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カスタードクリームはこうして作る。

お菓子屋を代表するなくてはならないクリーム。

使用頻度が多くパティスリー時代は毎日5Lものカスタードクリームを仕込んでいました。パティシエの前腕が太いのはこのためです。
レストランでも頻繁に登場します。

配合はお店によってさまざまですが、基本の仕込方はみな同じ。
その中で不要な工程や器具の使用を省き、労力を抑え、最短で仕込み終えることが大切です。

菓子作りで応用できる基本クリームです。ぜひ手作りしてみましょう。

【カスタードクリーム】
牛乳 500g 
バニラペースト 3g  
卵黄  100g
グラニュー糖 100g
強力粉 40g
バター 40g

⑴牛乳を火にかけ、分量のグラニュー糖の1/3を加える。
牛乳の焦げつきを格段に防ぐ。


⑵バニラペーストを牛乳に加える。
バニラビーンズを独自の低温抽出製法甘い香りをペースト状にした
とても使いやすい商品。


⑶卵黄、残りのグラニュー糖、強力粉を同じボールに計量する。
まとめて計ることで洗い物が減り時短できる。
薄力粉が一般的だが強力粉を使用。なめらかで存在感のある仕上がりに。
強力粉はふるわなくてよい。薄力粉に比べ粒子が荒いのでダマにならない。


⑷粉気がなくなるまで10秒ほど混ぜる。
卵黄とグラニュー糖をすり混ぜる際、空気をたっぷり含ませるパティシエもいるが必要のない工程だと考えている。10秒混ぜればよい。
労力も温存できる。


⑸分量の牛乳を100gほど卵黄のボールに加えて硬さをゆるめる。
次の工程で残りの牛乳と分散がよくなる。


⑹牛乳が沸騰したところにベースをくわえる。
牛乳は必ず沸騰していること。牛乳の温度が低いと粉臭い仕上がりになる。

一度火を止めベースを加えていく。

ホイッパーで絶えず混ぜながらベースを加えきる。


⑺強火で炊いていく。
火力は必ず強火。
かといって豪快に混ぜる必要はない。それよりも焦げ付きやすい角を重点的に確実に混ぜる。

手のヒラの中央を軸に、ホイッパーの先端を角にあててグルグルと回す。

5周したら中央を混ぜる。これを繰り返す。
ホイッパーのワイヤーがしっかり鍋底に当たるよう意識する。

高温をキープし、クリームはボコボコと湧いている状態。
弱火で時間をかけて炊くと粉臭くなる。

はじめのもったりとした状態からサラッと流れる瞬間がある。そしてなめらかでつややか。これが炊き上がりの目安。
ここをきちんと掴んでほしい。


⑻バターを加えハンドブレンダーを当てる。
バターを加えることでグッと深い味わいになる。そして仕上がりに適度なかたさを与え保形成がうまれる。

ブレンダーをあてることで密な乳化状態を得られる。よりなめらかな仕上がりに。


⑼クリームを漉してバットに薄く広げ、冷凍庫で冷やす。
ダマや異物混入の危険を回避できるため、濾す作業は全工程の終盤行うこと。
ブレンダーをあてているので、クリームのコシがきれて流動性のある状態。濾し器をサラッと通ってくれる。

衛生上、瞬時に冷やしたいので炊きあがったクリームは極力薄く広げる。
密着ラップをして表面の乾燥を防ぐ。
粘りと熱の条件が揃うと速乾性がうまれる。熱いまま放置してしまうと乾燥した部分がダマになり口当たりに影響する。
氷で冷やすやり方もあるが、水が混入する恐れがあるので冷凍庫で30分〜1時間急速に冷やす。


⑽クリームをボールにあけてゴムベラでなめらかに混ぜる。
クリームの中央までしっかり冷えたら冷凍庫から取り出す。すぐに使わなければ冷蔵庫へ移す。
バットからツルッとはずれる状態が理想。粘りつくようであれば小麦の火入れがあまい。

はじめは重たいが徐々にコシがきれてなめらかになっていく。

ツヤよくきれいに混ざれば完成。



補足、

卵黄について
20%加糖の冷凍卵黄を使用しています。

割卵の手間が省けて計量がとてもスムーズ。
鮮やかな黄色味が特徴で目を引く仕上がりに。長年愛用しています。
レシピは冷凍卵黄使用で記載。
割卵卵黄使用の場合は

卵黄  80g
グラニュー糖 120g

となります。
グラニュー糖と卵黄を混ぜてから強力粉を入れましょう。
一度に合わせるとダマができやすいです。


バニラペーストについて
バニラの価格高騰により導入。

長年マダガスカル産のバニラビーンズを愛用しており導入当時は苦渋の決断でした。
しかしサンプルをもらい商品を試すと「ちゃんと香りがする」
そして驚くほど作業効率、機動力がアップしました。ナイフで裂き、種子をこそげとる工程が省略されます。
香りは多少劣るものの導入して正解でした。


"卵黄とグラニュー糖を白っぽくなるまで混ぜる"について
さまざまな書籍やネットのレシピでカスタードクリームの作り方を調べると
必ずこのように書かれます。
ただ、再三ですがこの工程は不要と考えています。
空気を含ませることで
・熱い牛乳で卵黄が煮えないように
・分散がよくなる
おおまかにこの2点です。
しかし、沸騰した牛乳でも総量の1/5程度であれば一度に加えて得ても熱凝固することはありません。分散のしかたも決定的な違いはありません。


"粉をふるわない"について
粉=ふるう、が菓子作りの常識です。
これに異論はないですが、ふるわなくていいパターンもあることを覚えてください。
強力粉の粒子は先に伝えたとおり。
さらに
卵黄、グラニュー糖、粉があわさると水分が吸われペースト状になります。この固さがあるのでダマができることなく分散します。
よっぽど保存環境が悪く湿気た強力粉でない限り、このカスタードクリーム作りにおいてふるう必要はありません。

強火について
強火とは鍋の直径に対して炎がギリギリで収まっている火力です。コンロのダイヤルをいっぱいに開いた状態が強火ではありません。
つまり鍋の大きさによって”強火”は変わります。
炎が側面まで溢れる火力は菓子作りで使いません。強いてお湯を急いで沸かすときぐらいでしょうか。
ここではIHのヒーターで作りましたが、これは"強"でよいです。


製造上の注意
カスタードクリームは菌が増殖しやすい環境が整っています。
器具は清潔に保ち、使用前にアルコールを吹き付けておきます。
炊き上がりのクリームは間髪入れずに急冷しましょう。冷蔵でなく冷凍です。または氷をあてて冷やします。
40°が最も菌が増殖しやすい温度帯といわれます。ここを早く通過させることが大切です。間違っても冷蔵庫で冷やさないように。常温放置はもってのほか。


使用器具
使用した器具をここでいくつか紹介しています。
参考にしてください。


このクリームを習得すれば菓子作りの幅がグッと広がります。
きっといろんな菓子に挑戦したくなるでしょう。

写真が多く説明をやや難しくしてしまいましたが
順を追って確実に工程を踏めば美味しいカスタードクリームが作れます。
ぜひ挑戦してみてください。

ありがとうございました。

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