/MR4 から MR4.5(DMR)に進行する患者の累積発生率を評価することでした。
結果: 33 人の患者が研究に登録されました。年齢中央値は59.0歳で、58%が男性でした。 この試験にはソーカルの高リスク患者は登録されていません。TKI 治療期間の中央値は 4.8 年でした。この研究の開始時に、7人がイマチニブを、26人が第2世代TKIを投与されていました。12ヶ月までの累積 MR4.5(DMR)発生率は 33.3% (95% 信頼区間、18.0% ~ 51.8%) でした。12ヶ月にわたる累積 MR4.5(DMR)移行は、過去の対照に基づいて TKI 単独で は8% と推定されました。TM5614とTKI併用でMR4.5(DMR)を達成した患者では、2ヶ月でのBCR-ABL1の半減期が他の患者よりも12ヶ月と有意に短くなりました(カットオフ値:48日、感度:0.80、特異度:0.91、ROC-AUC:0.83))。この研究では、この薬剤に関連する出血事象や異常凝固は報告されておらず、TM5614 は安全性が高いことが判明しました。
結論: TM5614 と TKI の併用は忍容性が高く、単独の TKI 治療よりも多くの患者で MR4.5(DMR)を誘導しました。
Cancer Med. 2023 Feb;12(4):4250-4258. doi: 10.1002/cam4.5292. Epub 2022 Sep 23.
こちらは、今回の知見に関係する論文ですが、結果はあくまでもマウスによるものです。これから私たち人への研究、そして治療につながっていくことを期待します。
Targeting of plasminogen activator inhibitor-1 activity promotes elimination of chronic myeloid leukemia stem cells.
https://www.haematologica.org/article/view/9639
英語の論文となりますので、以下に概要の和訳を記載します。
概要:白血病幹細胞を標的とするPAI-1阻害薬の新規治療戦略は、慢性骨髄性白血病 (CML) の治療に利点をもたらします。我々は、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(PAI-1)を選択的に阻害すると、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対するCML癌幹細胞(CML-LSC)の感受性が高まり、これによりCML-LSCの根絶が促進され、疾患の持続的寛解がもたらされることを示します。 我々は、骨髄(BM)内のCML-LSCにおいてTGF-β-PAI-1経路が選択的に増強され、それによってPAI-1がCML-LSCをTKI治療から保護していることを初めて実証しました。 さらに、CML マウスモデルにおける TKI と PAI-1 阻害剤の併用投与により、BM 内の CML 細胞の根絶が大幅に強化され、CML マウスの生存期間が延長されました。 イマチニブと PAI-1 阻害剤の併用療法は、CML 様疾患の再発を防止し、CML-LSC が除去されたことを示しています。 興味深いことに、PAI-1阻害剤による治療は、膜型マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MT1-MMP)依存性のCML-LSCの運動性を増強し、PAI-1阻害剤の抗CML効果はMT1-MMPの中和抗体によって消失しました。CML-LSCの運動性におけるMT1-MMP のメカニズムの重要性が示されました。
我々の発見は、CML患者に対するPAI-1活性の阻害に基づく新しい治療法の証拠と理論的根拠を提供します。
Haematologica. 2021 Feb 1;106(2):483-494. doi: 10.3324/haematol.2019.230227.
治験についての情報
最後になりましたが、この治験を含め臨床試験(治験)について、どういうものなのか参考になるサイトをご初会する形で簡単に触れておきたいと思います。
臨床試験(治験)ってなに?
臨床試験(治験)については、国立研究開発法人国立がん研究センタが運営するがん情報サービスの「臨床試験について」で患者さん向けの情報が整理されています。特に、今回の治験に参加を考えている方は必ずお読みください。詳しくは、先ほどのサイトをお読みいただきたいのですが、今回の様な「治験」は「臨床試験」の一部で次のような特徴があります。
・がん情報サービス「臨床研究について」:https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/index.html
治験とは、臨床試験の中で、まだ承認されていない薬や医療機器について、国(厚生労働省)の承認を得ることを目的として行われるものです。治験で使われる薬は、ある病気に対して、これまでに販売されている薬よりも高い治療効果が期待できる物質を長い年月をかけて選び出したものです。できるだけ副作用が少なくなるように研究が重ねられ、人に投与される前に、動物実験などによって入念な安全性の評価が行われています。
臨床試験は、新しい治療法が標準治療よりも優れているかを確かめるために行われます。臨床試験の結果が出るまでは、どちらの治療法が優れているかは分かりません。
近年、がんの臨床試験、治験は他に治療方法がない場合の治療の手段としても認識される傾向があります。しかし、臨床試験、治験はあくまでも治療ではなく研究の一環です。もちろんこうした研究を始めるには、倫理審査をはじめ様々な安全策がとられていますし、医師や研究者から十分な説明を研究に入る前も、入ってからも受けることができます。また、途中でやめたくなった場合には辞める権利(「オプトアウト」と言います)があります。
さらに詳しく学びたい方には、ICR臨床研究入門がおすすめです。
・ICR臨床研究入門:https://www.icrweb.jp/icr_index.php
その他の臨床試験の探し方
現在行われている臨床研究の一覧は、下記の臨床研究等提出・公開システムから検索可能です。このサイト内の「対象疾患名」に”慢性骨髄性白血病”と入力してみてください。ただし、募集中の臨床試験に誰でも参加できるわけではありませんので、まずは主治医にご相談ください。
JRCT臨床研究等提出・公開システム:https://jrct.niph.go.jp/search
いずみの会 河田純一(お問い合わせ info@izumi-cml.jp )
いずみの会HP:http://www.izumi-cml.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/cml.izumi
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