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バブさんへのお返事②

バブさんへのお返事① https://note.com/izmism35/n/nda08461185d3

バブさんの手紙は、現実的なアドバイスというよりも、哲学的な対話をするかのように書かれていた。その中でも忘れられない言葉が、二つある。

「自由とは何だと考えますか」

就職活動は、大学4年のGW前に内定を頂けた。まあまあ順調だったのかもしれない。第一希望では無かったけど、有名なメーカーの総合職。地元では誰もが知ってる大きな会社だったので、田舎の両親は安心して喜んでいた。その後すぐに教職実習もあり、教員採用試験も一応受けてはいた。しかし忙しいながらも、内定をもらえた安心感からか、次第にどこか気が緩み始めた。社会に出る前の学生最後の夏休み、彼は私に問いかけた。

「貴方は自由とは何だと考えますか。やるべき事をやるのが、魂の自由です」

正直、その意味が分からなかった。自由と責任は表裏一体、とかそういう類いのことだろうか。私は素直に返事を出した気がする。

「今はまだその真意が分かりません。社会に出た時に、その言葉を思い返して、考えてみたいと思います。」

”自由には責任が伴う”というのも一つの解釈だと思う。だけど実際大人になり、社会・家庭・地域の中で、私なりに様々な役割を担ってきた中で…そして様々な仕事で活躍する周囲の友人知人を見渡して…そんな重苦しく窮屈な意味だけではないのでは、とふと思う時があった。

”自分の心の声を聞きながら、日々を生き、自分の命を全うさせる。そうやって天から与えられた命に生き続けることで、魂は自由になる” そういう意味も含まれているのではないか…と。

「恩返しではなく、恩送り」

もう一つ忘れられない言葉があった。大学卒業を目前にした22歳の誕生日、一人暮らしのアパートに花束が届いた事があった。バブさんだった。私は喜んでお礼の電話をかけた。こんなにしてくださるなんて…いつも有り難うございますと。私だけでなく、植林仲間の友人達も同じように、誕生祝いの花を頂いていた。その後届いた手紙にはこのような事が書かれていた。

「人生80年近くも生き、沢山の人にお世話になってきました。恩を返したいと思う方々、先に旅立ちもう会えなくなった人も少なくありません。返せない恩は、貴方たちのような次の世代に送りたいと思います。”恩返し”ではなくて、”恩送り”です。」

まるで映画の『ペイ・フォワード』のようだと思いながら、私は花束を見つめていた。

 (続く)

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