わたしの恋はいつも執着

GW最終日はお初の現場へ。
もうすぐ母の日で忙しいのだろう、
お花の梱包作業をする仕事だ。
以前からずっと気になっていた現場なので、
今回はちょっとわくわくする。

しかし連日の疲れもあり、
また寝たのか死んでたのかわからない目覚めだった。
初めてのところだし、そんなに化粧しなくていいや。
タイミーはこうやって自分の体調や気分次第で、
朝の支度に手抜きができるのもいい。

初めての現場は、入口もお手洗いもロッカーの場所も誰に声をかけたらいいのかも何もわからない。
それらをひとつひとつクリアしていたら、
いつの間にかわたしだけ違う仕事を振られていたり、
わたしだけほぼマンツーマンでおじさんが付いたので、
他のタイミーの人達はみんな経験者なのかなと思った。

お花の仕事なのに、現場はおじさんばかりでみんな超優しい。
ほぼマンツーマンで仕事を教えてくれたおじさんはかなり疲れているようで、
わたしの目の前でダンボールに躓いてよろけた。
本当に倒れそうで危なかったので、
わたしは思わずおじさんの背中を支えて「大丈夫ですか?」と言った。
おじさんは照れていたけれど、

わたしはまた自分のこういうところがダメなんだと思った。


またやってしまった。反省。
でも目の前で人が倒れそうになったら、
よほど汚い相手じゃない限り触れるじゃないか、
今のは不可抗力だよ神様…と心の中で思った。

予期せぬボディタッチが効いたのか、
元々優しい人なのかわからないけれど、
おじさんはその後もずっと優しかった。
他のおばちゃんが「わたしが教えますか?」と言ってきても、
おじさんはなぜかそれを断って直接わたしに教えてくれる。
本当にすごく優しくて話しやすいから、
わたしはここの仕事は初めてで不安なのもあり、
ささいな作業でもおじさんを頼りにしていちいち確認してもらった。
今日この人と作業でよかったな、ラッキー!

途中PPバンドを取るのにカッターが無かったので声をかけたら、なんとおじさんは手で取ってくれた。
わたしはまた大げさに
「そうやって取れるんですね!すごーい!」と言う。
それを見ていたおばちゃんが、
「まーたカッコつけちゃって!ほんと可愛い子には甘いんだから!」と言ってきたので、
「すごい優しいんですよ!」とにっこり笑って本人の前でまた褒める。

タイミーなんてたまにしか来ないんだから、
こうやってみんな楽しく働けばいいのだ。



あれそういえばわたし今日ほぼすっぴんじゃなかったっけ?目無くない?
でも他のタイミーの人をよく見たら、
おそらく40代の人だったり、
わたしよりずっと若い女の子もいたけれど可愛いって感じではなかったので、
ここならわたしでも可愛い方なのかもしれない。
たとえおばちゃんにでも可愛いなんて言われたらわたしだって悪い気がしない。
わたしも将来は若い女の子にこんなアシストをできるような器の大きいおばちゃんになりたいと思った。

わたしは力もないし要領も良くないから、
どの仕事も人より上手にできない。
だからおじさんと上手くやるのはわたしの処世術でもあるのかもしれないと最近思う。
そういえば添乗員時代も、
客よりドライバーさんとよくおしゃべりしていた。
アンケートに「ドライバーと話してばかりで客は放置」と文句を書かれて、
所長に注意されたこともあるくらいだ。
わたしはバスの運転なんてとてもできないし、
ドライバーさんを敵に回したら仕事がしづらくなるから気を遣っていただけなのだけど、
今でも無意識におじさんの機嫌を取るクセが残っているのかもしれない。

ところでわたしはお花が好きだけど詳しくはない。
「このあじさい(画像参照)もダンボールに入れていいですか?」と聞いたら、おじさんに笑われた。

スノーボールというらしい。
ボールはわかるけど一体どこがスノーなんだろう。謎。


完全にあじさいだと思い込んでいたので、
めっちゃドヤ顔で言ってしまって本当に恥ずかしい。
「えー!緑のあじさいかと思いましたぁ!」と言って笑うしかなかった。


好きな人ともこうやって楽しく働けたらいいのに。(ため息)


わたしは緊張しない相手の前では、
意外と明るくてお茶目な女の子でいられる。(八方美人)
好きな人にもわたしのこういうところを見せることができたらいいのに。

さっきもおじさんに、
「GWほんと楽しいから、ずっとGWでいいのにー!」と言うと、
「俺は人生でGWが楽しいと思ったの小学生が最後かもしれない」と言うので驚いていたら、
「完全にそっち側の人だもんね」と言われた。
わたしは見た目は地味だけど、
明るく振る舞っていたら、
意外とリア充(死語)に見えるのかもしれない。

好きな人は若いからわたしの目の前で転びそうになったりなんかしない。
隣に行ってもタイミーと雑談なんかしない。
わたしがスノーボールをあじさいだと言っても、
何も突っ込まずに「うん、そのままダンボールに入れていいよ」と言いそうな人だ。
本当につまらない。つまらなすぎる。

わたしが彼を笑顔にすることができないように、
彼がわたしの意外と明るいところを引き出すこともできないのかもしれない。


彼がわたしから引き出すのはいつも負の感情だ。
会えなくてつらいとか、
隣にいるのに何も話してくれないんだなとか、
せっかく近くに来れたのに移動させられたらどうしようとか、
今もしかして避けられたのかなとか、

だから彼といる時のわたしは、

いつも不安と緊張と恐怖でいっぱいだ。


彼の前ではわたしは明るい女の子ではいられない。
むしろ自信を失って卑屈になってしまう。
悲しいけれど、それは紛れもない事実だ。



でも他の人となら、わたしは楽しく仕事ができる。
初対面でも、年が離れていても関係なく。


他の人はわたしに無言で視線だけでポジションを指示したりなんかしない。
たぶんわたしはどこに行ってもそんな失礼な扱いをされるような女じゃない。 
そんなことをするのはあの彼だけだ。
他の人はわたしが緊張して黙っていても、
雑談を交えながら楽しく仕事を教えてくれるし、
タイミーにも興味を持っていろいろ聞いてくれたりする。
だから他の現場の方がわたしはずっと居心地が良い。

もしかしたらわたしは、
彼が他の現場の男の人達みたいに、

わたしを可愛がってくれないのが気に入らないだけなのかもしれない。


すごく傲慢な言い方だけど。
ババア何言ってんだよって自分でも思うけど。


でもなかなか落ちないUFOキャッチャーに課金するみたいに、
わたしは彼に執着しているだけのような気がする。
もし景品が取れてしまったら、
わたしは意外とそれを大事にしないかもしれない。
あんなに取りたかったはずなのに、
何枚も硬貨を入れて課金したのに。
でもきっとわたしが本当に欲しいのは景品そのものじゃなくて、
景品を取ろうとして夢中になる過程の方なのだ。

これじゃあ彼氏なんてできるはずがない。
久しぶりに現実で恋愛してるつもりだったのだけど、

わたしは今回もまた恋に恋しているだけなのかもしれない。