水の仲と向き合う。【詩のようなもの】
水の中にいるとき
僕たちは人だから、息をすることはできない。
僕たちは人だから、息をせずとも少しだけ、
自分で水面に出ようとすることができる。
あるいは誰かの手を借りて、
一緒に水面に引き上げてもらえることもある。
水の中にいるとき
声を上げることができない。
苦しいことも、嬉しいことも
言語にすることが難しくなる。
伝えることが、難しくなる。
相手にそれが伝わるのが、遅くなってしまうこともある。
人によっては、もともと肺が強くなかったり、
人によっては、急に足が動かなくなってしまうこともある。
誰かが水の中にいるとき、
その深さばかりを見てはいないか
大したことない
彼はもうすぐ上がってこれる
そう傍から見えていても、
彼にもう、息はできないのかもしれない
彼はもう、手足が動かないのかもしれない
彼を引き上げる浮き輪が、綱が、あるいは誰かの声が、
水面に放たれないとき、
一度だけでもそれが遅くなるとき、
彼はもう、二度と上がってこない
私は向き合いたい
水から飛び上がってくる人より
水の中にいる人に
水に…人に…
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