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SNS疲れに効く『DEATH STRANDING』のオンライン要素

『DEATH STRANDING』は、小島秀夫監督による独自のゲームデザインによって、僕たちに新しいSNSの可能性を示唆してくれる。

小島秀夫監督といえば、ステルスゲームの領域を確立した「メタルギア ソリッド」シリーズの生みの親。その小島監督が設立したコジマプロダクションの処女作こそ『DEATH STRANDING』である。

プレイヤーは主人公・サムを操作し、種々の荷物を目的地に届けながら、行く先々で通信インフラを繋いでいく。ひたすら荷物を運ぶ。

ともすれば従来のゲームでもサイドミッションやチュートリアルにあった「おつかい」にしか見えないが、一線を画したゲーム体験は既に多くの評価を得ている。長くなってしまうので、いまは他に説明を委ねたい。

縄から棒になったSNSたち

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(C) 2019 Sony Interactive Entertainment Inc. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS.

本作のオンライン要素は特徴的である。

複数のプレイヤーが一緒にミッションに従事したり、ましてや武器をとって闘い合ったりはしない。

そこにあるのは、間接的なゆるい繋がりである。

自分の空間に他者は直接現れない。それぞれが固有の空間を持ち、そこに他者のアクションが反映され、相互に影響し合う。熱力学的な繋がりだ。

具体的には
・乗り物やハシゴなどのアイテムを共有する
・足跡を辿る
・荷物を誰かに預ける

などが可能である。

それに対して直接メッセージを送ったり、相手の顔を見たりすることはできない。僕たちは「いいね」を送ったりもらったりすることだけができる。

そこには強制力もなければ、特筆すべきメリットもない。それがいい。

小島監督は本作を「縄」のゲームと称している。
※「2016 PlayStation Press Conference in Japan」登壇時ほか

この「縄」は、安部公房の短編『なわ』から派生したもので、ゲーム本編にも、以下の一節が引用されている。

「なわ」は、「棒」とならんで、もっとも古い人間の「道具」の一つだった。「棒」は、悪い空間を遠ざけるために、「なわ」は、善い空間を引きよせるために、人類が発明した、最初の友達だった。「なわ」と「棒」は、人間のいるところならば、どこにでもいた。

善い空間を引き寄せる「なわ」。あるいはいまのSNSもそれを標榜していたのかもしれないが、それは瓦解しているように思われる。

日々誰かの怒りの声や差別、虚言が拡散され、論にもならない論に精神と時間をすり減らしているようでならない。

もちろん現行のSNSでも「いいね」の数を非表示にしたり、サジェストの仕様を変えたりと日々様々な工夫がなされている。

それでもなお、SNSは棒になっている。もはや縄で形成したコミュニティにも対岸から棒を掲げた人々がやってくる。

その流れの中、オンラインサロンや「閉じた」コミュニティづくりは、として有効な一手かと思われる。それが他者と衝突したり交流を諦めてしまったりする未来には一抹の不安が残るものの、他にも意義があるだろうし、過渡期においては特に魅力的だ。

マズローの欲求5段階説

さて、SNSの変化については専門家も含めて多くの見解や議論があるが、私見を述べるならば、SNSでの人々はマズローの欲求5段階説における「所属と愛の欲求」をないがしろにしたまま「承認欲求」を標榜してしまうことに一因があると思う。

マズロー

詳細や例示は、また別の機会にまとめることにする。一旦は「何もしなくても落ち着けるコミュニティが不確かで、不足している」としたい。

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(C) 2019 Sony Interactive Entertainment Inc. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS.

Zenlyという位置情報共有SNSがある。国内ユーザーの多くは10代らしいので耳にする機会は少ないかもしれないが、ここにも新しいソーシャルの一端があると思われる。

ひとりひとりが自分の世界を持ち、他者の世界と相互に作用する。
それは孤独でも競争でも監視でもない体験を与えてくれるに違いない。

これから構築されるソーシャルには『DEATH STRANDING』に垣間見えるような、ゆるい関係、縄のつながりを持たせたい。

ところで公式ハッシュタグ「#デスストでつながれ」が現実でもストランドを起こしているが、これはまた別の話、、、

余談:風ノ旅ビト

『風ノ旅ビト』は幻想的な空間を「旅ビト」になって体感するゲーム。

本作はオンラインに対応しているが、その相手が誰かは分からず、言葉を交わすこともできず、共に進むも袂を分かつも個人の自由に委ねられる。

しかしながら、その存在自体が実にありがたい。
それまで広大で美しい世界を独り占めしている悦に浸っていたのに、誰かを見つけたときの安心感は、心の隅にあった寂寥感をまじまじと気づかせてくれる。

『DEATH STRANDING』で表現された縄のつながりが、ここにも描かれているのかもしれない。

他にもゲームと「つながり」については多くの事例があるものの、ここでは語り尽くせない。多くはジニさんnoteなどを読んでほしい。

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