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「オビ=ワン・ケノービ」4話の展開を振り返り

ディズニープラスで配信中の「スター・ウォーズ」のドラマシリーズ「オビ=ワン・ケノービ」第4話の展開を振り返ります。記事は視聴済みの方に向けた内容となっています。またドラマの性質上、映画作品のエピソード1〜6 視聴済前提にもなっています。あらすじは「さわりだけ」を意識してなるべくサプライズ要素や結末は書かないよう心がけていますが、完全なネタバレ回避にはなっていませんので映画作品も含めて、未視聴の方はくれぐれもご注意下さい

1〜3話までの振り返り記事はこちらです。

PART IV

登場したT-47 エアスピーダーは若干ですが内空間が大きい仕様です。
後方に伸びたキャノピーを見せるような真上からのカットも。

生きていた、そして変わり果てたアナキンを前に狼狽し傷を負ったオビ=ワンでしたがレイアの危機に気を取り戻します。ターラの力で尋問官の要塞に潜入。このあたり「エピソード1」のオータ・グンガへの道中や、プレイした方ならゲーム「ジェダイ:フォールン・オーダー」終盤を想起した人も多いはず。

要塞の機密エリアでは「反乱者たち」14話「チームの絆」でヘラが語った「ムスタファー(星系)はジェダイにとって死の場所」の意味が判明。「クローン・ウォーズ」ファンにとってはあのジェダイ・マスターのショッキングな姿も。オビ=ワンの台詞は「指輪物語」の「ここは坑道じゃない、墓場だ。」の引用でしょうか。
また拷問室で暗闇に舞うライトセーバーの閃光は「フォース アンリーシュド2」(2008)を思わせます。

第4話までを観て確信したのは、各話の主なロケーションやシチュエーションがサーガ(特にオビ=ワンのシーン)をなぞっているという事です。

第1話ではタトゥイーン=「エピソード1 ファントム・メナス」の僻地で待機、2話ではダイユーの繁華街=「エピソード2 クローンの攻撃」のコルサントでの暗殺者追跡劇、3話のラストは「エピソード3 シスの復讐」の対決を連想しました。

エピソード1〜3でのオビ=ワン・ケノービの場面。

そして4話では「エピソード4 新たなる希望」のデス・スターへの侵入とレイア姫救出です。レイアへの尋問や、フォースで物音を立ててトルーパーの注意を逸らす場面、最後に発信機を仕込んだ流れまで分かりやすいセルフオマージュでした。
小説「ラスト・オブ・ジェダイ」では軍服で帝国軍施設に侵入したりしましたが、あえてあの格好のままとしたのもエピソード4の画を意識してのことでしょう。

オビ=ワンの活躍は「エピソード4 新たなる希望」まで。
次回からはいよいよ新たな境地に進む彼が観られるのかも。

「I know」やバクタタンク、T-47エアスピーダーなど、「エピソード5 帝国の逆襲」のオマージュも多く織り交ぜていましたが、フィナーレに向けた展開のしわ寄せで前倒した?という印象も。他にも小ネタが盛りだくさんでした。ターラのブラフとは思いますが「フローラム」には思わず声が出てしまいました。

本シリーズのストーリーの軸となったのは当初トレーラーには全く姿の無かった幼いレイアとの逃避行でした。レイアの「助けてオビ=ワン・ケノービ、あなたが私の唯一の希望です。」という台詞につながる、そして息子に「ベン」の名を授けるに至るその絆の誕生が描かれているようです。同時にこの旅はオビ=ワンの自立の物語でもあるのかも、とも。

思い返せば若いオビ=ワンは格好いいライトセーバーバトルの印象だけが目立ち「エピソード1〜3(プリクエル)」や「クローン・ウォーズ」でもアナキンやパドメ、アソーカたちほどキャラクターは深掘りはされていません。
ジョージ・ルーカスはプリクエルを制作するにあたりオビ=ワン・ケノービの賢者の側面をクワイ=ガン・ジンというキャラクターとして分離してしまったので、若いオビ=ワンはアナキンの兄かつ比較対象のような存在として描かれました。

クワイ=ガン・ジンは最初の三部作におけるルーカスの構想には存在しなかった。

オビ=ワンは優秀で教義に従順なジェダイでしたが、言い換えれば人間性を欠いて掟に凝り固まりシスの策謀を見抜けず没落を招いた典型的な末期のジェダイマスターです。世界は一変し、いまや無力感に苛まれて逃げ隠れる日陰者に。
彼自身がアナキンの転落の原因の一つであり、改めてその事実を目前に突き出されますが向き合うことが出来ない、というのが第3話までの展開でした。

このドラマで描かれる出来事の前には、ブラック・クルルサンタンと一戦交えていますし転落するオーウェンをフォースで浮揚させていたので、決してジェダイの技が鈍っているわけではありません。火傷よりも心のダメージが大きいようです。

正史の整合性はルーカスフィルムストーリーグループが監修しているはず。

第4話ではレイア救出を機にオビ=ワンがジェダイの勘を早々に取り戻します。
しかしまだまだ「エピソード4新たなる希望」や「反乱者たち」S3-20話「双子の太陽」のオビ=ワン・ケノービ像(クワイ=ガン・ジンとのキャラクター再結合)に至るには足りないミッシング・リンクが。この後の展開も目が離せません。

本作の監督デボラ・チョウはインタビューで「LOGAN/ローガン」や「ジョーカー」のようにオビ=ワンのキャラクターの掘り下げができる事がエキサイティングだと述べたほか、影響を受けたものとして黒澤明監督作品と、アンドリュー・ドミニク監督の「ジェシー・ジェームズの暗殺」、ジョン・ヒルコート監督の「プロポジション 血の誓約」を挙げています。序盤の重く淡々とした雰囲気はモダンウエスタンのスタイルが反映されているようには見えます。

脚本はクレジットからホセイン・アミニとスチュアート・ビーティーの名が抜け、残ったメインライターのジョビー・ハロルドとハンナ・フリードマンの二人がこの第4話を担当。フリードマンは今回まで。

サーガの反復を用いてオビ=ワンの目覚めへの道程を描くスタイルは面白いと思います。少ない話数のなかで駆け足気味(全ての宇宙船のシーンで着陸が速いのを観ても)な展開と、ややご都合っぽいところはありますがスター・ウォーズでは「フォースの導き」という名のお約束です。まずはフィナーレまで見守りましょう。

次回はいよいよ帝王ザーグ、アンドリュー・スタントンの登板です。
ハンナ・フリードマンもピクサーのブレイン・トラストの一員でしたが、今作ではルーカスフィルムとピクサーの36年越しの再結合とも言えそうです
(訂正です。「エピソード7 フォースの覚醒」の脚本にマイケル・アーントが参加していたの忘れていましたw )

「トイストーリー」シリーズはもちろん「WALL-E」も「ファインディング・ニモ」も大好きな作品ですし、彼の主腕がどう発揮されるのかただただ楽しみです。


批判記事やSNSの批判コメントをよく見かけるので一言追記します。

劇中のオビ=ワンは、ルークを護る事を最後の任務として続けています。残存ジェダイを追い返したり、困っている人を助けないのは帝国の注意を引かないため=任務の一環です。その忍耐強さと徹底ぶりは「クローン・ウォーズ」S5 15〜18話で描かれた彼の性格の通りです。あきらめたり自暴自棄になっているわけでは無いと感じます。

ただ、任務のような認識では没落を招いたジェダイの考え方のままで、ルーク(とレイア)がオビ=ワンが想像する以上の特別な存在であり、彼らを護り導くという役目の真の意味を理解する必要があるという話になっていると思います。

また、オビ=ワンはアナキンに寄り添わず彼をシスにしてしまった自分の過ちと向き合って自己を解放しないと次のステップ(クワイ=ガンとの再会と修行、フォースの真理に触れる)にも進めません。ドラマはその道程を丁寧に描いていて、問題があるとしたら予算の限界が滲み出て見えることくらいです。

私個人は「ボバ・フェット」もそうでしたが、旧三部作と新三部作でキャラクター像が変わってしまったためその差の補完も目指していると感じています。

ルーク、真実の多くは我々の捉え方次第なのだ。

ベン・ケノービ「エピソード6 ジェダイの帰還」


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