人より優れていることが「ここにいてもいい理由」にならないように
ぼくには6歳になる息子がいるのだけど、子どもというのは本当に、刻一刻と成長している生き物なんだなと、感心しながら毎日すごしている。
昨日できなかったのに今日はできた!みたいなことが毎日のようにあって、見ているだけでも楽しい気持ちにさせてくれる。(とはいえ子育てには大変なこともたくさんあるけれど)
そんな息子が、ちょっと引っかかることを言った。
それは「ぼくって他の6歳の子より、すごい?」
たしかに描く絵は独創的だし、レゴでつくるオリジナル旅客機はよくできていて感心する。6歳でかんたんな漢字やアルファベットを書けるのはすごいと思う。(ただの親バカかもしれないけど)
でも「他の子よりすごい?」と聞かれると、親としては返答に困ることになる。
上手く言えないけど、「うん、君は他の子よりすごいよ!」と答えていたら、将来困った大人になりそうな気がする。
だから、そう聞かれたときには「そうだね。君もすごいけど、他の子にもすごいところはあるよね」みたいに答えていた。
だけど、この答え方でいいのかな?という思いは拭えなかった。
あるとき、児童心理の専門家と話す機会があったので相談してみた。その方はこんなふうに答えてくれた。
〇〇ちゃん(息子の名前)の中ではいま「相対化」が始まっているんだね。これから小学校に上がるのに不安があって、自分が他の子よりできることで安心しようとしているんだと思う。だから親の声かけとして「君もすごいけど他の子にも良いところがたくさんあるよね」という答え方は、とても良いと思うよ。
そしてもっと大切なのは、「もし上手くできなくても、君には価値があるんだよ」ということをしっかりと伝えてあげることだね。
こんな感じのことを言ってくれた。
相対化が始まっている、というのは納得だった。これから小学校という別の世界に移行することへの不安が彼の中にあって、自分が他の子より優れていると思うことで、自分なりに安心感を得ようとしているのかもしれなかった。
そのうえで「君はすごいよ」という答えは、やはりあまり良くないと思った。なぜなら、もっと上手くできる子がいたら「その子の方がすごい」ということになってしまうから。
強者はより強者によって駆逐される、ということになってしまいかねない。
それはあまり楽しい世界ではないだろうし、子どもにはもっと豊かな世界を生きていってほしいと願う。
だから、いろんなことができるようになって君はすごいね!と誉めるのもいいけど、合わせて「できていなくても君には価値があるんだよ」ということも伝えるというのは、本当に大切だ。
そこで気づいたことがある。
「上手くできていること」や「他の人より優れていること」で安心しようとしていたのは、ぼくも同じだったのかもしれない。
子どもは、そんな親の価値観を生物レベルで感知し、無意識のうちにコピーしようとしていたのかもしれない。
ぼくって他の子よりすごい?は、ぼく自身の奥深くから発せられた言葉なのかもしれない。
ぼくがすべきことは、子どもに「できなくても君には価値があるんだよ」と伝えること。
それと、自分自身に対しても「人よりうまくやれることが、あなたの価値ではないよ」と言ってあげること。
子どもは身近な人の価値観を敏感に察知してコピーしようとする。
またしても、子どもに教えられたことだった。
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